研究課題/領域番号 |
20K04542
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21040:制御およびシステム工学関連
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研究機関 | 佐世保工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中浦 茂樹 佐世保工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (20323793)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 出力零化制御 / ゼロダイナミクス / 熟練者の技巧的動作 / ローリングバランス運動 / フラフープ運動 / トランポリン運動 / 実動作の運動解析 |
研究開始時の研究の概要 |
建設や土木,介護分野など体への負担が大きい職種への人型ロボットの導入が望まれるが,これまでの軌道計画による運動制御では,熟練者と同等の動作速度や運動効率を実現することは難しい. そこで本研究課題では,熟練者の技巧的動作に注目し,実際の動作の観察・計測をもとに生体力学の観点から運動の特徴を抽出することを試みる.そして,得られた特徴量のみを陽に制御することで,より自然で滑らかな運動を生成することを目的とする.具体的な技巧的動作としては,実社会への応用が期待できるものとして,複雑な拘束を有するフラフープ運動や,外環境との相互作用を有するトランポリン運動を取り上げる.
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研究実績の概要 |
建設や土木,介護分野など体への負担が大きい職種への人型ロボットの導入が望まれるが,従来の軌道計画による運動制御では,熟練者と同等の運動を実現することは難しい.そこで本研究課題では,熟練者の技巧的動作に注目し,実動作の観察・計測をもとに生体力学の観点から運動の特徴を抽出することを試みる.そして,出力零化制御を用いて得られた特徴量のみを陽に制御することで,結果として現れるゼロダイナミクスにより自然で滑らかな運動を生成することを目的としている.具体的な技巧的動作としては,実社会への応用が期待できるものとして,複雑な拘束を有するフラフープ運動や,外環境との相互作用を有するトランポリン運動を取り上げる.令和4年度においては,令和3年度に引き続きこれら2つの運動の特徴を見極めるために,実際の運動の計測ならびに解析を行ってきた.また,技巧的動作の機械システムによる実現として,大道芸人が行うローリングバランス運動の実験も試みた. フラフープ運動の計測においては,室内の計測空間内で人間がフラフープ運動する様子を4台の高速度カメラを用いて計測した.フープの回転運動を表現する一般化座標として5つの情報を選定し,得られた3次元計測データからこれらの座標値を求めるアルゴリズムを検討し,フラフープ運動を持続させるために必要な運動要素を見つけることを試みた. トランポリン運動の計測においては,体育館内に計測空間を構築し,直径3.6mのトランポリンを用いた運動の様子を4台の高速度カメラを用いて計測した.重りをトランポリン上に落下させることでトランポリン自体の運動の計測に注力すると共に,トランポリンのモデル化及び妥当性の検証を行った. ローリングバランス運動の実現においては,過去に提案済みの運動モデルに基づいて実験システムを構築し,導出済みの出力零化制御を用いてローリングバランスの揺動安定化運動の実験を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フラフープ運動の計測においては,選定した5つの一般化座標のうち3つの座標に関して知見を得た.フープの自転角速度を一定に保つことが安定したフープの持続回転運動につながり,体幹の動きにより自転角速度を素早く大きくすることでフープの回転高さを上昇させていることがわかった.さらに,フープの傾き角の増加もフープの回転高さに影響を与えることもわかった.また,フープの自転角速度が不安定であるとフープねじれ角が適切であっても回転高さを維持することが難しいこともわかった. トランポリン運動の計測においては,トランポリンベッドの背面から重りを落下させた際の挙動の計測を行い,連続体であるトランポリンを従来用いられる分布定数系ではなく集中定数系で近似することで得られたモデルにおける数値シミュレーション結果と挙動の比較を行った.その結果,トランポリン中央部分では両者の挙動がほぼ等しいものになる一方,縁に近い部分では落下時の沈み込みが一致しないことがわかった.機械システムを用いたトランポリン運動の実現のためには,集中定数系でありながらもより現実の挙動に近いモデル化が必要であり,さらなる検討が必要である. 当初想定したフラフープ運動とトランポリン運動の解析・運動生成の進捗が芳しくないため,運動モデル及び出力零化制御による制御方策をこれまでに提案済みであるローリングバランスの運動に関し,機械システムによる実験環境を新たに構築した.提案していたモデルに基づきモーターと振子により人間を模擬し,人間がローリングバランスで使用するものと同じ板と円筒を用意し,リアルタイムトラッカーでローリングバランスの一般化座標を計測することで実験装置を構成し,提案していた制御方策を適用したところ長時間の揺動安定化の実現に成功した.これにより,出力零可制御による技巧的動作の実現が全く不可能ではないことを示すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,引き続き運動計測の試行回数を増やし,運動の特徴量を明確にすることを行う.そして,運動を実現することが可能で運動の特徴量を明確に表現することができるモデルの導出を行う.モデルの検討に際しては,機械システムによる実現も考慮してできるだけ簡易なモデルとする.そして,明確化した運動の特徴量をもとに出力零可制御における出力関数を設定し,数値シミュレーションにより運動生成が行われるか確認する.数値シミュレーションによる検証と並行して,モーター・リンク系からなる機械システムを設計・制作し,提案する出力零可制御による制御手法の有効性を検証する.
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