研究課題/領域番号 |
20K04568
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 宇部工業高等専門学校 |
研究代表者 |
仙波 伸也 宇部工業高等専門学校, 電気工学科, 教授 (40342555)
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研究分担者 |
浅田 裕法 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (70201887)
佐藤 仁 広島大学, 放射光科学研究センター, 准教授 (90243550)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 相変化 / 不揮発性メモリ / 結晶化温度 / 相変化メモリ / 微細加工 / 電子構造 |
研究開始時の研究の概要 |
新しいメモリとして、非晶質と結晶間の相変化に伴う電気抵抗の差を利用した相変化メモリが開発されている。このメモリはUSBメモリのように電源を切ってもデータが消えず、且つ高速にデータの記録・転送ができる。しかし、熱に弱く、データを保持する性能が低いという問題が残っている。本研究では、この問題を解決するために遷移金属元素を添加し、原子間の結合を強固化することによって熱耐性を向上させることを提案し、検証する。熱耐性だけでなく、相変化にかかる時間も同時に評価し、相変化メモリ材料としての機能性を総合的に評価する。
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研究実績の概要 |
本研究では相変化メモリ材料の結晶化温度の高温化を目的としている。ターゲット材料はⅣ-Ⅵ族化合物GeTeであり、遷移金属元素Mnをドープすることによって原子間結合を強くし、結晶化温度の高温化を実現する可能性を検証している。 2022年度には、蒸着原料の組み合わせをGeTe、Te、MnからGeTeとMnTeに変えて薄膜材料を合成してきた。GeTeの加熱温度を固定し、MnTeの加熱温度を調整することでMn濃度を変えた試料を合成した。Mn濃度はEDXを用いて評価した。Mn濃度3%前後の低濃度試料を合成することができ、その結晶化温度を真空中で二端子法を用いて測定した結果、母材であるGeTeよりも若干の結晶化温度の上昇を確認することができた。今後は、結晶構造が変わるMn濃度20%前後に焦点を絞った試料合成を進める。一方で、スイッチング特性の評価を行うために、ピラーと呼ぶ柱状電極をもつバーティカル型のメモリ素子構造の設計を進めた。マスクレス露光による微細加工の工程及びデザインについて検討し、レジスト現像によるピラー径寸法について試験した結果、最小3μm径までの加工ができることを確認した。設計した素子形状における電熱特性を評価するために有限要素法を用いたシミュレーション実験を行った。ピラーと相変化材料の接触面に凹構造を形成することによって消費電力を低減できることを示した。また、スイッチング特性を評価するための計測システムの構築を進めてきた。超短パルス微小電流の計測を実現するための電流アンプ仕様について検討し、帯域幅の改善が課題として残された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1.試料合成について、蒸着源をGeTeとMnTeの2つにすることで制御性を改善し、合成の割合を試行的に調整してきたが、Mn濃度の再現性を得ることが難しく、試料合成に時間を要している。また、Mn濃度を評価するEDX実験においてシグナルが弱く、定量評価に時間を要している。 2.T型メモリ素子については、初期工程において現像後のレジスト上に成膜するか、成膜後にエッチングするかの条件出し、またピラーサイズの条件出しに時間を要したが、微細加工のパターン及びプロセスまでは検討できている。微細加工実験については共同設備利用なので、使用に制約があるのも遅れている要因である。 3.研究分担者所属の実験設備を利用して、広範囲なMn濃度をもつ試料に対して内殻の電子状態観測を行うことで結晶化温度のMn依存性を電子状態の観点から考察することとしている。上記1の理由により、測定対象となる試料の合成に時間を要しているために計画通りに進めることができていない。 以上の遅れについては、コロナ禍により行動が制限されたことが要因である。
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今後の研究の推進方策 |
試料合成については、GeTeとMnTeとの比率を大きく振って、幅広い濃度のアモルファス試料を成膜する。抵抗の温度特性から結晶化温度を評価するが、薄膜に細線加工を施して、測定領域を微小化することによって精度を向上させる。一方、EDXによるMn濃度評価のために、膜厚の大きい試料を合成してシグナル向上を図る。メモリ素子製作については、マスクパターンの設計が終わったので、加工作業を推進する。ここでは、ピラーとその保護層としてのSiO2絶縁膜の形成に高度な技術が必要となるため試行錯誤を繰り返しながら加工条件を抽出する。また、ピラーと相変化材料の接触面に凹構造を形成する加工条件を探る。ピラー径寸法を変えた素子のスイッチング特性を評価し、有限要素法による計算結果と比較して分析を行う。また、スイッチング特性に及ぼすMnドープの寄与について考察する。スイッチング特性の評価では、超短パルス微小電流計測における測定精度の改善が課題となっているが、アンプのカットオフ周波数を現状の500kHzから200MHzに上げることを検討する。 結晶化温度に対するMnドープの効果ついては、X線光電子分光による内殻ピークのケミカルシフト並びに相対強度の分析から化学結合状態について考察する。測定試料は低抵抗な結晶相が望ましいため、アモルファス試料を成膜後、加熱炉を使って結晶化させた試料を準備して、研究分担者と協力して実験を進める。結晶性についてはX線回折実験を行って分析する。
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