研究課題/領域番号 |
20K04571
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
島 隆之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 上級主任研究員 (10371048)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 酸化物 / 還元 / 情報記録 |
研究開始時の研究の概要 |
白金酸化物の還元温度は約860 Kと金属酸化物の中では比較的低い。この材料および還元温度では、室温では長期間にわたり安定に存在し、また半導体レーザー等の簡易な加熱源を用いれば容易に還元できる。還元前後の各状態の安定性と、光学特性の可変性の2つの特徴から、例えば情報記録や高温センサーへの応用が可能である。本研究ではこの積層構造において、還元温度、還元前後での光学特性、活性化エネルギー、記録の保存寿命などを評価し、積層がもたらす効果とその背景にある物理を、実験と解析から明らかにする。情報記録のコールドストレージ用途を具体的な応用例に、記録の長期保存に最適な積層条件を導出する。
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研究実績の概要 |
酸化白金(PtOx, x≦2)は、他の金属酸化物に比べて低温の約600°Cで白金に還元する特性がある。この温度は、例えば半導体レーザーによる集光加熱でも容易に到達可能であるため、光記録の用途のほか、レーザーでパターン加工するなどの応用が考えられる。光記録においては、PtOxと白金の屈折率が大きく異なることと、PtOx還元時に発生する酸素ガスにより積層膜が変形し得ることなどから、良好な記録特性を得ることが見込める。また、600°Cという記録温度は比較的高いため、記録状態は室温下では容易には失われない。この特性を活かしたコールドストレージ用途の検討のため、還元前後の熱的安定性の評価を行う。また、センサーへの応用を目指して、レーザー照射による薄膜のパターニングを行った。その結果、パワー条件を適切に調整することで、白金に還元したり、アブレーションによって薄膜を除去したりすることが可能であった。具体的には、PtOx薄膜へのレーザー照射により白金測温抵抗体の作製を検討した。ライン状の部分を作るため、まずアブレーションによりその周辺のPtOx薄膜を除去した。2箇所作ったライン状部分の一方は白金に還元した。その後、ライン状の白金部分とPtOx部分のそれぞれについて、ライン両端間の抵抗値を室温付近で測定した。PtOx部分の抵抗温度係数は597 ppm/°Cであり、白金部分の係数は2115 ppm/°Cであった、白金部分の係数については、過去報告の係数と同等であった。PtOx試料は係数が負になることが予想されたが、x値が1.0と小さかったため正となった。PtOx薄膜から、レーザー加工のみで、温度センサーを作製できることが実証された。また、上記成果は基板に0.5 mm厚のポリプロピレンを用いて実現できたことから、本成果はフレキシブルデバイスの作製に応用できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
社会情勢を鑑みて、前年度に引き続き、情報センシングへの応用に係わる研究を優先して進めた。温度センサーに関する研究成果は論文化された。光記録を行うため、レーザー顕微加工装置を構築している。レーザー光を光ファイバーで顕微鏡に導入するようにしていたが、ファイバー部でのパワーロスが大きいため、直接レーザー光を顕微鏡に入れてロスを低減する改造を行った。
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今後の研究の推進方策 |
光軸調整を含めた装置改造はほぼ完了し、テスト用試料に対してレーザー加工が行えることまで確認した。今後、下地層に様々な材料を用いたPtOx試料について、レーザー光で記録する試験を行う。また記録前後の熱的安定性について評価を行う。さらに、温度センサー以外のセンサーへの応用、センサーの微細化などにも取り組む。
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