研究課題/領域番号 |
20K04783
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
|
研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
田川 浩之 武庫川女子大学, 建築学部, 教授 (60422531)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 2023年トルコ・シリア地震 / 2024年能登半島地震 / 層崩壊 / 1自由度モデル(SDOF) / 串団子+心棒モデル / 累積損傷 / 強度・剛性低下 / 応答スペクトル / 振動台実験 / 和風伝統構法 / 洋風在来工法 / 大黒柱 / 通し柱 / 動的安定性 / 最小固有値 / 瞬間固有値 / 弾塑性挙動 / ロッキング連層耐震壁 / 材料構成則 / von Mises則 / Drucker-Prager則 / 降伏曲面 / リターン・マッピング / 弾塑性整合接線行列 / 心棒効果 / 地震応答解析 / 崩壊メカニズム / 変形集中緩和 / 逆さ吊りシミュレーション / 建築設計 / 形態創生 / 有限要素法 / 耐震設計 |
研究開始時の研究の概要 |
多層建物を高さ方向に貫く柱材や連層耐震壁などの心棒は、地震外乱時にある特定層への変形集中を緩和し,層崩壊メカニズムを阻止し,建物全体に安定性を与える.この心棒効果は,定性的には広く認識されており,その重要性についても認識されている。ところが,個々のケースについては検討されているが,定量的,包括的に十分に解明されていない.現行の耐震設計規準でも、心棒効果は直接的には考慮されておらず、建築設計への適用も限られている.
本研究では,広範な入力地震動,懸垂式,互入式,ダンパー連結式など,様々な心棒の形式に対して時刻歴応答解析を実施し,心棒効果について包括的,体系的に解明し,建築設計や形態創生に応用する.
|
研究実績の概要 |
2023年度は、心棒効果の観点から、おもに以下の2項目を実施した。これらは、2024年7月の第18回世界地震工学会議(WCEE2024)等で発表する。 ①応答要求量と地震被害の相関に関する検討 2023年トルコ・シリア地震、2024年能登半島地震における地震被害と、観測地震動の応答要求量との相関について、心棒効果の観点から検討した。トルコ・シリア地震では、2023年4月中旬、地震被害調査派遣団の一員として、トルコのAdana、Kahramanmaras、Hatayの3県において、能登半島地震では、2024年4月下旬、石川県富来、穴水、珠洲市正院、輪島地区で実施した。トルコ・シリア地震ではRC造や組積造の多数の建物、能登半島地震では多数の木造家屋が、全体崩壊もしくは層崩壊した。観測地震動データに対して、1自由度モデル、串団子モデル、心棒効果を考慮した串団子+心棒モデルで時刻歴応答解析を行い、最大層間変形角などの応答要求量を求めた。なお、串団子+心棒モデルで、心棒の曲げ剛性率を零とした場合は串団子モデル、∞にした場合は1自由度モデルと等価になる。1自由度モデルの弾性応答スペクトルよりも、強度・剛性低下やスリップ現象、累積損傷を伴う弾塑性応答、多層建物では特定層への変形集中により、応答要求量が著しく増加すること、高さ方向の一体性を表す心棒の曲げ剛性率は応答要求量に大きな影響を及ぼすことを定量的に明らかにした。 ②串団子+心棒モデルの振動台実験結果による検証 2022年3月に実施した伝統構法と在来工法による2層の木造軸組構造の振動台実験結果を用いて、串団子+心棒モデルの検証を行った。実験から得られた固有周期を与えるように串団子のばね定数を設定し、大黒柱、通し柱に相当する心棒の曲げ剛性率を設定すれば、串団子+心棒モデルは、層間変形角の実験結果を、概ねよく再現できることを定量的に明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年2月6日にトルコ・シリア地震、2024年1月1日に能登半島地震が起こり、それらの地震被害調査を実施した。本研究課題において、これらは当初の計画になかったが、それらの地震において、多数の観測地震動のデータが得られているため、1自由度モデル、串団子モデル、串団子+心棒モデルを用いて時刻歴応答解析を行い、本研究のテーマである心棒効果の観点から、解析結果を実際の地震被害に照らし合わせて検討した。また、串団子+心棒モデルにより、2022年3月に本研究課題で実施した伝統構法と在来工法による木造軸組構造の振動台実験で得られた結果を、当初想定していたよりも良い精度で再現できた。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度の時刻歴応答解析により、強度・剛性低下やスリップ現象、累積損傷を伴う弾塑性挙動を起こす場合であっても、心棒の曲げ剛性率を∞にした串団子+心棒モデルは、弾塑性の1自由度モデルと殆ど同じ応答をすることが分かった。この事象を拠り所とし、心棒効果を直接的に考慮した耐震設計手法の提案を行う。具体的には、1自由度モデルによる弾性応答スペクトルから、強度・剛性低下やスリップ現象、累積損傷を考慮し、弾塑性1自由度モデルの最大変位を推定する。これは、心棒の曲げ剛性率を∞にした串団子+心棒モデルの最大層間変位に殆ど等しい。これに、実際の高さ方向に貫く柱材や連層耐震壁に相当する心棒の曲げ剛性率に応じた増加率をかけることで、多層建物の最大層間変位量を推定する手法を提案する。また、2024年能登半島地震では、2階が1階を押し潰す形で層崩壊する木造家屋が多く見られたが、P-Delta効果による崩壊と捉えることができる。特に、最下層に変形集中が起こる場合、P-Delta効果は増大する。P-Delta効果による最大層間変位量の増加についても検討する。これらを踏まえて、最大層間変形量などの応答要求量をあるクライテリア以下に収めるために必要とされる心棒の剛性や強度を定量的に明らかにする。
|