研究課題/領域番号 |
20K04821
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23020:建築環境および建築設備関連
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
宇野 朋子 武庫川女子大学, 建築学部, 准教授 (90415620)
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研究分担者 |
伊庭 千恵美 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10462342)
安福 勝 近畿大学, 建築学部, 教授 (20581739)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 文化財 / 保存 / 劣化 / 石材 / 水分移動 / 材料物性 / 外装材 / 降雨 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、歴史的建造物である「旧甲子園ホテル」(1930年竣工)に外装材として用いられている複数の凝灰岩の劣化の要因を明らかにすることを目的としている。旧甲子園ホテルには、数種類の凝灰岩が外装材として用いられているが、石材の種類や周囲の環境条件によって、剥落や欠損といった異なる劣化状況を呈している。 劣化状況の違いには、石材の周囲の環境要因や石材の特性が関係していると考えられる。本研究では、劣化状況分析、現地の環境の分析、材料物性の検討、熱水分移動解析をとおして、これらの劣化の予測を行う。本研究により、凝灰岩が用いられた建造物や文化財の劣化の予防や保存対策を示すことが可能となる。
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研究実績の概要 |
本研究は、歴史的建造物である旧甲子園ホテルの外装材として用いられている2種類の凝灰岩(日華石・竜山石)を対象として、それぞれにみられる剥離や欠損といった状態の異なる劣化の要因を、材料分析・熱水分移動解析・フィールド調査により明らかにすることを目的としている。本年度は、以下の項目について検討した。 劣化の状況分析と経年変化の定量的評価:調査対象としている旧甲子園ホテルの日華石・竜山石ともに劣化が進行していることを確認した。日華石では、凍結融解に伴って破壊が生じたと考えられる石材の劣化の状況を調査した。竜山石では、剥離の状況を継続して調査した。 材料物性の収集と整理:前年度に行った日華石と竜山石の凍結融解促進試験について、凍結融解を繰り返した際の、細孔径分布、透水係数などの物性データを整理した。また、これまで数値解析で用いてきた熱伝導率などの物性データについて、実測・実験を行い妥当性を検証した。 材料内の熱水分状態の把握:初年度に作成した解析プログラムを改良するとともに、日華石と竜山石の凍結破壊が起こると想定される環境において、凍結融解促進試験で得られた劣化前後の物性を用いた解析を行った。物性値が変化する(劣化が進む)ことにより、石材内の水分移動量と移動速度が大きくなるため水分の滞留時間が短くなることを示した。竜山石で見られる剥離の要因を乾湿に伴うものと予測し、実環境(降雨量・日射量)を入力とした解析プログラムを作成し、検討を行った。
初年度からこれまでに、微環境の把握、熱水分に関する物性データの整理が完了している。それらを条件とした数値解析を行い、石材内の温度・含水率を把握し、低温時に含水する領域や時期の凍結破壊への影響、含水域と乾湿の速度や繰り返し頻度の剥離への影響などを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、①劣化の状況分析と経年変化の定量的評価、②微環境の調査、③材料物性の収集と整理、④材料内の熱水分状態の把握、⑤同様の事例の収集・分析を行う予定である。 ①劣化の状況分析と経年変化の定量的評価では、2次元データの蓄積を行うとともに、簡易にデータを収集できる手法の検討を進める。②微環境の調査では、継続して環境データを収集している。③材料物性の収集と整理では、数値解析に必要となるデータを得ることができている。④材料内の熱水分状態の把握では、②および③の結果と合わせて、総合的に分析を進めている。⑤同様の事例の収集・分析では、凝灰岩建築物について、引き続き事例を収集する。 おおむね計画通りであるが、結果をまとめるために期間を延長した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた調査対象石材周りの微環境データ、材料物性データをもとに、材料内の熱水分状態の把握をするための数値解析を行い、成果をまとめる。また、昨年度までにできていない劣化の定量的データの整理を行う。
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