研究課題/領域番号 |
20K04907
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
三田村 哲哉 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (70381457)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | エルネスト・エブラール / ジャン=クロード=ニコラ・フォレスティ / アルフレッド・アガシュ / ジャック・グレベール / 都市・農村衛生部会 / コルニュデ法 / フランス都市計画家協会 / 都市・農村 衛生部会 / ジャン=クロード=ニコラ・フォレスティエ / エドゥアール・ルドン / アンドレ・ベラール / レオン・ジョスリー / アルベール・パランティ / 都市計画 |
研究開始時の研究の概要 |
鉄筋コンクリート造の発達と前衛芸術の影響に傾倒した20世紀前半のフランス近代建築史の史観に疑念が生じている。一方、ミュゼ・ソシアルの建築家らによるユルバニスムという新たな考え方、つまり科学に基づいた都市計画がフランスの国内外で近代建築により大きな影響を及ぼしたことが明らかになりつつある。本研究は、技術や美術でなく、この新たな都市計画に焦点を当てた「20世紀前半フランスにおける新たな都市計画ユルバニスムに関する研究」の一部である。研究期間内の事業概要は、こうした建築家や造園家らが欧州において手掛けた都市計画の事業に焦点を当て、史実と功績の解明を試みることである。
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研究実績の概要 |
本年度の研究実績は、昨年度の今後の推進方策に沿うと、次の3点にまとめることができる。第1はミュゼ・ソシアルの都市・農村衛生部会における議論の把握である。こちらは、本部会の創設年である1908年から、第二次大戦が開戦した1939年までに開催された200回を超える審議を考察の対象としたもので、政治家、建築家、造園家、測量士らの履歴・作品歴・事業暦とともに、審議への出席者、主題、および内容の把握に努めた。主題はパリ城壁、空地、公園、道路、法制、下水道、国外事業、田園都市、農業宮、博覧会、展覧会、建築家ら自身の事業報告など、史実と照合し、20世紀前半の新たな都市計画、ユルバニスムの一端を明らかにする試みで、完了の目途がつく段階にある。第2は国内事業を対象にしたものである。フランスで最初の都市計画法であるコルニュデ法に関する検討は、都市・農村衛生部会で進められた。本課題は、当初の研究計画に沿い、ミュゼ・ソシアルの機関紙に基づき考察を進めるとともに、アンリ・プロスト史料のほか、1925年グルノーブル博など、第一次大戦以前の検討から1919年の制定および1924年の改定までを視野に入れて、その内容及び検討過程の解明を進めている。この課題は、当初の想定をはるかに上回る資料と対象が明らかになり、研究計画以上の成果が期待できるが、その分、推進状況はやや遅れた段階にある。第3は、都市・農村衛生部会における建築家、造園家、測量士が手がけた都市計画に関する考察である。本年度の実績は、文献調査に基づきダンケルク(1913)とマルセイユ(1933)を、実地調査に基づき前年度主題としたエブラールによる最初の現地対象スパラト(1912)とテッサロニキ(1917)考察の対象とし、前者は両都市における都市計画の概要、後者は歴代の建築家による旧・宮殿の復元史と大火後の復興計画の概要を把握したことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗状況は、本年度の研究課題の概要に示した通り、全3点の実績があるものの、予定通りに完了したものもあるが、後述の通り、実地調査の状況を鑑みると、区分についてはやや遅れているとせざるを得ない。第1の課題、ミュゼ・ソシアルの都市・農村衛生部会における議論の把握では、建築家・造園家・測量士らの履歴、作品歴、事業暦に関する考察は完了したものの、パリ城壁、空地、公園、道路、法制など史実との照合、特に第2の課題で重要なコルニュデ法については、アンリ・プロスト史料など、豊富な資料により、成果が期待されるが、その一方で多くの時間を要している。第2の課題は第1の課題で触れた通り、当初の研究計画に沿い、ミュゼ・ソシアルの機関紙に基づいた考察を進めている。都市・農村衛生部会の建築家らを中心に推進された第一次大戦以前のコルニュデ法の検討のみならず、1919年の制定から1924年の改定後、さらに1925グルノーブル博などの、その後の実施状況についても一部焦点を当てたことにより、進捗状況にやや遅れが生じている。本研究課題を推進するに当たり、最も重要なのが第3の課題、実地調査に基づいたものである。上記の通り、今年度スパラト(1912)とテッサロニキ(1917)における実地調査が実現できたが、当初の研究計画と比較すると遅れている。両者ともにエブラールによる事業で、研究計画に挙げたアガシュらによるダンケルク(1913)とマルセイユ(1933)については主に文献調査を進めた。エブラール、アガシュらによる各都市における都市計画に関する研究は、建築家毎に国内外両者について考察の対象とすることが求められるため、アガシュやグレベールらを対象とした実地調査に基づく都市計画に関する考察や次年度も継続が求められる。両建築家の事業については、次年度に可能な限り、実施調査の成果を加味できるように努める。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、現在までの進捗状況に基づいて、次の3点とする。第1はミュゼ・ソシアルにおける都市・農村衛生部会の建築家・造園家・測量士らの履歴・作品歴・事業暦に基づき、1908年から1939年までに開催された審議内容の解明と史実との照合である。遅れを取っているのは、主にコルニュデ法に関する部分で、本法制定の背景にあるパリの城壁、空地、公園、道路などの課題を踏まえつつ、その内容と経緯を照らし合わせることによって、ユルバニスム萌芽期における都市計画の実態の一端を明らかにすることを目指す。第2はコルニュデ法を考察の対象としたものである。先述の通り、本研究に必要な資料や内容は、当初の予定を上回ったため、豊富な資料と対象を踏まえた上で、その後の実施状況を含めた考察を進める予定である。尚、1919年の制定および1924年の改定までの検討内容の変遷を明らかにするという点については、これまで通り、変更はない。第3は、国内外で都市・農村衛生部会の建築家・造園家・測量士が手がけた都市計画に関する考察である。本課題は、実地調査が必要であるため、今後の研究の推進方策に挙げた3点の中でも遅れている。当初、研究対象としたジョスリー以降、本課題については文献調査に基づき成果を残してきたが、昨年度はエブラールに焦点を当てて、2都市の実地調査を実施した。今後の実地調査の推進方策は、フォレスティエやグレベールら複数の建築家に焦点を当てるのではなく、研究の推進が遅れているアガシュに焦点を当てて、国内外の都市における都市計画の概要と変遷を明らかにすることを目指す。アガシュについてはパリのほかにダンケルク(1913)についてもすでに進められているため、当初の研究計画に立ち返り、国外の一都市として、アガシュが注力したポルトガルの都市計画を加える形で、今後の研究の推進方策を検討している。
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