研究課題/領域番号 |
20K04911
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
松下 希和 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (70748459)
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研究分担者 |
田中 厚子 芝浦工業大学, 建築学部, 教授 (60438819)
赤澤 真理 大妻女子大学, 家政学部, 准教授 (60509032)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 女性 / 住宅 / 婦人雑誌 / 施主 / 女性デザイナー / 近代住宅 / しつらえ |
研究開始時の研究の概要 |
明治期の近代国家の政策により、女性が家庭を管理する役割を与えられたことで、住宅に対しても能動的に関与したことは社会学や家政学の分野で研究されているが、その中で、国民の生産・育成を主目的とする家族の器ではなく、主体的な個としてのライフスタイルを実践する場として住宅を考えた女性の施主や設計者がいた。彼女たちの住宅は、広いメディアで発表されており、戦後日本の住宅のあり方に影響を与えたと考えられる。その影響を探るため、本研究は戦間期に建てられた女性と関わりが強い住宅を抽出し、その思想と平面計画、しつらえなどとを比較分析することにより、彼女たちが推し進め、形成しようとした近代住宅を浮かび上がらせる。
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研究実績の概要 |
本研究は住宅が近代化する過程にあった戦間期に着目し、家族本位にとどまらない近代的なライフスタイルを実践した女性たちが、住まい手としてまたは作り手として様々な制約の中で、直接的または間接的に近代住宅の推進にどのような役割を果たし、それらは戦後の住宅にどのような影響を与えたかを明らかにすることを目的としている。 これまでの研究から明らかになった婦人雑誌における建築家の言説の重要性を鑑み、2023年度は特に戦後1951年に創刊された『モダンリビング』に着目した。『婦人画報』の別冊として出版された『モダンリビング』は中流都市生活者をターゲットとして人気を博したが、その編集には池辺陽、清家清などの建築家が深く関わっており、若手建築家の先進的な作品を掲載するなど、一般誌の枠に収まらない専門性を有していた。また、女性誌を母体としているからか、女性設計者を積極的に取り上げており、その中でも特にこれまでインテリア・デザインの分野でしか注目されてこなかったノエミ・レーモンドの住宅作品や住まいについての言説を収集・分析した。この内容は2024年度の日本建築学会大会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究者とほぼ毎月1回の打ち合わせを行った。2023年8月には米国議会図書館とペンシルバニア大学アーカイブを訪れ、議会図書館では戦後吉田五十八の施主となる、坂西志保(戦前同図書館に勤務)の資料、ペンシルバニア大学アーカイブでは戦中のノエミ・レーモンドの手紙などの資料を収集・確認した。また、2024年3月には青森県八戸市にある羽仁もと子記念館へ行き、ヒアリングと資料の確認を行なった。羽仁もと子はフランク・ロイド・ライトや遠藤新の施主としてだけでなく、『婦人之友』を通して近代的なライフスタイルを推進した。今回の視察で現在も続く「友の会」のメンバーの方のお話を聞けたことで、集まる場のなかった主婦たちに協働して社会活動に参加する道筋を示した功績も非常に大きいと感じた。 戦後の革新的な住宅の近代化につながる、戦前における女性の設計者、施主のライフスタイルに対する考え方が示された資料を収集し、まとめていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は総括を行う年として、昨年度に引き続きこれまで収集した以下の資料の整理を行う。 女性を施主とした住宅 (ほぼ終了)、女性が設計者として関わった住宅(ほぼ終了)、住宅の近代化を啓蒙・指導した女性の活動(範囲が広いので、継続的に調査・収集中)、女性誌における、住宅関連記事と建築家の寄稿記事(対象誌を増やして、調査・収集中) これらの活動は多岐に渡り、「女性」という共通項だけで括れないところがある一方、女性が建築設計に直接関わることが難しかった時代にもさまざまな面から女性は住宅の近代化に寄与しており、その多様性を示すことができると考える。今年はできるだけ現存する住宅や施設に足を運び、具体的な調査・研究を進めていくとともに、論文や学会発表など積極的な発信にも努めていきたい。
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