研究課題/領域番号 |
20K04926
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分24010:航空宇宙工学関連
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
桃沢 愛 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (70575597)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | アーク加熱風洞 / 再突入環境 / 熱防御システム / ジルコニウムカソード / 放電プラズマ焼結 / 動的酸化 / 熱防御システム(TPS) / 動的酸化試験 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、他に殆ど実績のない再突入環境を模擬した環境下でTPSの酸化実験を行う(動的酸化)ことである。実験室レベルで動的酸化実験可能なアーク加熱風洞を用いて、信頼性の高いTPSの使用可能温度Tmaxを確定し、高速流下での酸化のメカニズムを解明する。同時に、TPSに用いる超高温耐熱セラミックス(UHTC)の組成および微細構造の検討による機械的特性の改善を図る。そして、今後のより高速な再突入ミッションの実現に向け、アーク加熱風洞の継続的な改良を行う。
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研究実績の概要 |
宇宙往還機の大気圏再突入の際、機体は高温にさらされる。機体を保護するために、熱防御システム(TPS: Thermal Protection System)が使用されている。再使用型宇宙往還機によるコスト低減を図るには損耗の少ないTPSの開発が必要である。TPSの加熱試験には、大気圏再突入環境の模擬が可能なアーク加熱風洞が用いられる。我々の研究グループでは、コンストリクタ型アーク加熱風洞の開発を行っている。 アーク加熱風洞構築については、昨年度に引き続きカソードの最適化を図っている。誘導加熱炉を用いて様々な実験条件でZrカソードの表面窒化を行い、作動試験を行った結果、窒化被膜の厚さや質がアーク放電に大きな影響を与えることが明らかになった。具体的には、最適な被膜厚さがあり、また、均質な被膜厚さを持たせることがアーク点火及び安定した作動に大きく影響することが分かった。その結果、アルゴン気流のプラズマトーチの長時間保持に成功した。一方で、今回の成果から、アーク放電の安定がアノードの損耗にも大きく影響することも明らかになった。 一方、TPSの材料作製において、今年度より放電プラズマ焼結法(SPS)を用いてZrB2-SiC作製実験を開始した。過去においては装置の条件上、最高1800℃までの焼結が出来なかったが、より高密度な試料作製のためには、より高温での焼結が必要であることが明らかになった。また、新たな試みとして、より軽量なTiC-TiB2を用いた試料作製を行い、高密度な試料作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はコロナ禍による実験室使用制限はあったものの、ジルコニウムカソードの表面窒化処理実験により、過去よりも大幅に安定したアーク加熱風洞の作動が可能となり、また、安定した放電のカギとなるカソードの条件が明らかになった。また、アノードの損耗は、気流の種類だけでなく、放電の安定性が重要であることを見出すことが出来たのも大きな成果と言える。 一方、熱防御システム(TPS)の作製において、放電プラズマ焼結法(SPS)により、試料作製を開始している。既存のZrB2-SiCだけではなく、TiC-TiB2の作製実験を開始している。2種類のTPSの作製により、焼結性や微細構造において、多くの比較が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
アーク加熱風洞構築については、作動気流をアルゴンから酸素を含む気流を用いて実験を行う。アーク放電のための電極について、カソードについては、引き続きZrN被膜カソードの最適条件を見出し、その安定的な作成プロセスを確立する。また、作動流体の流量や種類によってアーク点火・放電条件が変わることが予測されるため、それがカソード等の電極に与える影響について見出す。 カソード電極において、新たに導電性の酸化物を用いる案がアイデアとして出た。過去にこのような試みはなかったことから、さらに文献調査を行った後、試料作製を行い、特性の測定を試みることで、可能性を探る。 TPS材料については、ZrB2-SiCおよびTiC-TiB2について、これまでは焼結性にのみ着目してきたが、宇宙往還機を構成する構造材として用いる可能性を鑑みて、機械的特性の測定を行う予定である。また、アーク加熱風洞での酸化実験が可能になった時点で酸化実験を行う予定である。
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