研究課題/領域番号 |
20K04988
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25010:社会システム工学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
辛島 光彦 東海大学, 情報理工学部, 教授 (90264936)
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研究分担者 |
濱本 和彦 東海大学, 情報理工学部, 教授 (50266368)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 歩行者用シミュレータ / VR環境 / 全方向歩行可能歩行デバイス / 速度感 / 歩きスマホ / 距離感 / VR環境(没入型) / 歩行行動特性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では歩行者が実空間と同様に歩行環境を体感できるVR環境を用いた一般的な歩行環境を再現できる歩行者用シミュレータを開発することを目的としている。 一般的な歩行環境に対応し,様々な歩行シーンを対象とできる歩行者用シミュレータに求められる要件を抽出し,一般的な歩行環境を再現できるVR環境を用いた歩行者用シミュレータを開発する。さらに実空間における歩行環境の様々な状況に対応できることも含め,開発したシミュレータの有効性を確認するために,シミュレータを用いた実験を通じて得られる歩行行動特性が従来の実空間における実験を通じて得られた歩行行動特性を再現していることを確認する.
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研究実績の概要 |
本研究は,歩行行動特性に関する研究において安全の観点からの倫理上の制約を伴い歩行シーンが限定的となる問題を解決できるように,歩行者が実空間と同様に歩行を体感できる歩行環境を再現できるVR環境を用いた歩行者用シミュレータを開発することを目的とした. 2021年度は歩行者用シミュレータの基本要件を満たしたHMDを用いたVR環境における全方向歩行可能な歩行デバイスを用いたシミュレータのプロトタイプを用いて,現実環境における歩行の際の速度感と距離感との比較検討を行うための実験を実施したが,2022年度は没入型VR環境にて同様の実験を実施した. 実験の結果,HMDを用いたVR環境同様,没入型VR環境においても速度感,距離感については歩行デバイス特性が影響を与えることが確認され,VR環境下のパラメータを調整することによりシミュレータの歩行速度を現実環境の歩行速度と同様の状態にできることが示唆された.しかし調整前のシミュレータの速度と現実環境の速度の大小関係はHMDを用いたVR環境とは逆の関係になり,そのメカニズムの検討が課題として残った. また2022年度は,従来の実空間の歩行環境において明らかにされている歩行行動特性のシミュレータによる再現性の確認として,研究代表者が過去に実施した実空間の歩行環境における地図アプリを利用した歩きスマホに関わる歩行実験と同様の歩行環境における歩行をシミュレータを用いて実施した場合の歩行行動特性の再現性を確認する実験を実施した. 実験の結果,シミュレータ上においても実空間の歩行環境と同様に歩きスマホが確認されるとともに,実空間の歩行環境と同様に歩きスマホを防止すると期待される地図アプリを利用することにより,有意に歩きスマホが低減されることが示唆され,歩行シミュレータによる実空間の歩行行動特性の再現性が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度,2021年度とコロナ禍により研究を当初の研究実施計画通りに進捗させることが困難であったため,研究の進捗状況に遅れが生じていた.加えて2021年度に予定していた没入型VR環境で実施する予定のシミュレータを用いた実験が没入型VR環境に3D地図情報を投影するソフトウェアの問題で実施できず,当初の予定になかったHMDを用いたVR環境にて実験を実施したため,この点からも研究の進捗状況に遅れが生じてしまった. 2022年度はその遅れを取り戻すため,新規に対応したソフトウェアを導入し,没入型VR環境にて実験を実施した. ところでこの実験に際し歩行シミュレータ上の歩行速度を現実環境の歩行速度に一致させるためには歩行シミュレータのパラメータ調整が必要であることが分かっているが,パラメータ調整に大きく影響する現実環境の歩行速度とパラメータ調整前のシミュレータの歩行速度の大小関係が2021年度に実施したHMDを用いたVR環境と2022年度の没入型VR環境では著しく異なった(逆転した)ため,パラメータ調整に時間を要し2022年度も計画通りには進められなかった.そのため計画していた従来の実空間において明らかにされている歩行行動特性についてのシミュレータによる再現性の確認実験の一部が実施できなかった. 加えて両VR環境にて現実環境の歩行速度とパラメータ調整前のシミュレータの歩行速度の大小関係が著しく異なった(逆転した)メカニズムを明らかにすることが新たな課題として残された.
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今後の研究の推進方策 |
前述のようにHMDを用いたVR環境と没入型VR環境において現実環境の歩行速度とパラメータ調整前のシミュレータの歩行速度の大小関係が著しく異なった(逆転した)メカニズムを明らかにすることが新たな課題として残された.2021年度および2022年度に行われた両VR環境における実験データは年度を跨がるため異なる被験者から得られたものである.加えて歩行速度を求めた現実環境の歩行場所とシミュレータ上の歩行場所は同一ではなく現実環境とシミュレータ環境の歩行環境は必ずしも同一ではなかった.そこで2023年度は現実環境の歩行場所,HMDを用いたVR環境,没入型VR環境の歩行場所を全て一致させた上で,それぞれの歩行に関する情報を収集し,HMDを用いたVR環境と没入型VR環境における現実環境の歩行速度とパラメータ調整前のシミュレータの歩行速度の大小関係の相違について確認するとともに,相違が確認された場合は,その相違のメカニズムについて検討する予定である. 加えて2022年度に計画し実施できなかった従来の実空間において明らかにされている歩行行動特性についてのシミュレータによる再現性の確認実験を実施する予定である. 本研究に割り当てるエフォートを当初の計画より高めることで2023年度内に確実に当初予定以上の実績を上げる予定である.ただし2023年度も前年度までと同様,コロナの感染状況が実験実施に影響を与える可能性は特に被験者確保の面で否定できない.そこでこの可能性への対応策として,前年度同様あらかじめ年度初めより実験の期日を指定せず,コロナの感染状況が沈静しているタイミングで実験に参加するという条件を了解する被験者を募集し,コロナの感染状況が沈静しているタイミングで遅延なく実験が実施できるように準備する予定である.
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