研究課題/領域番号 |
20K05001
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25020:安全工学関連
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
松岡 常吉 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90633040)
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研究分担者 |
出原 浩史 宮崎大学, 工学部, 准教授 (50515096)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 火災 / 燃え拡がり / 不安定性 / 固体燃焼 / 並行流 / パターン形成 |
研究開始時の研究の概要 |
火災被害の低減には,その初期段階における延焼過程を予測し,それに基づく適切な消火・防火戦略を構築することが重要である.延焼過程を予測するには火炎の進行方向と速度を知る必要があるが,従来研究のほとんどは可燃物上を火炎が流れに沿って一様に燃え拡がる系を対象としており,火炎の進行方向についてはよく分かっていない. 本研究では,燃焼可能な限界に近い条件で見られる火炎の分裂現象に着目し,分裂後の火炎の進行方向を決める物理を明らかにすることを目的とする.はじめに流れと異なる方向への燃え拡がりが起こり得ることを実証する.さらに進行方向を制御可能な装置を用いた実験を行い,メカニズムについて検討する.
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研究実績の概要 |
紙などの可燃性固体が狭い空間内や微小重力環境で燃焼する際,固体上を燃え拡がる火炎が多数の小さい火炎へと分裂することがある.小さい火炎は視認性が悪く,火災の発生に気付くのが遅れる要因となるため,分裂後の燃え拡がり挙動を明らかにすることは火災安全上重要である.しかし,これまでに火炎の燃え拡がり速度に関する研究はなされているものの,燃え拡がり方向に着目した研究はほとんどない.本研究は,酸化剤流の上流側の固体端部にて着火し火炎が(全体的には)酸化剤流の下流方向に燃え拡がる,いわゆる「並行流燃え拡がり系」を対象として,火炎の進行方向を決める物理の解明を目指すものである.2021年度は主に矩形の固体を試料とする実験とそれに対応する数値シミュレーションを実施し,燃え拡がり挙動を調べた. 矩形試料を用いた実験を行うための装置を開発した.この装置は上下2枚の板の間の狭い空間で固体を燃焼させるもので,パラメータとして試料と上下の板との間の隙間高さおよび供給する酸化剤の流速を調整可能である.この装置を用いて実験を行い,酸化剤流速が小さい場合には火炎の分裂(または縮小)が起こり,さらに隙間高さに応じて2種類の挙動が現れることを確認した.1つ目は多数の小さい火炎に分裂し,それらが不規則に動きながら燃焼が進行する挙動,2つ目は比較的大きな1個程度の火炎が主流に対して垂直な方向に(伸縮するように)動く挙動である.この実験の結果と円形試料を用いた実験で観察された結果との対応関係について今後詳細に調べる予定である. 矩形固体の燃え拡がりに関する数値シミュレーションを実施し,定性的には実験的に観察された挙動と似た結果が得られることを確認した.また,シミュレーションの結果より,火炎が主流に対して垂直方向に移動するという挙動にそれと対向する方向からの拡散による酸素供給が関わっている可能性があることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に追加して実施した矩形試料用の実験装置の開発に時間を要したため,2021年度に実施する予定だった一部の実験について遅れが出ている.しかし,装置完成後は矩形試料を用いた実験が順調に実施できており,また,数値シミュレーションについては当初計画より早く進められている(当初計画では2022年度の実施を予定していた)ことから,本研究全体の進捗状況としてはおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの研究で円形だけでなく矩形の試料を用いた実験においても,流れと垂直な方向に火炎が燃え拡がる場合があることが確認できた.矩形試料を用いる実験系では酸化剤流速が位置に依存しないため,円形試料に比べて燃え拡がり方向などの挙動の定量的評価が容易である.そこで今後は,主に矩形試料をターゲットとして研究を進める. 2021年度に開発した矩形試料用の実験装置を用いた実験では,燃焼が進行するにつれて燃え拡がる火炎の位置が偏るという問題があった.これは試料のたわみや酸化剤流の偏りなどによる影響と考えられる.2022年度は火炎位置の偏りをできる限り小さくできるように装置を改良する.また,酸化剤中の酸素濃度を変更できるよう流量制御システムについても改良を施す.試料と上下の板との間の隙間高さ,酸化剤流速,酸素濃度をパラメータとして変化させて実験を実施し,画像解析により得られた実験結果を定量的に評価する.得られたデータを実験条件と対応付けて整理する.なお,画像解析には円形試料用に開発した画像解析コードを矩形試料用に一部改良して用いる. 2021年度に開発した数値シミュレーションモデルを用いて,パラメータの影響について詳細に検討する.まずは実験と同じ条件でシミュレーションを実施し,得られた結果を実験結果と比較してモデルの妥当性を評価する.その後,様々な条件でシミュレーションを行い,各条件における燃え拡がり挙動やそれらの火炎構造を調べ,燃え拡がり方向を決めるメカニズムについて考察する. 上述の通り,本研究の残りの期間では矩形試料を主なターゲットとするが,特にらせん状の燃え拡がりは円形試料の方が観察しやすいことを考慮し,円形試料を用いた実験もあわせて実施する.円形および矩形のそれぞれの試料で得られた実験結果を比較して両者の対応関係を明らかにし,燃え拡がり方向に関する基礎的知見を得る.
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