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「ありがとう」が社会を安全にする?-互恵性心理に着目した新たな違反抑止策の構築-

研究課題

研究課題/領域番号 20K05003
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分25020:安全工学関連
研究機関大阪大学

研究代表者

臼井 伸之介  大阪大学, 大学院人間科学研究科, 名誉教授 (00193871)

研究分担者 森泉 慎吾  帝塚山大学, 心理学部, 准教授 (50735066)
秋保 亮太  大阪大学, 大学院人間科学研究科, 助教 (50825130)
上田 真由子  関西国際大学, 心理学部, 准教授 (70823764)
中井 宏  大阪大学, 大学院人間科学研究科, 准教授 (90583526)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
キーワード労働安全 / 労働安全衛生 / 規則違反 / 互恵性心理 / ヒューマンファクター / 安全教育
研究開始時の研究の概要

交通事故や労働災害発生の主要な背景要因となる安全規則違反の抑止には、法規制などの罰、目標達成への報酬、安全教育などが主に対策として実施されているが、本研究では新たな視点として、「人の心理面から違反抑止に作用する効果的なメッセージ表現とは何か?」を明らかにする。
従来、標識などによる違反抑止のメッセージは、「〇〇禁止」のような禁止・命令型が多いが、ここでは「〇〇ありがとう」という感謝型メッセージ、すなわち感謝-返報という人間の互恵性心理に着目し、違反抑止を動機づけるという新たな抑止策を提案する。そしてその有効性を、ドライビングシミュレータを用いた仮想環境や鉄道踏切などの現実場面から検討する。

研究実績の概要

交通事故や労働災害発生の主要な背景要因である、安全規則違反の抑止には法規制などの罰、目標達成への報酬、安全教育などが主に対策として実施されている。本申請研究では新たな視点として、「人の心理面から違反抑止に作用する効果的なメッセージ表現とは何か?」を明らかにする。従来、標識などによる違反抑止のメッセージ表現は、「〇〇禁止」のような禁止・命令型が多いが、ここでは「〇〇ありがとう」という感謝型メッセージ表現、すなわち感謝-返報という人間の互恵性心理に着目し違反抑止を動機づけるという新たな抑止策を提案する。
そこで本申請課題では、以下3点を目的とする研究を実施することとした。
目的Ⅰ.ドライビングシミュレータを用いた仮想環境場面において、感謝メッセージと禁止メッセージを伴う標識を提示し、参加者の実行動パフォーマンスの比較から感謝のメッセージ表現の違反抑制効果について検討する。目的Ⅱ.感謝メッセージにより生じた違反抑制効果は、メッセージの設置されていない状況においても波及するのか、また他の違反抑止にも般化するのかについて検討する。目的Ⅲ.感謝メッセージの効果について、仮想環境場面のみならず現実場面でも有効であるのかを、実際の鉄道踏切場面において検討する。
研究の1年目、2年目ではドライビングシミュレータを用いた実験を実施し、感謝メッセージの違反抑制効果について検討した結果、感謝メッセージの標識提示条件でのみ、時間経過に伴う速度上昇を抑止する、ということが明らかにされた。研究3年目では実験結果を一般化するため、参加者を学生から一般男性に変更した実験を実施した。また研究4年目では、それまでの研究成果の一部を英文論文にまとめ、”Journal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufacturing”に投稿した(現在改稿中)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究の1年目では、申請者の研究室が所持するドライビングシミュレータ(以下DS)およびプログラムソフトを用いて道路交通場面を作成した。また速度制限標識とともに看板として道路脇に提示される禁止・命令メッセージ表現を伴う表示ボード(以下ボード)と、感謝メッセージ表現を伴うボードを設置した。
研究の2年目では、1年目の予備的研究の結果を踏まえて作成した実験プログラムを用いてDS実験を実施した。参加者は普通自動車免許証を所有する大学生35名であった。設定した走行コースには50km/hの速度制限標識を設置した。分析では、コースを3分割してそれぞれを「初期」、「中期」、「終期」としてメッセージごとに各進行段階の平均速度を算出した。その結果、禁止型においてのみ、終期の速度が初期や中期よりも速く、感謝型においては中期から終期における速度変化がなかったことが示された。このことから、禁止型のメッセージによって速度上昇が促進される可能性が示唆された。
研究の3年目では実験参加者を運転経験10,000km以上の一般成人とし、また制限速度を50km/hと30km/hの2水準とした同様の実験を実施した。その結果、制限速度50km/hの場合のみ、終期の速度が初期の速度より速くなることがわかった。また、心理的リアクタンスに関する質問4項目から構成される質問紙に回答を求めた結果、制限速度50km/hにおいて、感謝型の方が禁止型よりリアクタンス得点が低くなることが明らかとなった。
そこで研究4年目では実空間、具体的には鉄道の第三種踏切(遮断棒のない警報機のみの踏切)におけるメッセージ表現の効果を確認する実験を予定していたが、新型コロナの影響や、実験実施に係わる事前調整に想定以上に時間がかかり、研究4年目には実施出来なかった。

今後の研究の推進方策

研究2年目でのDS実験の結果、走行の進行段階において、禁止型メッセージでは、速度の上昇が認められたが、感謝型メッセージではそのような上昇が認められず、心理的リアクタンスの観点から、禁止型と比較して、感謝型の方が違反抑制に有効であることが示唆された。また、研究3年目では、参加者を一般成人ドライバーとし、また制限速度として、30km/hの条件も加えて、引き続きDSを用いた実験を行ったところ、研究2年目の実験結果を一部支持する結果が得られた。ただしこれまでの実験では指標として、走行速度という連続量を用いていたため、例えば制限速度を1kmオーバーする場合では、意図的な違反か非意図的なヒューマンエラーかの弁別が難しいとの問題点が残った。また実験の結果を実空間に適用出来るかという問題も残った。
そこで研究の4年目は、DSという仮想環境下でなく、実空間におけるメッセージ表現の効果を確認する実験を計画した。具体的には鉄道の第三種踏切(遮断棒のない警報機のみの踏切)を対象とし、禁止または感謝メッセージを伴う標識を設置することにより、通過車両の一時停止状況を測定し、メッセージ表現の効果を現実場面において確認するものである。ただし実空間での実験実施に際しては、実施場所の事前調整等に想定以上の時間を要したため、実空間における実験は研究5年目に実施することとした。

報告書

(4件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 研究成果

    (12件)

すべて 2022 2021 2020

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Effects of Speed Reduction Marking Patterns on Simulated Driving Speed and Lane Position2022

    • 著者名/発表者名
      Iio Kentaro、Nakai Hiroshi、Usui Shinnosuke
    • 雑誌名

      Transportation Research Record: Journal of the Transportation Research Board

      巻: 2677 号: 2 ページ: 880-897

    • DOI

      10.1177/03611981221108979

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] リスクテイキングにおける行動経験とベネフィット認知の関係2022

    • 著者名/発表者名
      森泉 慎吾・臼井 伸之介
    • 雑誌名

      帝塚山大学心理科学論集

      巻: 5 ページ: 13-19

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 人間は変わる、人間は変わらない2021

    • 著者名/発表者名
      臼井伸之介
    • 雑誌名

      生産と技術

      巻: 73 ページ: 1-3

    • NAID

      40022721173

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 時間節約バイアスの抑制に関する実験的検討2021

    • 著者名/発表者名
      森泉慎吾・臼井伸之介
    • 雑誌名

      IATSS Review

      巻: 45 ページ: 198-205

    • NAID

      130007994304

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Preliminary study on the component of perceived benefit in ris-taking2020

    • 著者名/発表者名
      Moriizumi, S. & Usui, S.
    • 雑誌名

      応用心理学研究(英文特集号)

      巻: 46 ページ: 38-43

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] Effects of impression and social distance: A study in risky decision-making for others,2021

    • 著者名/発表者名
      Moriizumi, S. & Usui, S.
    • 学会等名
      32nd International Congress of Psychology
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Implementing a safety education programme for Elementary School Students2021

    • 著者名/発表者名
      Nakai, H., Oka, M., Usui, S. and Moriizumi, S.
    • 学会等名
      32nd International Congress of Psychology
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] ドライバーへの感謝が無信号横断歩道での一時停止に及ぼす影響-質問紙調査による検討-2021

    • 著者名/発表者名
      森泉慎吾・臼井伸之介
    • 学会等名
      日本応用心理学会大会第87回大会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 簡易版認知再構成法はプレッシャー下のパフォーマンス低下を軽減する n-back課題を用いた実験的検討2021

    • 著者名/発表者名
      上田 真由子・中井 宏・臼井 伸之介
    • 学会等名
      日本心理学会第85回大会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 「他人のため」のリスク下の意思決定における人数の影響2020

    • 著者名/発表者名
      森泉慎吾・臼井伸之介
    • 学会等名
      日本心理学会第84回大会
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会発表] 作為と不作為のリスクに対する認知の違い2020

    • 著者名/発表者名
      橋本采栄・森泉慎吾・中井宏・臼井伸之介
    • 学会等名
      日本応用心理学会大会発表代替論文集
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [図書] 応用心理学ハンドブック 第14章 交通と応用心理学2022

    • 著者名/発表者名
      日本応用心理学会、応用心理学ハンドブック編集委員会、藤田 主一、古屋 健、角山 剛、谷口 泰富、深澤 伸幸
    • 総ページ数
      858
    • 出版者
      福村出版
    • ISBN
      4571200870
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2020-04-28   更新日: 2024-12-25  

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