研究課題/領域番号 |
20K05059
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26010:金属材料物性関連
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
小池 邦博 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (40241723)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
|
キーワード | SmFe12薄膜 / Sm(FeCo)12ナノ粒子 / ナノコンポジット磁石 / レーザーアニール / 保磁力 / マイクロマグネティックスシミュレーション / 局所磁気異方性 / 界面制御 / SmFe12 / Sm(FeCo)12 / Sm-Fe薄膜 / 薄膜磁石 / 結晶磁気異方性 / 薄膜プロセス / 希土類永久磁石 |
研究開始時の研究の概要 |
高出力モータや発電機応用に向けた従来のネオジム磁石を代替すると期待される次世代高性能永久磁石の研究開発において,高耐熱性付与のための高保磁力化が強く求められている.本申請課題では「UHV薄膜プロセス」を用い,ネオジム磁石を越えるポテンシャルを持つSm(FeCo)12と非磁性3d遷移金属基合金とのモデル界面を形成する事によって「Sm-Fe系化合物における局所磁気異方性の回復による高保磁力の発現」を目指す.
|
研究実績の概要 |
これまでの研究からSmの局所磁気異方性がSmFe12系合金の保磁力に与える影響を明らかにするための第一段階として実施されたUHV成膜実験において,ThMn12構造のc軸垂直配向したSmFe12合金薄膜の形成条件を確立した.この薄膜は、高分解能TEM観察によって、Mo下地上に山脈状組織を有するα-Feが形成し,さらにこの上に幅30 nm - 50 nmで100 nm程度の高さのSmFe12柱状組織の生成を確認した。さらにMgO(001)[100]//Mo(001)[110]//Fe(001)[110]//SmFe12(001)[100]エピタキシャル方位関係をもつことが明らかとなった。その磁気特性は,as-grown状態で垂直磁気異方性と保磁力を発現しており,この保磁力機構について薄膜の形状磁気異方性と結晶磁気異方性の競合状態を取り入れた拡張型Kondorskyモデルによって解析できることを確認した.これらの結果に基づいてR4年度は,柱状構造のSmFe12ナノ磁石粒子を物理的・磁気的に孤立化させると共に、SmFe12ナノ磁石粒子側面の表面修飾を目的としてArイオンエッチングと赤外レーザーを組み合わせた非熱平衡粒界拡散プロセス(NTE-GBDP)法を導入することでNd 非磁性元素を粒界拡散させたSm-Fe薄膜の結晶構造と磁気特性を評価した。この結果、NTE-GBDP法を適用した試料はc軸垂直配向状態を保ったまま、処理前の保磁力に比べて約1.5倍増大することが明らかとなった。さらに、ハード相としてSm(FeCo)12ナノ磁石粒子へソフト相としてα-Fe相を接合したナノコンポジット構造をもつナノ磁石粒子の磁化反転過程をマイクロマグネティックスシミュレーションによって考察し、単相よりも高い最大エネルギー積(BH)maxを持つナノコンポジット粒子のナノ構造を提案した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R4年度は、R3年度に引き続きコロナ感染症による多大な影響を受けたため、研究計画を遂行する上で要となっていた試料作製、微細組織の観察、磁気計測の進捗に遅れが出た。しかしながら、柱状構造のSmFe12ナノ磁石粒子側面修飾を念頭に置いたSmFe12ナノ磁石粒子の物理的・磁気的孤立化のための実験研究を進め,SmFe12ナノ磁石粒子側面の表面修飾を目的としてArイオンエッチングと赤外レーザーを組み合わせた非熱平衡粒界拡散プロセス(NTE-GBDP)法を導入することで非磁性Nd元素を粒界拡散させたSmFe12薄膜の形成に成功した。この結果、NTE-GBDP法を適用した試料はc軸垂直配向状態を保ったまま、処理前の保磁力に比べて約1.5倍増大することを明らかにした. さらに、ハード相としてSm(FeCo)12ナノ磁石粒子へソフト相としてα-Fe相を接合したナノコンポジット構造をもつナノ磁石粒子の磁化反転過程と反磁場分布について、マイクロマグネティックスシミュレーターのOOMMFを用いた理論的研究を行うことで、Sm(FeCo)12単相よりも高い最大エネルギー積(BH)maxを持つナノ構造を持つナノコンポジット磁石粒子を提案した。これらの研究成果は,R4年11月に開催されたアメリカ応用物理学会主催の磁性と磁性材料に関する国際会議(MMM2022)において発表され、アメリカ応用物理学会のオープンジャーナルAIP Advances誌で「Maximum energy product of exchange- coupled Sm(FeCo)12/α-Fe nanocomposite particle」のタイトルで公表された他、R4年12月に開催された応用物理学会東北支部学術講演会において「Sm(FeCo)12/α-Fe ナノ粒子の減磁過程におけるα-Feの被覆面方向の影響」として発表された.
|
今後の研究の推進方策 |
これまで,当該研究を実施した米沢地区の地震や全国的なコロナ感染症の多大な影響があった中でも,連携研究者との共同研究によって本研究課題で提案しているSmFe12系相とα-Fe相との理想界面形成のため、高品位な結晶性を有するSmFe12柱状晶の側面を非磁性Ndで修飾し、ナノ粒子同士を磁気的に孤立化させた試料を形成することで、その保磁力の増大を実証した.さらに、コロナ禍の影響を考慮してマイクロマグネティックスシミュレーターを用いた、マン・タイムパフォーマンスの向上を試み、一定の成果が得られた.そこでR5年度は、理論計算モデルを現実的な状態へ展開しながら、SmFe12系ナノ粒子の保磁力増大とハード単相よりも高い最大エネルギー積(BH)maxを持つSmFe12系/α-Feナノコンポジット粒子のナノ構造の最適化を試みる.
|