研究課題/領域番号 |
20K05070
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26010:金属材料物性関連
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
寺嶋 健成 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (20551518)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 磁気冷凍材料 / データ駆動型物質探索 / データ駆動物質探索 / 機械学習 |
研究開始時の研究の概要 |
遍歴電子メタ磁性は、バンド構造に由来する磁場下での強磁性発現現象であり、磁気冷凍材料の有力な探索指針の1つである。データベースの観点では、現在ゼロ磁場下でのバンド状態は網羅されつつある一方磁場下での電子・ スピン状態は未開拓領域である。 本課題では データベースの結晶構造を入力に磁場下の第一原理バンド構造・電子状態計算から、メタ磁性発現の可能性を有する候補物質をスクリーニングし、磁気冷凍材料の合成指針とする。候補物質の実際の合成、物性評価と電子状態の実験決定まで行うことで、データベース・第一原理計算・実験実証を組み合わせた新たな機能性材料開発手法の開拓を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究を遂行することで、磁場5Tでの磁気エントロピー変化量0.3 J/cm3 Kを超える磁気冷凍材料を見出すに至った。この磁気冷凍材料はまだ論文報告に至っておらず、自己相互作用補正を取り入れた第一原理計算による高い磁気熱量効果の起源の議論を加えて論文化する予定である。 また物質探索と並行して、以下の2つのデータ駆動アプローチを推進する研究成果を得た。 1つは、機械学習による予備データや過去文献値の探索への有効活用である。目的の物理量である磁気エントロピーは材料の温度と磁場に大きく依存し、その評価には一連の磁化測定とMaxwellの関係式に基づく算出がしばしば用いられる。特に試料の磁化が温度と磁場で急峻に変化する一次転移の磁性体では、時期エントロピー評価には適切な温度・磁場測定ステップの設定を要する。従来はそのステップは試行錯誤により見いだされていたが、粗い予備データまたは先行研究や文献などを機械学習することで、実空間での試行錯誤を仮想空間でのシミュレータで行える仕組みを構築し、githubで公開するとともにDigital Discovery誌で発表した。 2つめは、作成した機械学習モデルの解釈性である。SHAPと呼ばれる手法を用いることでモデルが理解した教師データの統計的傾向を人間が理解できる形で可視化することができ、これを組成記述子のライブラリともとの教師データ分布の3者を組み合わせて図示することで、物質設計の指針が得られることを見出し、現状の磁気冷凍材料に対する機械学習モデルで理解可能な事象について報告した。この論文は、STAM-Methods誌に受理された。(in press)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究遂行期間中に研究室が火事で被災し、本研究予算で購入したX線回折装置の部品を含む、原材料・プレス機・炉・石英管封入装置・XRD装置などが使用不能となった。 これらは同組織内の他の研究者の装置を使わせていただくなどの対応をとっている。
また研究により見出した高い磁気熱量効果を示す磁気冷凍材料候補は、当初構想にあった遷移金属だけではなく、希土類を含む試料であった。その予測は、希土類をf電子数が0のLa(ランタン)に置き換えた計算により粗い近似のもと計算が可能であったが、より精度を高めた第一原理計算を適用して見出した候補材料における高い磁気熱量効果の起源を議論するため、f電子が有限の系を取り扱い可能な自己相互作用補正を用いた第一原理計算を新たに適用し、追加の解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
火事で使用不能となった研究実験機器は、他研究室の装置を借りるなどして代替手段が整ってきた。 これらを用いて残りの試料評価を進め、本研究遂行中に見出した有望な候補物質とその部分置換試料についての高い磁気熱量効果を報告する論文化を行う。この候補物質の論文化においては、当初構想にあった遷移金属だけなく希土類も含むものであったため、高い磁気熱量効果の期限について論文中でより高精度に議論すべく、希土類まで第一原理計算に含めることのできる手法(具体的には自己相互作用補正)を用いた解析を行う。
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