研究課題/領域番号 |
20K05080
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
安仁屋 勝 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (30221724)
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研究分担者 |
臼杵 毅 山形大学, 理学部, 教授 (70250909)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 超イオン導電体 / イオン導電性ガラス / ガラス / イオン導電性ポリマー / 金属ガラス / イオン伝導 / 中距離構造 / 結合強度・配位数揺らぎモデル / イオン伝導体 / アレニウス・クロスオーバ / 結合揺らぎモデル / アレニウス・クロスオーバー / 超イオン導電ガラス / ガラスの物性 / イオン輸送現象 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、高いイオン伝導度を示す超イオン導電ガラスが数多く合成され、電池等への応用を目指した研究が活発に行われている。しかし、これらのガラスの基礎物性が十分に理解されているとは言い難い。本研究では、これまであまり注目されてこなかったガラスの中距離構造の観点から、超イオン導電ガラスが示すイオン伝導、エントロピーによるイオン伝導度のスケーリング、ガラス形成能、ボール・ミリング処理による物性変化、光誘起イオン伝導などの物性について、主として理論的手法を用いて調べる。また、これらの物性の背景にある共通のメカニズムを明らかにすることで、ガラス物質の学理を深めると共に、ガラスの新たな機能性を探る。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、ガラスの中距離構造の観点から超イオン導電ガラスの基礎物性を調べることでガラス物質の学理を深めるとともに、ガラスの新たな機能性を探ることにある。この目的に沿って、今年度は以下の成果を得た。 1)イオン結晶におけるイオン伝導度の温度依存性では、不純物濃度や熱履歴に依存する低温側での外因性伝導領域と不純物等には依存しない高温側での内因性伝導領域が観測される。また、それらの領域間で伝導度は連続的に移り変わるが、理論的取り扱いは不明であった。イオン結晶における欠陥濃度とイオンの移動度が非線形にカップルするという観点から、イオン伝導度が内因性・外因性領域間で連続的に変わることを説明する解析的な理論的モデルを構築した。 2)イオン導電性ガラス形成物質において、イオン伝導度の振る舞いはガラス転移温度を境に、低温側でのアレニウス型から高温側でのVFT型へと大きく変わる。1)と関連付けて、この現象を説明するモデルの大枠を構築した。詳細については引き続き検討中である。 3)以前の研究において、酸化物ガラスにおける中距離構造とイオン伝導度は密接に関係することを見出していた。同様の関係は金属ガラスにおける構造不均一性と拡散係数との間にもあることを見出した。 4)以前に提案した融体に対する結合力・配位数ゆらぎモデルを使って、Liイオン導電性ポリマーにおけるフラジリティの組成依存性のモデルを構築し、原因不明とされていた現象に対し説明を与えた。 5)その他として、イオン導電体における力学物性、イオン導電体における熱電現象、アモルファス物質における構造緩和、光学誘電率と電気陰性度の関係等の研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主な目的は次のとおりである。①ガラスの中距離構造がイオン輸送現象で果たしている役割の解明、②イオン輸送現象のエントロピー・スケーリング則と中距離構造の関係の解明、③ミリング処理した超イオン導電ガラスの異常なイオン伝導に対するモデルの構築、④ガラスの中距離構造の形成メカニズムとそれに基づいた新機能性の探査。 これらの目的のうち、①および④との関連で興味深い進展があった。具体的には、金属ガラスにおける構造不均一性と原子拡散の間には、イオン導電性ガラスで得られていた中距離構造とイオン伝導の関係と類似性があることを見出した。②に関しては、緩和現象の研究を通して間接的な結果を得つつある。昨年度から引き続き行っている力学物性の研究は③に繋がる。なお、緩和現象に関する結果は②のみでなく④とも関係するが、そこで得られた概念を用いて、イオン結晶における外因性および内因性伝導領域でのイオン伝導機構、ポリマー電解質におけるフラジリティの組成依存性など、研究の展開が行われた。以上のことより、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究期間は3年を予定していたが、期間を延長して研究を進める。今年度の主な目標は次のとおりである。 1)本研究課題との関連で、イオン液体も扱えそうだということが分かってきた。この点を明らかにする。また、イオン導電性ガラスの中距離構造とイオン伝導に関する研究の総括を行う。 2)前年度に引き続き、本研究で得られた知見を活かして研究の展開を行う。直近の課題としては、金属ガラスにおける原子拡散のテーマがある。 3)前年度に引き続き、また上の1)とも関係付けながら、イオン導電性高分子などにおける原子輸送と構造緩和の関係を明らかにする研究を行う。
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