研究課題/領域番号 |
20K05085
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
単 躍進 宇都宮大学, 工学部, 名誉教授 (20272221)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 酸化物イオン伝導 / 6価陽イオンによる5価ニオブの置換 / シーライト型構造 / 希土類ニオブ酸塩 / 構造相転移 / 酸化物イオン伝導体 / 格子間酸化物イオン / シーライト構造 / フェルグソナイト構造 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,希土類ニオブ酸塩LnNbO4 (Ln:希土類)中の5価Nbを6価のM (M= W, Mo, Te)イオンで置換し,高温シーライト相を低温(室温)に安定化させ,それと同時に格子間酸化物イオンを導入し,新規高酸化物イオン伝導体を開発することを目的である。異なる希土類試料(Ln(Nb, M)O4 (Ln:希土類))において,Mイオンの置換量と室温シーライト相の生成度合,余剰酸素量と酸化物イオン伝導性の相関,さらに,導入された格子間酸化物イオンの位置,移動経路などを明らかにし,新たな高酸化物イオン伝導体の発見に繋ぐ。
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研究実績の概要 |
2022年度の研究に続き,2023年度には当初の計画の高温酸素分圧制御可能な酸化物イオン伝導測定システムの代わりに,既存のインピーダンス測定装置の改良を進め,特に高温測定のための試料の固定・加熱,データ収集プログラムなどの修正を行なった。 6価の陽イオンW(VI)とMo(VI)による5価Nb(V)の置換の他に,Te(VI)による置換も試みた。テルル酸化物の融点が低い,一方希土類ニオブ酸塩の反応温度が高くて,溶融法や中間反応物質を介した反応をいろいろと試したが,溶融物または低温テルル系酸化物しか得られなかった。その他に,Spring8でNdNb1-xMoxO4+σ(0≦x≦1.0)試料のMo置換量と相転移温度の変化について調べた。単斜晶系フェルグソナイト相構造から正方晶系シーライト相構造への相転移温度(1100 K)がMo置換量の増加に伴い,250 K(x=0.1), 500 K(x=0.2), 800 K(x=0.3)に低下していることが明らかにした。さらに,NdNb0.8W0.2O4+δ試料の室温における中性子構造解析を行い,格子間酸素の座標は(0.30, 0.18, 0.26)付近に収束したが,温度因子(20)が大きかった。室温で格子間酸素を観測されなかったことが明確にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画している酸素分圧制御可能な酸化物イオン伝導測定システムの構築がコロナ禍の影響と物価の高騰によって不可能になったため,既存のインピーダンス測定装置の改良,ならびに他の置換系試料の探索と得られた酸化物イオン伝導体NdNb0.8W0.2O4+δの中性子構造解析による格子間酸素位置の特定を予定していた。測定装置の改良と置換系試料の探索は,概ね予定通りに進めていた。しかし,中性子構造解析は,ToyouraらのLaNbO4の格子間酸素座標を参照にして室温中性子回折データを解析したが,格子間酸素位置の決定に至らなかった。理由として,この置換系は単純のシーライト型酸化物と異なり,置換による混相の可能性など経験不足が主な原因である。この系の酸化物イオン伝導性の起因(メカニズムの解明)は本研究の最大な目的であるため,できる限り実現したいと考え,今後の研究の推進方策にも述べたように,未置換の物質も中性子測定を行い,更に温度変化しながら,両結晶構造の変化を追跡し,置換による伝導キャリアである格子間酸素位置を定める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目標である置換による室温シーライト相の生成過程の解明,また格子間酸素と酸化物イオン伝導性の相関,つまり酸化物イオン伝導のメカニズムを明らかにすることを目標している。そのために,最終のR5年度にNdNb1-xMxO4+δ(M=Mo, W)を中心に以下の研究を進める。 1)Spring8のビームライン(BL02B2)を使って,WやMoによるNb置換と未置換のネジウムニオブ酸塩の相変化を追跡し,転移温度の決定ならびに各相の結晶構造解析をしっかり行う。 2)令和4年度の中性子構造解析の経験を生かして,さらに未置換と置換の試料の室温から高温までの中性子回折実験を行い,温度変化による結晶構造の変化を追跡する。置換と未置換試料の構造を比較しながら,格子間酸素の位置,および位置の変化(伝導ルート)を観測し,結晶構造とイオン伝導性の関連を明らかにし,W(またはMo)の置換による相転移のメカニズムを究明する。 3)新たな研究成果をまとめて発信に努める。
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