研究課題/領域番号 |
20K05106
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26030:複合材料および界面関連
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
依田 英介 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 准教授 (70377589)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 有機カチオン交換 / 固体酸ナノシート / 固体塩基触媒 / 有機カチオン / ゼオライト / エステル交換反応 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでに申請者らが行ってきた研究から、固体酸のHを有機カチオンでイオン交換すると、塩基触媒として働くことが明らかになっている。様々な有機カチオンと固体酸の組み合わせで活性を評価する中で、固体酸と有機カチオンの距離が近すぎると固体酸触媒と有機カチオンの相互作用が強く、反応物が塩基点に接近できないのではないかという仮説が得られた。本研究では、固体酸と有機カチオンの距離が変わると考えられる組み合わせで触媒を調製し、その反応活性を調べる。それにより、固体酸と有機カチオンの距離が、反応活性に影響を与える可能性があるという仮説を検証することが本研究の目的である。
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研究実績の概要 |
本課題の研究代表者らは、ゼオライトなどの固体酸を有機カチオン交換でイオン交換した触媒が、塩基性を有することを見出してきた。その中で、固体触媒の塩基点と、対イオンとして存在する有機カチオンの距離が触媒活性に影響を与える可能性があることが示唆された。そこで本課題では、様々な固体酸と有機カチオンを組み合わせた触媒を調製し、その反応活性を調べる。それにより、固体酸と有機カチオンの距離が、反応活性に影響を与える可能性があるという仮説を検証することが目的である。 今年度は、Ti-Nb系の固体酸ナノシートのプロトンを有機カチオンとイオン交換することで、有機カチオン交換ナノシートの調製を行った。まず、Ti-Nb系の層状化合物の層間に、かさ高いテトラブチルアンモニウム(TBA)を挿入することで層が剥離し、ナノシートが得られる。この時、TBAがナノシート表面に残るので、TBA交換されたTi-Nb系ナノシート([TBA]Ti-Nb-nano-0)が得られる。次に、[TBA]Ti-Nb-nano-0のTBAをプロトンで交換することでプロトン体のナノシート(HTi-Nb-nano)が得られる。昨年度まで研究してきたTa-Mo系ナノシートやNb-Mo系のナノシートでは、プロトン体ナノシートをアルキル鎖長がC1~C4の各テトラアルキルアンモニウムを用いて有機カチオン交換することで、目的の有機カチオン交換ナノシートが調製できた。しかし、HTi-Nb-nanoからは、目的の有機カチオン交換ナノシートがほとんど生成しなかった。そこで、[TBA]Ti-Nb-nano-0を用いて、テストリアクションのエステル交換反応を行ったところ、[TBA]Ti-Nb-nano-0は非常に高活性であるという結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、Ta-Mo系ナノシートやNb-Mo系のナノシートでは、プロトン体ナノシートをアルキル鎖長がC1~C4の各テトラアルキルアンモニウムを用いて有機カチオン交換することで、目的の有機カチオン交換ナノシートが調製できた。調製した有機カチオン交換ナノシートをX線回折により分析したところ、テトラアルキルアンモニウムのアルキル鎖長とナノシートの層間距離は比例関係にはならなかった。このことから、ナノシート表面でアルキル鎖が折れ曲がっている可能性が示唆された。一方、各有機カチオン交換ナノシートを触媒としてエステル交換反応を行うと、ナノシートの層間距離と相関があるという結果が得られたので、有機カチオンとナノシートの距離が活性に影響を与える可能性が示唆された。 Ti-Nb系の有機カチオン交換ナノシートである[TBA]Ti-Nb-nano-0を用いたエステル交換反応では、[TBA]Ti-Nb-nano-0は非常に高活性であるという結果が得られた。HTi-Nb-nanoを、アルキル鎖長がC1~C4の各テトラアルキルアンモニウムを用いてイオン交換することには成功しておらず、有機カチオンの違いによる活性の変化は比較できていない。しかし、非常に高活性な触媒が探索できていることから、研究はおおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、TBA交換されたTi-Nb系ナノシート([TBA]Ti-Nb-nano-0)を得ることができた。また、[TBA]Ti-Nb-nano-0のTBAをプロトンで交換することでプロトン体のナノシート(HTi-Nb-nano)を得ることができた。しかし、プロトン体ナノシートのプロトンをアルキル鎖長がC1~C4の各テトラアルキルアンモニウムを用いて有機カチオン交換することができず、目的の有機カチオン交換ナノシートがほとんど生成しなかった。これは、HTi-Nb-nanoをいったん乾燥させてからテトラアルキルアンモニウムでイオン交換したことが原因である可能性が考えられる。Ti-Nb系ナノシートは疎水性で、乾燥することでナノシートが凝集してしまうと、その後溶液中でイオン交換を行おうとしても溶液が層間まで浸透しない可能性がある。そこで今後は、熱重量測定を行い、Ti-Nb系ナノシートが疎水性かどうか確認する。また、HTi-Nb-nanoを乾燥させずに次の有機カチオン交換の操作を行い、テトラアルキルアンモニウムでイオン交換されたTi-Nb系ナノシートの調製を行う。この方法で調製されたテトラアルキルアンモニウム交換Ti-Nb-nanoを用いて活性測定を行い、固体酸と有機カチオンの距離が、反応活性に与える影響を検証する。
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