研究課題/領域番号 |
20K05338
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
吉越 章隆 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (00283490)
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研究分担者 |
冨永 亜希 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 技術・技能職 (50590551)
津田 泰孝 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 博士研究員 (50869394)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | シリコン / 表面酸化 / 酸素 / 吸着反応 / その場観察 / 放射光 / 光電子分光 / 表面反応ダイナミクス / Si表面 / 酸化 / 酸素および酸化剤 / 放射光軟X線分光 / リアルタイム観察 / シリコン酸化 / 吸着状態 |
研究開始時の研究の概要 |
スマートフォンなどの情報通信機器に使われるようなトランジスター中のシリコン絶縁膜には、原子数層の高品質な酸化膜が必要であり、酸化反応の原子レベルの理解と制御(ナノテク)が必要である。本研究では、超音速酸素分子線と放射光表面分析によって、気体酸素分子によるシリコン表面酸化の理解と制御を実現する。具体的には、表面に衝突する酸素分子の並進エネルギーによる酸化物の違いをSPring-8の軟X線光電子分光および吸収分光によって詳細に捉える。酸素分子の並進エネルギーによって吸着反応パスを変えることで効率的に酸化膜を形成あるいは熱反応では不可能な新規酸化膜を活性化障壁を乗り越えることで実現することを目指す。
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研究実績の概要 |
IoTやAIデバイスを活用したSociety5.0社会の実現のために情報通信機器の小型、高性能、省電力化は必須である。高機能電子デバイス機器を支える基本素子である電界効果型トランジスター(MOS-FET)には、シリコンの酸化絶縁膜が利用されており、その膜厚は原子数層となっている。その実現には、原子レベルで酸化反応を理解および制御することが不可欠である。本研究では、放射光表面分析と超音速酸素分子線を組み合わせてシリコン表面酸化の理解と制御を目指す。具体的には、酸素分子の並進エネルギーや酸素ガスによる酸化条件毎の生成酸化物をSPring-8の軟X線放射光光電子分光によって捉える。並進エネルギーによって酸素分子の解離吸着反応経路を変え、吸着状態や酸化物の違いから効率的な酸化膜形成や高品質酸化膜作成に必要なプロセス条件を探索する。 令和4年度では、放射光軟X線リアルタイム光電子分光を使って、酸素ガスによるシリコン表面酸化(ドライ酸化)の酸化速度、酸化価数の温度、圧力、不純物(n型,p型)依存性を中心に測定し、表面吸着状態や界面歪と電子状態の関係を詳細に調べた。酸化に伴い酸化膜とシリコン基板界面で生じる放出シリコン原子と生成する欠陥が、酸化反応サイトとしてどのように機能するのかに注目して詳細に調べた。また、入射酸素分子の並進エネルギーによって分子状吸着酸素の生成を制御して、欠陥サイトとの反応を調べた。数百本におよぶ光電子スペクトルの精密高速解析に必要なプログラム開発を進めるとともに、金属材料などの酸化反応実験を並行して進めシリコン酸化反応との差異を通じて表面酸化反応の統一的理解に取り組み、論文等の成果の発表を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
シリコン表面酸化における電子状態変化を放射光リアルタイム光電子分光によって捉え、光電子スペクトルの高精度解析をすることで、酸化反応における欠陥サイトや放出シリコン原子の役割を詳細に明らかにした。また、シリコン酸化における初期吸着生成物と考えられていた分子状吸着酸素が、酸化膜とシリコン基板界面における欠陥サイトでの反応にも寄与するという、これまでにない新しい知見を与えることにも成功した。これらの一連の成果の一部はプレスリリースとして発表され、アフターコロナ後の半導体国内回帰の状況などから内外から大きな注目をされている。このように、表面酸化に関与する分子状吸着状態の観察という基礎的情報にとどまらず、電界効果型トランジスターの高機能化に不可欠な欠陥の少ない高品質酸化膜界面の形成というイノベーションの要求に直結する重要な知見が得られ、当該年度の研究課題は計画以上に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
酸素ガスによるシリコン単結晶表面の酸化に観られる分子状吸着酸素は、酸化開始直後の極初期に生成する吸着状態の一つと考えられてきたが、我々の実験および精密解析から酸化膜が成長し界面酸化が進行する段階でも観察されることが分かってきた。この分子状吸着状態に関する予想外の結果は、酸化膜成長における分子状吸着酸素の新たな役割を物語っている。この分子状吸着状態と酸化膜とシリコン基板界面における欠陥や放出シリコン原子との関連性を酸化速度、酸化価数、歪などの温度、圧力、不純物(n型,p型)との相関から明らかにする。そのために軟X線放射光リアルタイム光電子分光観察から生まれる膨大なデータセット解析のプログラム開発を続ける。また、初期酸化物構造を決定するために、光電子ホログラフィ―データのモデル解析を進める。さらに、他の材料の酸化実験データの研究を進め、シリコン酸化反応との差異に着目することで酸化反応の理解を深め、研究成果の発表をさらに進める。
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