研究課題/領域番号 |
20K05347
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30010:結晶工学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
三浦 均 名古屋市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (50507910)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 宇宙実験 / 結晶成長 / 氷結晶 / 不凍糖タンパク質 / ヒステリシス / 自発的振動成長 / 鉱物 / 波動累帯構造 / 不純物効果 / 成長ヒステリシス / 平均場理論 / 微小重力環境 / 数値計算 / 理論 / 微小重力 |
研究開始時の研究の概要 |
微小重力環境下では,結晶成長に対する不純物の影響が地上とは異なることが知られている。一方,そのような違いが生じる原因は解明されていない。申請者はこれまで,結晶表面のダイナミクス(ステップ・ダイナミクス)の数値計算法を開発し,結晶成長における不純物効果に関する理論的研究成果を挙げてきた。本研究では,結晶成長過程を数値計算によって再現することで,結晶成長における不純物効果の理解を深める。これにより得られた知見を結晶成長学に還元し,半導体結晶の高品質化,ゲノム創薬に向けた生体高分子の結晶化,不凍糖タンパク質による氷結晶成長制御機構の解明,宇宙空間における物質進化の解明等に貢献する。
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研究実績の概要 |
不純物の存在によって結晶の成長が大きく影響を受けることは古くから知られていた。不純物の含有量がわずかであっても結晶成長に大きく影響することがあるため,結晶成長を考える際には不純物の影響を無視することはできない。近年,結晶成長における不純物効果の解明を目指し,国際宇宙ステーション(ISS)に搭載された日本実験棟「きぼう」においていくつかの結晶成長その場観察実験が実施された。微小重力環境にて実施されたこれらの実験は,結晶成長における未知の現象の存在を示唆した。しかし,ISSで得られた実験結果は,理論的に十分説明されているとは言えない。本研究では,ISSで得られた実験結果を数値計算によって再現することを通して,結晶成長における不純物効果の理解を深め,その成果を結晶成長学に還元し,結晶成長が関与する諸分野の発展に貢献することを目的とした。 過冷却水からの氷結晶成長その場観察実験Ice Crystal 2プロジェクト(IC2)では,氷結晶の成長に対する不凍糖タンパク質(AFGP)の影響を調べるため,AFGPを含む過冷却水中での氷結晶成長実験を実施した。氷結晶ベーサル面の成長速度をその場測定した結果,結晶成長セルの温度を一定に制御していたにも関わらず,成長速度が自発的に振動するという未知の現象(自発的振動成長)が発見された。AFGPが氷結晶の成長に及ぼす作用を理論的に解明することは、水が凍る現象に関連するさまざまな分野への応用を検討する上で重要である。 本研究では,AFGPが氷結晶ベーサル面のステップ・ダイナミクスに及ぼす作用をモデル化し,自発的振動成長が発生するメカニズムを初めて理論的に説明した。また,不純物による結晶成長阻害作用に基づいた新しい鉱物結晶成長メカニズムを検討し,斜長石などの鉱物に観察される周期的な組成変化構造(波動累帯構造)の新しい形成過程を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
四年目が終了した時点の主な成果は以下の3点である。(1) AFGPによる氷結晶の成長抑制・促進効果をモデル化し,平均場近似に基づいて定式化することで,IC2で確認された結晶成長の促進を伴う自発的振動成長メカニズムを理論的に説明することに世界で初めて成功した点,(2)フェーズフィールド法とモンテカルロ法という異なる2つの数値計算手法を組み合わせることで,平均場理論が予想する自発的振動成長をコンピュータ上で再現することに世界で初めて成功した点,および,(3)鉱物結晶に観察される波動累帯構造の新しい理論モデルの提案,である。成果(1)については,結晶成長学分野の国際学術誌Journal of Crystal Growthに掲載された(雑誌論文リストを参照)。一方,成果(2)については,AFGPの作用モデルに重大な問題点があることが指摘されていたが,その解決方法に関する新しい研究を進行中である。成果(3)については,鉱物学という他分野における研究テーマに本研究課題の成果を応用し,不純物による結晶成長阻害作用に基づいた新しい鉱物形成の理論モデルを提案した(Scientific Reportsにて査読中)。まとめると,二年目に完了する予定であったモデル化はすでに成果がほぼまとまっており,国際学術誌にて発表済みである。一方で,数値計算・実験結果との比較については,新しい研究課題が明確になり,現在進行中である。加えて,他分野への応用に関する成果も出つつあることから,当初の計画どおりに進展したと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
数値計算・実験結果との比較,理論の一般化,および,他分野への応用に取り組む。数値計算については,「現在までの進捗状況」でも述べたとおり,AFGPの作用モデルを修正して成果を出し,国際学術誌に投稿する。また,「現在までの進捗状況」でも述べた他分野への応用成果のひとつである波動累帯構造の新しい形成メカニズムについて,国際学術誌への掲載を目指す。
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