研究課題/領域番号 |
20K05351
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分30010:結晶工学関連
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
柳瀬 明久 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50231650)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 薄膜 / 微粒子 / 微小球 / パルスレーザー加熱 / 脱ぬれ / 半導体 / ゲルマニウム / シリコン |
研究開始時の研究の概要 |
光学デバイスへ応用可能な高い真球性、精密なサイズ制御、高いサイズ均一性の3条件を満たすGeとSiの微小球(直径3~7μm)の作製方法を検討する。一定体積のパッチ状Ge、Si薄膜をナノ秒レーザー(波長355 nm)照射によって加熱・溶融し、粒子化する。1個の薄膜を1個の球状粒子のみに変形する過程、球状粒子から真球性の高い微小球を得る過程からなる2段階プロセスが必要である。各過程を高精度に実現するために必須な条件を明らかにする。
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研究実績の概要 |
研究目的は、光学デバイスへ応用可能な真球性の高いGe、Si微小球(直径3~7μm)の作製について、ナノ秒レーザー照射によってGe、Si薄膜を加熱・溶融・変形する方法の特質を明らかにすることである。本方法では、1個のパッチ状薄膜を1個の球状粒子に変形させる過程と球状粒子の真球性を高める過程の2段階プロセスが必要である。第1の過程では、液体薄膜の構造が本来的に不安定なため、薄膜が微細な粒子に分割する傾向が強い。大きな粒子に変形させるために重要なことは、レーザー照射直後の溶融Ge薄膜の過渡的な安定性を高めること、ならびに変形の駆動力を増大し変形速度を大きくすることである。令和3年度、薄膜の中心部のみが基板と接触するパッチ状Ge薄膜の作製とその構造が粒子化に与える効果、ならびに表面ナノ構造を有する基板の作製とそのGe薄膜の粒子化に与える効果を検討した。 第1に、薄膜の中心部のみが基板と接触するパッチ状Ge薄膜の作製に関して、高分子薄膜犠牲層を利用する方法を検討した。そして、Ge薄膜の周辺部が中空に浮いた構造を作製することが可能となった。しかし、犠牲層表面の平坦性が不十分であったため、Ge薄膜の平坦性が低く、パルスレーザー加熱による粒子化に関しては予備的な結果を得るに留まった。第2に、銀ナノ粒子を用いた金属アシストエッチングによるSi(100)基板表面ナノ構造の作製を試み、ナノサイズの凹凸構造と表面に垂直なナノ細孔を合わせもつ表面を得た。このSi表面を熱酸化した基板を用いてパルスレーザー加熱によるGe薄膜の粒子化実験を行った。ナノサイズの凹凸と細孔をもつSiO2/Si基板上のGe薄膜は平坦な基板上のGe薄膜に比べてレーザー加熱によって溶融しやすいこと、凹凸構造の高さが50 nm以上になるとサイズの小さなGe微粒子が多く生成し、大きなGe球状粒子を得る上で不適当であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2~3年度、中心部のみが基板と接触するパッチ状Ge薄膜ならびに表面ナノ構造を有する基板の作製を中心に研究を進めたが、現時点では十分な成果が得られていない。 中心部のみが基板と接触するパッチ状Ge薄膜の作製に関して、簡便な界面科学的方法を模索している。この研究の技術的な意義は大きいと考えており、継続して研究を進めている。 基板に表面ナノ構造を形成する実験について、Si(100)基板に銀ナノ粒子を用いた金属アシストエッチングを実施し、ナノサイズの凹凸構造と表面に垂直なナノ細孔を合わせもつ表面を得た。問題点として、Siエッチング後の熱酸化過程で凹凸や細孔のサイズが変化してしまい、それらのサイズ制御が困難であったこと、パッチ状Ge薄膜のパルスレーザー加熱実験において、ナノ凹凸構造とナノ細孔の双方の効果が混在してしまうことが挙げられる。そこで、ナノ凹凸構造の作製方法として、ポリスチレンとポリメタクリル酸メチルのジブロック共重合体薄膜のナノ相分離構造を利用する方法を新たに試みているが、まだ十分な結果が得られていないのが現状である。 新規パルスレーザー照射光学系は、レーザーダイオード励起のナノ秒固体レーザー(波長532 nm)と非球面ビームシェイパを用いたものであり、ガウス型の強度分布をもつレーザービームを均一な照射エネルギー密度をもつビームや照射領域の外側の強度が中心部より大きいビームに変換する機能をもつものである。これに関して、現在までにレーザー装置と光学素子などの整備を進めている。しかし、光学素子の位置合わせや微小な照射領域内の照射エネルギー密度の面内分布の測定など技術的に難しい内容を含んでおり、調整が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度、1個のパッチ状薄膜を連続的に変形して直径5~7μmのなるべく大きな1個の球状粒子を得る方法の解明を中心に、以下に示す研究を進める。 第1に、薄膜の中心部のみが基板と接触するパッチ状Ge薄膜を作製し、その構造が粒子化に与える効果を明らかにする。犠牲層パターンの作製方法の改良によって、適切な構造を作製する。そして、この構造がパルスレーザー加熱時の溶融Ge薄膜の変形の駆動力を大きくし、変形速度を増大させることに寄与するかどうかを明らかにする。 第2に、基板の表面ナノ凹凸構造がGe薄膜の粒子化に与える効果を明らかにする。これまではSi表面上に湿式エッチングで表面ナノ構造を作製したが、今後、シリカガラス表面にドライエッチングによってナノサイズの凹凸構造を作製する方法を検討する。実際には、ポリスチレン(PS)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)のジブロック共重合体薄膜の相分離したナノ構造を用い、PMMAドメインを除去した後のPSドメインをマスクとして反応性イオンエッチングを用いてシリカガラス表面をエッチングする。本方法によって、面内方向のサイズと高さ方向のサイズが独立に制御されたナノ凹凸構造を得る。基板のナノ凹凸構造が、溶融Ge薄膜の過渡的な安定性を高めることに寄与するかどうかを明らかにする。 第3に、直径30μmの照射領域を与える新規光学系を用い、照射領域の最も外側の照射エネルギー密度が中心部より大きいビームを用いた場合の効果を解明する。照射領域のGe薄膜について、周辺部の温度が中心部よりも高くなり、周辺部の表面張力が中心部よりも小さくなる。これによって照射領域の外側の溶融薄膜が中心部に引き寄せられ、照射領域全体にわたる一体的な粒子化が期待される。照射領域での照射エネルギー密度の面内分布を、別に用意した色素を含む薄膜材料からの蛍光強度を用いて評価する方法を確立する。
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