研究課題/領域番号 |
20K05408
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分31020:地球資源工学およびエネルギー学関連
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研究機関 | 石川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
瀬戸 悟 石川工業高等専門学校, 電気工学科, 嘱託教授 (50216545)
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研究分担者 |
山田 悟 石川工業高等専門学校, 電気工学科, 教授 (40249777)
鈴木 和彦 北海道科学大学, 工学部, 教授 (30226500)
荒木 秀明 長岡工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (40342480)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ペロブスカイト太陽電池 / 気相法 / パッシベーション / 太陽電池 / ペロブスカイト / プレーナー型 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では次世代太陽電池として注目されている有機・無機ペロブスカイト太陽電池を再現性に優れた気相一貫プロセスを作製し、高効率化を実現することにある。 具体的には、①高周波を印加できる新規ホットウォール装置で高品質ペロブスカイト層の実現、②TOF(time-of-flight)法によるキャリアの輸送機構の解明、③大気に暴露せずに気相一貫プロセスによるペロブスカイト太陽電池の作製、の3つの研究課題に取組む。最終的、気相一貫プロセスで変換効率20%のプレーナー型ペロブスカイト太陽電池を実現する。
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研究実績の概要 |
今年度は前年度に引き続き、気相法で作製したペロブスカイト太陽電池に対するパッシベーション効果を検証する実験を実施した。その結果、PCBM膜のパッシベーション効果で開放電圧の上昇と太陽電池の耐久性の向上を確認できた。 具体的には、p-i-n構造のペロブスカイト太陽電池を気相法で作製する際に光吸収層となるMAPbI3と電子輸送層となるC60の間にPCBM膜をスピンコート法で挿入してパッシベーション効果の有無を検証した。実験ではPCBM濃度を10~20mg/mLと変化させて実験し、太陽電池の特性を評価した。 その結果、PCBM濃度が10mg/mLと15mg/mLでPCBMをスピンコートすると開放電圧が約0.08V上昇することが確認できた。この結果がパッシベーション効果によるものかを確認するためにフォトルミネッセンス(PL)測定を行った。その結果、PCBMのスピンコートによってPL発光強度の上昇およびPL発光ピークの高エネルギー側へのシフトを観測した。これは結晶欠陥による非輻射再結合欠陥の減少によるものである。一方、PCBM濃度が20mg/mLでは開放電圧の上昇は見られず、さらに短絡電流も減少した。これはPCBM膜が厚いために直列抵抗が高くなったために短絡電流が減少したものと考察した。その他にPCBMのパッシベーション効果として耐久性の向上も確認できた。これは結晶粒界に存在する結晶欠陥を介したMAPBI3の分解がパッソベーションによって減少したことによるものと考察した。さらにTOF法(Time-Off-Flight)がペロブスカイト太陽電池の評価に応用できることを確認した。 尚、今年度のこれらの成果は応用物理学会、第2回太陽光発電学会、さらに11月13日~17日の日程で名古屋で開催された太陽光発電の国際会議(PBSEC-33)において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究は順調に進めてきてきたが、一部に当初の目標を達成できていない。当初計画のうち、達成できた項目と達成できなかった項目について以下報告する。 まず当初の目標を達成できた実験項目は、①PCBMを光吸収層であるペロブスカイト膜(MAPbI3膜)と電子輸送層(C60)の間に挿入したPCBM膜のパッシベーション効果,具体的には開放電圧が約0.08V上昇すること、②パッシベーション効果を発揮するPCBM膜をスインコートする際の溶液の最適濃度が10~15mg/mLであること、③PCBM膜のパッシベーションが耐久性の向上に寄与すること、またこの結果をフォトルミネッセンス測定から検証したこと、④TOF法(Time-Off-Flight)がペロブスカイト太陽電池の評価に有効であること、以上4項目である。 次に当初目標を達成できなかった項目として、①開放電圧の向上が0.08Vと目標の0.1Vに届かなかったこと、②PCBMのパッシベーションによって短絡電流の上昇が観測できなかったこと、③成膜中に高周波を印加することによるペロブスカイト膜の膜質を向上させる実験が高周波発振器の故障で実施できなかったこと、④正孔輸送層とペロブスカイト層との界面のパッシベーション効果を確認する実験ができなかったことで目標とする開放電圧および短絡電流の向上を達成できなかったこと、以上4項目である。 以上、ペロブスカイト層と電子輸送層の界面にPCBM膜を挿入することによってパッシベーション効果を確認し、蒸着法を基本とした気相法で変換効率が17%まで上昇することを実証できた。一方、高周波発振器の故障などの理由で目標とする変換効率20%を気相法で達成することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方針と本研究で見つかった研究課題は、まずパッソベーション方法として本研究ではPCBM膜をスピンコート法で行ったが、PCNMをクロロベンゼン溶媒に溶かして成膜するスピンコート法は液相法である。これに代わるパッシベーション効果を発揮し、かつ気相法で成膜できる材料を探索する必要がある。次に正孔郵送層とペロブスカイト層との層間にPCBMを挿入するパッシベーション技術は開放電圧の向上に有効であることが本研究で確認できたが、さらに電子輸送層とペロブスカイト層との界面欠陥をパッシベーションする技術を開発することも重要な課題である。これによってで1.0Vを超える開放電圧の向上が期待できる。今回、高周波発振器の故障で成膜中の高周波印加によるペロブスカイト膜の膜質の向上および膜の平坦性の向上させる実験は実施できなかったが、このペロブスカイト膜の成膜中の高周波印加の効果を検証する実験も今後の課題である。 近年、金属酸化膜ITO表面を自己組織化単分子膜である2PACzやMeO-2PACzで表面改質する方法で開放電圧が著しく向上する研究成果が報告されている。この技術を我々の気相法に応用して変換効率の向上を目指す実験は非常に有望と考えている。今後はこの正孔輸送層を用いない金属酸化膜を表面改質する方法を我々の成膜法に応用する実験を進めていきたいと考えている。 尚、今回スピンコートはよるPCBMの成膜は湿度40~60%の実験室でグローブボックスを用いないオープン環境で実施した。これを酸素や水分のないグローブボックス環境に近い環境ですべての膜を気相法で成膜して、20%を超える変換効率を有するペロブスカイト太陽電池を作製する技術を確立すること、これが今後の大きな研究課題である。
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