研究課題/領域番号 |
20K05430
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤本 和宏 名古屋大学, 理学研究科(WPI), 特任准教授 (00511255)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 量子化学 / 理論化学 / エキシトン / 励起状態 / 電子状態 / 励起エネルギー移動 / 光合成 / 電子カップリング / エキシトンモデル / 電荷移動 / 光合成アンテナ / 励起子 |
研究開始時の研究の概要 |
光合成系の集光性アンテナは励起エネルギー移動(EET)を起こすことで効率良く太陽光エネルギーを獲得している。これまでに多くの研究が行われてきたが、その分子機構の本質は謎に包まれたままである。この理由の一つとして、電子カップリング(光励起・脱励起に関わる電子の相互作用)を精度良く計算できなかったことが挙げられる。私はこれまでに遷移密度を用いたTDFI法や遷移多極子を用いたTrESP-CDQ法を考案し、高精度電子カップリング計算を実現してきた。本研究では、これらの計算手法を集光性アンテナへ適用することで、光合成のEETに潜む分子機構を明らかにしたいと考えている。
|
研究成果の概要 |
光合成アンテナ系(LH2)に存在するバクテリオクロロフィル色素の会合体(B850とB800)の励起状態を研究した。電子カップリング計算に基づくダイマーエキシトンモデルを開発し、これを用いることで、実験で観測される吸収スペクトルの赤方シフトを正確に再現することに成功した。さらに、色素構造の歪み、タンパク質の静電効果、電子カップリング、電荷移動(CT)の4つの観点からスペクトルシフトに対する寄与を系統的に解析した。その結果、B800のスペクトルシフトは主にタンパク質の静電効果によるものである一方、B850では色素間の電子カップリングとCT効果によるものであることが明らかとなった。
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
電子カップリング計算に基づく吸収スペクトル計算法を開発し、この手法を用いてLH2の励起状態の解析を行った。本解析により、LH2の吸収スペクトルが電子カップリングやCTの効果によって大きく赤方シフトすることが定量的に明らかになった。先行研究でもこれらの効果の重要性が示唆されていたが、スペクトルシフト全体に対する各効果の寄与を定量的に議論したものは本研究が初めてである。同様の解析は他の系にも適用可能であり、今後さらなる発展が期待される。また、本研究ではタンパク質中の色素によるスペクトルチューニングの多様性を示すことにも成功した。ここで得られた知見は様々な分子系の光物性解析に活用される可能性がある。
|