研究課題/領域番号 |
20K05431
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
墨 智成 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (40345955)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | タンパク質 / 疎水性相互作用 / 水和効果 / 分子内直接相互作用 / 共溶媒効果 / アルコール / 尿素 / 選択的溶媒和 / 変性剤 / コイルドコイルヘリックスGCN4-p1 / 分子動力学シミュレーション / Kauzmann疎水性相互作用仮説 / 熱力学的安定性 / GCN4-p1 / 液体の密度汎関数理論 / アルコール水溶液 / 2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE) / ヘリックス誘導 / ドラッグナノキャリア / 高分子ミセル / 小角X線散乱 / TFE / 濃度揺らぎ / Kirkwood-Buff 積分 / タンパク質構造安定性 / 疎水性相互作用仮説 / 密度汎関数理論 / 分子シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
タンパク質が示す多様な物性は,バイオ医薬品の設計や品質管理等の応用にも関係する,社会的に重要な研究課題である.これらの現象論的説明では,約60年もの間,Kauzmannによる「疎水性相互作用仮説」が,中心的役割を果たしてきた.実際,生化学や分子生物学の教科書には必ず,タンパク質の構造安定性における疎水性相互作用の重要性が説かれている.しかしその一方で,観測事実との矛盾が数多く囁かれてきた.本研究では,本仮説の直接的な理論的検証を行うと共に,タンパク質構造安定性のエネルギー論を明らかにする.その上で,タンパク質構造安定性を変調する共溶媒効果の熱力学的および分子論的メカニズムを解明する.
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研究成果の概要 |
本研究では,次の二つの問題に取り組んだ。一つは水中でのタンパク質構造安定性における水和効果の解明,もう一つはトリフルオロエタノール(TFE)および尿素によるタンパク質構造安定性に対する相反する共溶媒効果の分子機序の解明である。前者では,水は疎水基を嫌っておらずむしろ疎水基を好むため,天然構造の安定性は基本的にタンパク質の分子内相互作用に起因することを明らかにした。後者では,TFEは水酸基を介して側鎖と強く静電相互作用することにより,ヘリックスへの選択的溶媒和を強めてその安定化を導き,尿素は主鎖との相互作用を介してコイルへの選択的溶媒和を強めて,その結果,コイルの安定化を誘導することを示した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
タンパク質の水中での構造安定性機構では,約60年もの間,Kauzmannによる「疎水性相互作用仮説」が,中心的役割を果たしてきた。実際,生化学や分子生物学の教科書には必ず,タンパク質の構造安定性における疎水性相互作用の重要性が説かれており「疎水基に対する水からの反発力により,疎水基間に水を介した実効的引力が働く」と説明されている。本研究による結論は,長年信じられてきた疎水性相互作用仮説に対する再検討の必要性を指摘しており,新たな水和の役割,すなわち分子内相互作用により構造化されたタンパク質をむしろ不安定することにより構造の柔軟性をもたらし,機能発現に必要なゆらぎを導いていることが示唆される。
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