研究課題/領域番号 |
20K05470
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
大原 高志 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究主幹 (60391249)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 単結晶中性子回折 / 有機結晶 / J-PARC / 単結晶X線回折 / 固体NMR / 量子化学計算 |
研究開始時の研究の概要 |
単結晶中性子構造解析は分子性結晶中における位置の予測が困難な水素原子を確実に観察するうえで代替不可能な分析法であるが、巨大な単結晶試料を必要とするため測定のハードルは極めて高い。本申請課題ではX線回折および固体NMRで得られた誤差を含む構造情報を最大限活用することで中性子回折データから決定する必要がある構造情報を極力減らし、解析に必要な中性子回折データのS/N比を下げる。これにより、従来の1/10程度の体積である0.2から0.3ミリ角の単結晶試料を用いた単結晶中性子回折からの、分子性結晶において化学種同定や機能解明の鍵となる水素原子の可視化を実現する。
|
研究実績の概要 |
単結晶中性子構造解析法は結晶中の水素原子を観察する極めて強力な手法であるが、巨大単結晶を必要とすることから測定のハードルは非常に高い。本申請課題では、X線回折及び固体NMRで得られた構造情報を最大限活用することで、中性子回折データから決定する必要がある構造情報を極力減らし、これによって従来の1/10程度の体積である0.2~0.3ミリ角の単結晶試料を用いた単結晶中性子構造解析を実現することを目的としている。 令和5年度は昨年度に引き続き、構造既知である2-(2'-hydroxyphenyl)benzimidazole (HPBI)に加え、各種金属錯体結晶ついて、模擬的に作成した短時間測定データを用いて非水素原子の束縛に用いるX線構造モデルの最適化を試みた。特に中性子構造解析で本来得られる水素原子位置及び温度因子をX線構造解析結果から再現する方法については、昨年度までのHirshfeld Atom Refinementや高角回折データの利用に加え、分子の剛体モデル近似を用いた温度因子の予測を加えることで、より高い確度で中性子構造解析の結果を再現する試みを進めている。また、HPBIの結晶試料の固体NMR測定について、分子構造からNMRスペクトルを予想するGIPAW法で得られる1Hの化学シフト値と比較可能なスペクトルを実測値として得るためのCRAMPS測定及び他の測定法の試みを継続している。得られたデータについては、X線及び中性子回折で決定した分子構造からDFT計算の一種であるGIPAW法によって計算した水素原子の化学シフトと比較した上で、構造情報を得るための検討を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、中性子、X線、NMRを相補的に利用して進めるものであるが、新型コロナウイルス感染症の影響による他機関の施設を利用した実験の制限や、世界的なヘリウム供給不足による利用予定のNMR機器のシャットダウンにより、固体NMR測定の開始が遅くなってしまった。中性子構造解析結果と相補的に用いるための固体NMR測定はCRAMPS等の実験手法やパルス照射の条件について様々なパラメータを変えながら検討する必要があり、これに当初の予定以上に時間を必要とするため、現在までのスタート時の遅れを挽回できていない。以上のことから、本研究の進捗はやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、GIPAW法によって得られた結晶構造と化学シフトの相関を基に、水素原子の構造パラメータの影響が大きい核種の高分解能固体NMRスペクトルの測定を行う。これにより、分子中の水素原子-非水素原子間の結合距離について、NMRから実験的に求める。ここで得られた結合距離に加え、HAR法もしくは高角回折データを用いた精密化法によるX線構造解析によって得られた非水素原子の位置と分子の剛体近似から予測した温度因子を基にした束縛条件を、中性子による構造精密化に反映させる。これにより、短時間測定を想定した疑似中性子回折データから得られる構造情報の標準偏差を、束縛無しの精密化に対して可能な限り小さくすることを目指す。また、現在用いている回折データは、短時間測定を模したものであって微小結晶を模したものではない。そこで、実際に0.2~0.3mm角程度のHPBI単結晶を用いて単結晶中性子回折データを測定し、単結晶試料の微小化が解析精度にどのように影響するかを系統的に明らかにすることを目指す。
|