研究課題/領域番号 |
20K05540
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
|
研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
梶原 孝志 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (80272003)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 遅い磁化緩和 / 希土類金属錯体 / 磁気異方性 / 希土類錯体 / 磁気特性 / 分子構造 / 単分子磁石 / 配位子合成 |
研究開始時の研究の概要 |
希土類化合物を対象に、分子構造の制御に基づいて特性の優れた単分子磁石の創生を目的とする。配位原子のルイス塩基性、酸性を適切に制御することによって結晶場の異方性の強化ができれば、従来よりも特性の優れた単分子磁石の構築が可能となる。ルイス酸性度の比較的高いピラジン環を基本骨格に持つ配位子系を対象に様々な希土類錯体を合成し、磁気特性の良否を分子構造との相関により解明する。
|
研究実績の概要 |
分子レベルで遅い磁化緩和を示す単分子磁石を対象に、配位子の電荷分布の制御に基づいて中心金属イオンの磁気異方性の設計・制御を行うことを目的とする研究である。中心金属イオンとして希土類イオンを用い、周囲を取り囲む配位子の負電荷の異方的な分布に基づいて磁気異方性の発現を目指すものであるが、部分的に正電荷を配位子の導入によって配位子場電場の強弱の幅を広げ、磁気異方性の増強を試みている。配位子として2つの窒素原子を含むピラジンを骨格に持つピラジンジカルボン酸を用い、一方の窒素をアルキル化することによる正電荷の導入を試みたが、目的とする配位子の合成には成功しなかった。そこで有機合成による配位子のアルキル化ではなく、その窒素上に他の金属イオンを配位結合で導入することにより、正電荷を導入することを目指して研究を進めている。 サブテーマとして中心金属に磁気異方性を持たないGd(III)を用いた錯体における遅い磁化緩和現象の詳細な機構解明を行っている。近年の研究により、遅い磁化緩和現象には磁気異方性だけではなく、結晶中における熱の伝播、つまりフォノンの寄与の重要性が指摘されてきている。筆者もピリジンジカルボン酸やピラジンジカルボン酸を配位子とするGd(III)錯体において遅い磁化緩和現象を見出しており、その磁化反転の機構においてフォノンが果たす役割を検討しているところである。類似の挙動を示す別の錯体においてフォノンの果たす役割をまとめた論文を著しており、ピリジンジカルボン酸を配位子とする一連の錯体についても、論文をまとめているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
筆者は2021年度より奈良女子大学附属幼稚園の園長を兼任しており、研究に割ける時間が大幅に減ったのが主な原因である。奈良女子大学は2022年度に奈良教育大と法人統合を行い、奈良国立大学機構を立ち上げたが、その統合に伴って附属幼稚園の業務も一時的に増加した。また、全国的なコロナ禍ということもあり、園長としてトラブルに対応しなければならないことも多く、こういったことが研究の遂行に大きな支障となった。 2023年度からも園長を継続しているが、コロナ禍の収束も相まって、園長としての業務もスムーズに進んでおり、本年度はより順調に研究を遂行できると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
2つのサブテーマに分けて研究を遂行する予定である。 1.ピラジンジカルボン酸を配位子とする希土類錯体の合成と、遷移金属イオンの連結:希土類錯体については合成と基礎的な磁気データの収集を終えている。この希土類錯体は赤道面内に配置したピラジン間により他の金属イオンに結合が可能である。そこに様々な金属錯体(価数の違い、常磁性・反磁性の違い、など)を導入し、希土類錯体の遅い磁化緩和に及ぼす影響を磁気データの収集・解析をもとに明らかにする。また、コンピュータ計算(ab initio計算)をもとに電子構造について解明し、希土類錯体の周囲に導入したカチオン性錯体が希土類イオンの電子状態に与える影響について考察する。 2.Gd(III)錯体における遅い磁化緩和の機構解明:半閉殻の電子配置を持つGd(III)イオンは磁気異方性を示さないが、適切な条件下で遅い磁化緩和を示すことが明らかとなっている。ピリジンジカルボン酸錯体やピラジンジカルボン酸錯体においてもそのような現象を見出しており、結晶中のフォノンの伝播と関連付けて機構解明を行っているところである。特に低エネルギーフォノンの重要性が明らかとなっており、結晶の堅牢性と磁気特性の良否の相関を見出している。これらのジカルボン酸錯体は結晶が数mmまで成長するため、単結晶を用いた磁気データの収集が可能であり、磁気特性やフォノン伝播の異方性を議論するのに適している。これらの錯体を複数合成し、その単結晶を対象に遅い磁化緩和の詳細な解明を行う。
|