研究課題/領域番号 |
20K05541
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
松本 健司 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 講師 (30398713)
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研究分担者 |
上野 大勢 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (90581299)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | シデロフォア / アルカリ土壌 / 鉄輸送 / 植物栄養代謝 / 還元 / 植物用鉄供給剤 / 鉄錯体 |
研究開始時の研究の概要 |
世界の陸地の3割にも及ぶ石灰質アルカリ土壌は、植物における鉄吸収および光合成を阻害するため作物の育成に不適合であり、急進する食糧需要を満たすためにはこうした土壌の有効利用が求められている。本研究ではアルカリ条件下でも安定なFe(III)錯体を形成する微生物型シデロフォアの特性・構造に着目し、アルカリ土壌でも利用可能な植物用鉄供給剤としての微生物型人工シデロフォアの合成とその機能評価を行う。
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研究実績の概要 |
世界の陸地の3割にも及ぶ石灰質アルカリ土壌は、植物における鉄吸収および光合成を阻害するため作物の育成に不適合であり、急進する食糧需要を満たすため にはこうした土壌の有効利用が求められている。本研究ではアルカリ条件下でも安定なFe(III)錯体を形成する微生物型シデロフォアの特性・構造に着目し、アルカリ土壌でも利用可能な植物用鉄供給剤としての微生物型人工シデロフォアの合成とその機能評価を目的とする。これまでに末端カルボキシル基を有する二脚型アミンアンカーを有するビス(ヒドロキサム)酸型人工シデロフォアBSPPAを合成し、このFe(III)錯体が良好な水溶性を持つだけでなく、pH2~9という広いpH領域で安定であるうえ、還元されやすい性質であることを明らかにしている。令和5年度においては、新たにチアゾリンとフェノール骨格を有する天然シデロフォアであるデスフェリチオシンのチアゾリン骨格をチアゾール骨格に変えた人工シデロフォアL4'の合成とそのFe(III)錯体の性質について検討した。 L4'とFe(III)との錯体は、ESI-マススペクトル測定からFe(III)と配位子の比が1:2の組成であることが明らかとなった。また、水溶液中における錯形成挙動を紫外可視吸収スペクトル測定により調べたところ、pH3~8という広いpH領域で安定であった。さらに、Fe(III)錯体の還元電位をサイクリックボルタンメトリーにより測定したところ、標準水素電極基準で0.0 Vの値であった。この値は他の人工シデロフォアのFe(III)錯体と比較して、約0.2 Vも正側であり、より還元されやすいことが判明した。このことから、Fe-L4'錯体は植物用アルカリ耐性鉄供給剤として有用な性質をもつことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度においても研究室の学生が新型コロナに感染した影響もあり、十分な研究時間が取れなかったものの、これまでとは異なるタイプの微生物型人工シデ ロフォアおよびそのFe(III)錯体の合成に成功した。紫外可視吸収スペクトル測定や酸化還元電位測定の結果から、従来の人工シデ ロフォア-Fe(III)錯体と比較して、 塩基性条件下における錯体安定性や非常に優れた被還元性が見られたことから、目標とする植物用アルカリ耐性鉄供給剤としての性質を有していることが示唆された。しかしながら、新規に合成した人工シデロフォア-Fe(III)錯体の植物に対する効果まで調べるには至らなかった。以上のことから、本研究は当初予定と比べてやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに合成した人工シデロフォア-Fe(III)錯体の植物に対する鉄欠乏回復効果を検討する。具体的には、これまでと同様に、供試植物としてキュウリを用いて、鉄欠乏状態からの回復効果を葉のクロロフィル量や葉、茎、根中の鉄量などを測定することで調べる。また、鉄輸送に関与する遺伝子の発現量を調べ、微生物型人工シデロフォアを用いた際の植物における鉄輸送の機構解明を目指す。
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