研究課題/領域番号 |
20K05551
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡會 仁 大阪大学, エマージングサイエンスデザインR3センター, 招へい教授 (30091771)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 磁性ナノ粒子 / 磁気配向 / 磁気配向線二色性 / 地磁気 / コロイド安定性 / 直線二色性 / 円二色性 / 地磁気効果 / 磁気泳動 / レーザー光熱変換泳動 / マイクロバブル / 磁気サニャック効果 / タンパク質コロナ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、申請者がこれまで進めてきた分析化学における磁場の利用研究を更に発展させるために、以下の研究を行うものである。 1) 磁化率の差異によって溶液内および界面に引き起こされる様々な化学的・光学的効果を開拓する。それを利用して、酸塩基反応、酸化還元反応、錯形成反応、集合体生成反応等の新たな計測法を開発する。 2) 磁性酸化鉄ナノ粒子の磁気配向線二色性スペクトルをプローブとする新たな分光分析法を開発する。そして、ナノ粒子の凝集過程や血中タンパク質がナノ粒子表面に吸着してコロナを形成する過程を明らかにする。 3) 表面プラズモンの磁場応答機構を解明し、新たな磁気プラズモン分析法を開拓する。
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研究実績の概要 |
新規な磁気化学効果及び磁気光学効果の開拓とその分析化学的展開を目指して研究を行った。今年度は以下の成果を得ることができた。 1)酸化鉄ナノ粒子の地磁気による磁気配向の研究:酸化鉄ナノ粒子は、地球上のいたる所に存在しており、自然界において、様々な化学反応に関与していると考えられる。一方で、磁性ナノ粒子としての性質から、微弱な地磁気(30μT)の影響を受けている可能性があるが、その実態は明らかではない。申請者は、まず磁性ナノ粒子の地磁気による配向が、磁性ナノ粒子がどのような凝集状態にあるときに起こるかを明らかにすべく、磁性ナノ粒子の磁気配向測定法を検討した。そして、直径12mmのガラスベースをもつディッシュ内において、予め50mT程度の垂直磁場下で、塩酸を加えて凝集させた磁性ナノ粒子懸濁液を地磁気下で乾燥させ、その直線二色性スペクトルの角度依存性を測定することで、配向性を評価できることを発見した。この方法を用いて、磁性ナノ粒子が塩酸を加えない水分散液中で存在しているときの単量体の磁化モーメントの約10倍の磁気モーメントをもつ凝集体が生じると、地磁気による配向が明確に検出できることを明らかにした。この研究成果は、日本化学会春季年会及び分析化学討論会で発表すると共に、論文としても公表した。 2)増強地磁気による磁性ナノ粒子の凝集反応の促進:地磁気の微弱な磁場を、鉄プレートにより10倍以上に増強できることが分かった。この増強磁場は、磁性ナノ粒子の凝集反応を促進することを、直線二色性の測定により明らかにした。この研究成果は、日本分析化学会年会において発表した。この増強磁場効果の化学反応への影響を、今後詳しく検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度までの研究により、直線二色性測定法が、溶液中における磁性ナノ粒子の磁気配向の測定に有用であることを明らかにしたが、更に微弱な地磁気による磁性ナノ粒子の磁気配向が、分散液の乾燥試料の直線二色性の角度依存測定により検出が可能であることを明らかにした。そして、論文としての公表も行った。この成果は、当初の計画を越えた成果である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究において、微弱な地磁気により、磁性ナノ粒子の凝集体が磁気配向を示すことを発見した。また、前年度までの研究により、キラルに配置した磁場により磁気配向した磁性ナノ粒子が円二色性を示すメカニズムを明らかにした。これらの結果から、今後明らかにすべき問題として、地磁気とキラリティーの関係がある。この問題は、現在、ホットな研究テーマとして世界中の研究者の関心を集めている。本研究のこれまでの成果は、この問題に立ち向かうための有効な方法論を与えていると考える。このような磁気とキラリティーの問題を、磁気化学効果・磁気光学効果の今後の研究の大きな柱として研究計画を考えたい。
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