研究課題/領域番号 |
20K05695
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
|
研究機関 | 都城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山下 敏明 都城工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (80191287)
|
研究分担者 |
野口 大輔 都城工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (00413881)
藤川 俊秀 都城工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (10777668)
淡野 公一 宮崎大学, 工学部, 教授 (50260740)
高橋 利幸 都城工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (50453535)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 共生藻 / 光触媒 / ナノミスト / 水素生産 / スパッタリング / 光触媒反応 / 酸化チタン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、藻類(共生藻)を生育しながら、共生藻が光合成によって生み出す糖を含む水溶液をナノミスト発生装置により光触媒(酸化チタン)薄膜上に噴霧し、光反応によって連続して水素を生産する装置の開発を目的とする。この装置のエネルギー源は主に太陽光であり、太陽光パネルのように、各家庭の屋根に設置することで、化石燃料に依存しない小規模分散型の水素生産システムを開発する。本装置は極めてシンプルな装置であり、これを用いて次世代の化石燃料の代替エネルギー源を提供したい。なお、本研究は、SDGsの“エネルギーをみんなに そしてクリーンに”に対応している。
|
研究実績の概要 |
本研究は、薄膜光触媒の製作、ミストの発生、共生藻からの糖生産から成り立っている。これらを統合して連続型の水素生産装置を開発する。令和5年度は、犠牲試薬をミストとして薄膜光触媒上に供給して水素を発生する研究および藻類から生産された糖を薄膜光触媒上に供給して水素を発生する研究を行った。 薄膜光触媒の製作に関しては、水素発生のための最適条件(白金溶液の濃度、犠牲試薬の濃度、光照射時間、照射強度、用いる光触媒薄膜の膜厚・面積)を決定した。ミスト発生に関しては、犠牲試薬をマイクロミストあるいはナノミストにして薄膜光触媒を組み込んだ水素生産装置に供給できる装置を開発した。なお、マイクロミストは超音波振動により、ナノミストはベンチュリ効果を利用して発生させた。その結果、マイクロミストを用いて水素生産を行うと、通常の溶液条件下での水素生産方法と比較して、同じ反応時間において水素生産量に優位性が認められた。また、ナノミストを用いても水素生産が可能となった。さらにナノミストを用いると犠牲試薬を装置内に循環させながら供給することができ、このことで、粉末の光触媒上でも水素発生が可能となった。 共生藻からの糖生産に関しては、光触媒による水素生産に必要な糖を効率よく生産するための条件の検討を行った。その結果、通常、共生藻の培養に用いる培養液を用いなくても、糖を生産できることがわかった。また、共生藻が生産した糖を薄膜光触媒が組み込まれたマイクロリアクターに導入することで水素を発生できることが明らかになった。 なお、薄膜光触媒を組み込んだマイクロリアターによる水素発生については、論文として発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、水素生産装置と糖生産装置のそれぞれの基本的な研究を行ったのち、最終的にそれらの結果を総合して連続水素生産システムを完成させる予定である。 水素生産装置の開発では、水素を生産するための酸化チタン成膜ガラスを作成し、その成膜ガラスに白金助触媒を担持した。その結果、最大量の水素を生産するための白金溶液の濃度、犠牲試薬の濃度、光照射時間、照射強度、用いる酸化チタン薄膜の面積が明らかになった。 ミストを用いた水素生産に関しては、通常の溶液中での水素生産に比べ、マイクロミストにして犠牲試薬を供給した方が水素の生産量が高いことがわかった。ナノミストにして関しては、ナノミストとして犠牲試薬を供給すると、その犠牲試薬の濃度が低いことがわかった。そこで、これまの装置を循環式の犠牲試薬供給装置に変更することで、水素を得ることに成功した。しかし、多量の水素を得るための最適条件はわかっていないため、今後は、犠牲試薬の種類、濃度、触媒量、供給速度の検討を行う必要がある。 糖生産装置の開発では、種々の培養液中での共生藻の糖生産条件がある程度明らかになったが、現在、より生産性の高い糖生産条件を見出すための検討を行っている。また、薄膜光触媒が組み込まれたマイクロリアクターに共生藻が生産した糖を連続して供給できるシステムは構築したが、共生藻の糖生産が遅いため、上記の糖生産条件に加えて、糖生産装置の改良も行なっている。 共生藻の培養には時間がかかるため進捗がやや遅れているが、基本的条件は明らかになってきたので、フロー条件下で最適な糖生産条件を見出す予定である。また、白金担持酸化チタン薄膜の製作に関しては完成し、ミスト装置の改良も終えることができたので、次に示す計画にしたがって研究を遂行していく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度の前半は、ミスト装置による水素生産の検討と糖生産装置の改良を行い、後半は2つの装置を連結したフローシステムを完成し、最大量の水素を生産できる条件を明らかにする予定である。なお、ミスト装置による水素生産では、犠牲試薬の種類、濃度、触媒量、供給速度の検討を行う。糖生産装置の改良に関しては、共生藻の糖生産が遅いため、糖生産条件に加えて、糖生産装置の拡張をするなどして改良を行う。また、共生藻の培養液や糖生産条件の検討およびフロー条件下での最適糖生産条件(反応容器の検討、流量の設定、光量、培養液の選択など)を、研究分担者の高橋(共生藻担当)とともに遂行する予定である。これらの結果をもとに、連続水素生産システムを令和6年度に完成させる予定である。
|