研究課題/領域番号 |
20K05725
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37020:生物分子化学関連
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
杉谷 加代 金沢大学, 保健学系, 准教授 (20162258)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | Heat shock factor 1 / Yamanaka factors / sox2 / klf4 / oct4 / zebrafish / retina / optic nerve injury / Yamanaka factor / FXIII-A / Sox2 / Oct3/4 / Klf4 / HSF-1 / regeneration |
研究開始時の研究の概要 |
魚類では中枢神経の優れた再生・治癒能力が認められる。そのため中枢神経の一つである視神経を切断し損傷させても、中枢神経軸索の再伸長が見られ視神経は完全に再生し視覚機能は回復する。本研究ではゼブラフィッシュの視神経損傷モデルを用い、その視神経再生過程において網膜で発現が増加する再生関連分子に着目した結果、最も早い発現増加が認められたのはHeat shock factor 1 (HSF-1)であった。本申請では、視神経損傷後のごく初期の段階に見られるHSF-1発現が、再生・修復のカスケード反応にどのような役割を果たすのかについて解明を目指す。
|
研究実績の概要 |
ゼブラフィッシュの視神経は,切断などの損傷を与えても再生が可能であり,約1ケ月以内には再生した視神経が視覚中枢である視蓋に到達する。その後,さらに2-3ケ月くらいの時間をかけて完全に視覚機能が回復する。そのため,ゼブラフィッシュの視神経及び網膜は,中枢神経の実験的再生モデルとして非常に重要である。この再生過程における網膜では,様々な再生関連分子の発現が時期特異的に起こり,再生・修復へ導かれていくわけであるが,その機構については未だ不明な点が多い。 クラッシュによる視神経の損傷後,これまで最も早く網膜で発現する分子として Heat shock factor1(HSF1)を同定した。HSF1 mRNAは,視神経損傷 約30分後には網膜神経節細胞を中心として迅速に発現誘導される分子であることが判明した。また,同時期の網膜において,iPS細胞の誘導因子として知られる3つの山中ファクター, Oct4,Sox2,Klf4 の転写因子としての発現上昇が確認された。 Oct4,Sox2,Klf4のmRNA発現は視神経損傷後1-3時間で、HSF1と同様に網膜神経節細胞を中心に急速に誘導されていた。このOct4,Sox2,Klf4 のmRNAの活性化は、視神経損傷前にHSF1モルフォリノを眼内に注入することにより著しく抑制されるという結果が得られた。さらに,ChIPアッセイ(クロマチン免疫沈降法)により,HSF1が Oct4,Sox2,Klf4の3つの山中ファクターのゲノムDNAに結合することが確認された。 本研究により、ゼブラフィッシュ網膜における Oct4,Sox2,Klf4の3つの山中ファクターの迅速な活性化がHSF1により制御を受けていることが明らかとなり、このHSF1に続く山中ファクターの活性化が視神経再生のごく初期の段階で非常に重要であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アダルトゼブラフィッシュの網膜では、視神経損傷後にHSF-1の発現に伴ってiPS 細胞誘導遺伝子である山中ファクターの klf4, sox2, oct4 の3つの転写因子が発現が増加していることが今年度解明された。この3つの転写因子のピークについては、klf4が視神経損傷後1時間と最も早いピークを示し、次いで、oct4, sox2という順であった。sox2は、中枢神経系では幹細胞のマーカーとして確立した分子であり、損傷を受けた網膜の中の神経細胞は、一旦、幹細胞化して未熟な状態に戻り、その後増殖・再分化して軸索再伸長が誘導されるということが推定された。
|
今後の研究の推進方策 |
Klf4, Sox2, oct4 などの山中ファクターの発現とアンチアポトーシス分子であるBcl-2, あるいはアポトーシス分子であるBaxなどの発現について、視神経損傷を受けた網膜での発現変化について検索を進める。また、3つの山中ファクターの発現を各アンチセンスモルフォリノ等を用いた発現抑制実験により、どのような影響が出るのかを調べ、損傷網膜内でのHSF1に続く山中ファクターの発現による生理学的作用について解明を進めたい。
|