研究課題
基盤研究(C)
本研究では希少糖の植物に対する作用機作の解明を目的として、希少糖と天然糖との「植物における糖代謝と細胞内レドックス制御の関連性」に関する比較解析を行う。本研究での研究対象は、希少糖D-プシコースやD-アロースを処理した植物におけるA6P生成に関与する「P6P-A6P変換酵素」とA6Pによる細胞の酸化/抗酸化に関与すると考えられる「G6PDH」の特性を知ることであり、モデル植物のイネやシロイヌナズナを用いて「希少糖D-プシコースやD-アロースが植物細胞へのレドックス状態にどのように作用するのか」「植物の糖代謝と細胞のレドックス制御はどのように関連しているか」を解明する。
本研究は、植物に対する希少糖D-アロースとD-アルロース(D-プシコース)の作用メカニズム解析を通じて、糖代謝と希少糖による植物への耐病性付与やレドックス状態制御の関連性の解明を目指した。これらの希少糖の作用にはD-アロース6リン酸(A6P)の生成が必須だが、D-アルロース処理時のD-アルロース6リン酸ーA6P間の変換がホスホグルコースイソメラーゼ(イネOsPGI1/2)によることを組換え酵素や形質転換植物を用いた実験から明らかにし、また、D-アロース処理イネでの活性酸素種増加に繋がるG6PDH活性の維持が、A6Pを含むリン酸糖によるOsG6PDH1特異的安定化によって起こる可能性を見出した。
本研究の成果は、希少糖による植物の耐病性誘導や一過的生長抑制のメカニズムを明らかにしたものであるが、糖代謝が耐病性誘導に繋がる植物細胞の酸化還元状態に直接的に関与することを示すだけでなく、他のストレス(塩ストレスなど)でも示唆されているG6PDHによる制御が、イネのOsG6PDH1などの細胞質型キー酵素のリン酸糖による安定化によることを示唆するなど、学術的にも重要な知見に繋がるものである。また、希少糖は天然物であり、特にD-アルロース(D-プシコース)やD-アロースは安全性も担保されており、本研究を含めた作用メカニズム研究の成果は、安全な農業資材の確保という社会的意義を持つ重要な知見である。
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