研究課題/領域番号 |
20K05775
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38010:植物栄養学および土壌学関連
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
上野 大勢 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (90581299)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | イネ / マンガン / カルシウム / トランスポーター / 石灰質アルカリ土壌 / 輸送体 / 石灰質土壌 / アルカリ土壌 / マンガン欠乏 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は食料増産のために,石灰質アルカリ土壌における稲作の実現を目指し,イネのマンガン欠乏耐性分子機構を解明することを目的とする。石灰質アルカリ土壌を模した低マンガン/高カルシウム条件で特異的に発現レベルが増減する遺伝子群を網羅的に解析することにより,生理的マンガン濃度の維持に関わる候補遺伝子を選抜する。続いて,分子生物学的・生理学的各手法を用いて機能を詳細に解析し,候補遺伝子の植物体内における生理的役割を明らかにすることによって,石灰質アルカリ土壌におけるマンガン欠乏応答分子機構の統合理解を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は高カルシウム(Ca)/低マンガン(Mn)環境の石灰質アルカリ土壌における稲作の実現を目指し,イネのMn欠乏耐性分子機構を解明することを目的とする。酵母の液胞膜型トランスポーター遺伝子Ca2+-sensitive cross-complementer 1 (CCC1)のシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)におけるオルソログvacuolar iron transporter 1 (AtVIT1)は、Metal tolerance protein 8 (AtMTP8)と協調して種子中のMnと鉄(Fe)の適切な分配に関与する。2022年度はイネのオルソログVIT1/2またはMTP8.1/8.2の欠損による、玄米中のMnとFe分布への影響を、SR-XRFおよびXAFSを用いて解析した。 野生株とmtp8.2の玄米におけるMnの分布に違いは見られなかったのに対し,mtp8.1では幼根の先端部にMn濃度の低下が見られた。一方、vit1では葉芽先端に、vit2ではエピブラストに野生株に対し高いFe集積を認めた。また、価数イメージングによりvit2のエピブラストに強く濃集していたFeは、3価が支配的であることが明らかになった。 昨年度までに、endoplasmic reticulum Ca2+ ATPase 3 (ECA3)の欠損株がMn濃度低下を伴わないMn欠乏感受性を示すことを明らかにした。本年度はMn吸収が低下する別のeca3欠損株を用いて野生株との間でRNA-seq解析を行い、その原因を調査した。その結果、野生株に対しeca3で発現が誘導されている遺伝子が106 個、抑制されている遺伝子が82 個取り出されたが、興味深いことに、Mn吸収を担う主要なトランスポーター遺伝子Nramp5の発現に違いはなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2年目までのコロナ禍による研究活動の制限により、進捗状況に大きな遅れが発生しており、研究期間を延長するに至った。 シロイヌナズナではAtVIT1単独の欠損によっては種子中のMn分布に影響がない。しかし、AtMTP8との二重破壊株では野生株ともatmtp8とも異なるMn分布を示すことから、両者は協調してMnの適切な分配に関わると考えられる。一方、本研究で用いたイネはVITとMTPそれぞれに2つのホモログが存在する。そのため、二重破壊による影響を調べるためには、少なくともVITかMTP何れかにおいてホモログを2つともノックアウトして検討する必要があった。vit1vit2は十分量の種子が確保できなかったため、まずは前年度までに作成したmtp8.1mtp8.2の玄米についてイメージングを行った。しかし、mtp8.1mtp8.2はMn感受性が非常に高いため、Mn濃度の低い水耕でしか種子が取れない。加えてMn吸収量自体も少ないことから、玄米中のMn濃度が低かったことからイメージを撮ることができず、VITとの二重欠損の影響を解析できなかった。 トランスクリプトーム解析により、eca3の一つラインでMn吸収が低下する要因がMn吸収を担うNramp5に関係しない可能性が高まったが、現在のところ原因遺伝子の特定には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に実施できなかったECA3の細胞内局在性の解析を、イネプロトプラストにおける一過性発現やウェスタンブロッティングにより明らかにする。大腸菌で毒性を示すコンストラクトの作成については、in vitro長鎖環状DNA構築ツール「OriCiro Cell-Free Cloning System」を用いて検討する。また、eca1eca2は致死であった(発芽しなかった)が、eca1とeca2ヘテロ接合の場合は著しい生育阻害が表れるものの、生育が可能なことが分かったため、同変異株を用いてMnとCaの過不足の影響を調べる。野生株に対し、eca3で発現が誘導/抑制された遺伝子群より候補遺伝子を選抜する。何れの実験においても、各種分子生物学的、生化学的、生理学的手法を用いて、細胞内局在性、組織局在性、ノックアウトの影響を解析することにより、役割の解明を目指す。
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