研究課題
基盤研究(C)
細菌は様々な環境に感知応答し生存する。二成分制御系(TCS)は原核生物に特有な環境応答システムで、ほとんどの細菌・古細菌が複数もつ。TCSで働くタンパク質は高い類似性をもち、複数間での情報交差が働き、環境応答に柔軟性と多様性を与える。本研究は、環境応答した細菌個体が、その環境下で最適な増殖である適応増殖を示すが、そのゲノム機能メカニズムは不明である。約30種類のTCSをもつ大腸菌から、独自に開発したゲノム編集HoSeI法で全TCS遺伝子欠失大腸菌株を創造し、ゲノム構造機能、増殖力、代謝の親株との比較解析から、細菌TCSネットワークによる環境応答生存戦略と適応増殖戦略への貢献度を考察する。
二成分制御系(TCS)は原核生物に特有な環境応答システムで、複数のTCS間でクロストークが働き、環境応答に柔軟性と多様性を与える。多重ゲノム編集HoSeI法をもちい単離した大腸菌K-12の全34種類のすべてのレギュレーター遺伝子欠失株と全30種類のすべてのセンサー遺伝子欠失株について、ゲノム構造機能、増殖力、代謝力の相違を調べた。その結果、TCSレギュレーターは環境応答の生存に必要だったのに対し、TCSセンサーは生存にも適応増殖にも不必要だった。さらにすべてのセンサー遺伝子欠失株では細胞内の代謝産物プロファイルは親株と大きく違い、いくつかのレギュレーターがセンサー非依存的に活性化していた。
環境応答や適応増殖にTCSの「センサーが不要」で「レギュレーターは低分子のリン酸化有機化合物で活性」し、「センサー遺伝子をもたない細胞に特異的な代謝産物プロファイル」があることを見出した。これらの成果は、細菌生存に、代謝と連携し活性化するレギュレーターが本質的に重要であることを示し、進化的にどのようにセンサーを獲得したのかという新しい生物学的問いを与え、自然環境で増殖せず生存する細菌の理解に貢献する。TCSは、病原性細菌の病原性、抗菌剤耐性、バイオフィルム形成に関わる遺伝子群を発現する。生存と増殖ではたらく代謝-TCSレギュレーターは、抗菌薬開発や多剤細菌感染症における新しい標的になる。
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