研究課題/領域番号 |
20K05826
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
瀬上 紹嗣 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 助教 (00765935)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ピロリン酸 / 糖代謝 / プロトンポンプ / デンプン / 液胞 / 窒素 / 液胞輸送 / 重力 |
研究開始時の研究の概要 |
植物の液胞膜に2つ存在するH+輸送体のうち、ゴミであるピロリン酸(PPi)を用いるV-PPaseはエネルギー節約型のポンプと考えられてきたが、これはPPiの濃度を調節するために重要であることが分かってきた。この研究ではPPiは植物の成長調節物質であり、V-PPaseの量がPPiの濃度調節を介して糖の使われ方(成長・供給/貯蔵)を決めているという仮説を検証する。 また、PPiを単純に分解除去するsPPaseを植物で働かなくすることで、ポンプでもあるV-PPaseのみがPPiを優先的に使える環境をつくることで、液胞にものを溜める力を強化させた改変植物の作出を目指す。
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研究実績の概要 |
ピロリン酸(PPi)は、200以上の代謝反応から生産され、その蓄積は生物にとって毒となる。しかし、植物細胞では200μMほどの比較的高い濃度が維持され、PPiを利用する複数の酵素がエネルギー源として利用している。そのうち、液胞膜のH+ポンプであるH+-PPaseがPPi消費の大部分を占めること、さらに可溶性PPaseを欠損させた多重変異体ではより高いPPiの蓄積が発生し、細胞壁成分が減少し、デンプンが蓄積するという代謝変動がみられることを明らかにしてきた。このことから、細胞内PPiは主にH+-PPaseによって調節されていると考え、その実証と生理的意味を探索している。 H+-PPaseはほぼすべての細胞で発現するが、アミロプラストを平衡石とする根端のコルメラ細胞のみ極端に低いという発現特徴を示す。ここに野生型H+-PPaseと、H+輸送活性のみを欠損しPPi分解のみを行う変異型H+-PPaseを異所発現させると、暗処理条件において野生型と比較してデンプンが減少し液胞体積が増大する表現型が観察された。重力感知の平衡石であるデンプン粒維持のためにH+-PPaseの発現量がコルメラ細胞で抑えられていると考え、H+-PPaseの異所発現体の重力屈性における表現型を調べたところ、デンプンを蓄積しないpgm変異体と野生型の中間程度の値を示した。根の長さについては、異所発現による影響は見られなかった。PPi量がこの表現型を決定しているという仮説の下、液胞膜局在型H+-ATPase AHA10を発現させたところ、予想外に液胞の増大とデンプンの低下という同様の表現型が見られ、酵母や大腸菌可溶性PPase発現株では表現型が見られなかった。これらの結果から、観察された表現型は液胞膜タンパク質の過剰発現やATPの消費量増加によるものであるという可能性を考慮し、検証実験を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度において、申請者の異動とそれに伴うエフォートの変化があり、またコロナ禍による研究の中断があった。また、研究実績の概要に記載した通り当初予想していない結果がでたため、さらなる仮説検証の必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度が最終年度となるため、これまでに得られた実験結果を元に論文執筆とそれに必要な追試を行う。根端コルメラにおけるH+-PPaseの異所発現が、平衡石であるデンプン量や重力屈性、また液胞形態に影響した原因がPPiの減少によるものなのか、またはATPや膜タンパク質の過剰発現など別の要因によるのかを、H+-ATPase賦活剤であるフシコクシンやVam3などの液胞膜タンパク質の過剰発現ラインを用いて解析する。
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