研究課題
基盤研究(C)
申請者はこれまで、クラゲの大量発生を基礎研究の立場から理解し、新たなクラゲ抑制法開発の足掛かりを得るため、クラゲの変態現象の分子メカニズムを解明する研究を進めてきた。本研究では、ミズクラゲの変態を制御する細胞間シグナル分子群の化学的実体を明らかにすることを目的とする。まず、変態調節物質を探索し、その投与によって影響を受ける遺伝子群を網羅的に同定する。得られた遺伝子群の中から細胞間シグナル分子の特徴を持つものを選抜し、それらについて発現解析・機能解析を行う。
本申請研究の目的は、ミズクラゲにおけるポリプ(固着性の幼生)からクラゲ(遊泳性の成体)への変態過程を制御する内在性の細胞間シグナル分子群を明らかにすることである。具体的には、以下の3つのstepで実験を進める。(Step 1) 放線菌ライブラリーをスクリーニングし、変態調節活性を示す物質を精製・単離・構造決定する。(Step 2) 変態調節物質の投与群とコントロール群について次世代シーケンサーによるRNA-seq解析を行い、投与によって発現変動する遺伝子群を同定する。(Step 3) 変態関連遺伝子群について発現解析と機能解析を行い、変態制御に関わる細胞間シグナル分子群を明らかにする。研究期間全体を通じて、以下の成果を得た。Step 1では、放線菌ライブラリーのスクリーニングを実施し、6047株が生産する分節形成阻害物質を単離し、化学構造を決定した。Step 2では、過去の研究で変態停止活性が見出されたtryptamine(TAM)を用いてRNA-seq解析を行った。TAM投与群・非投与群のストロビラそれぞれの口側半分と足側半分、および過去に実施したポリプとストロビラのwhole bodyの解析結果もあわせてバイオインフォマティクス解析を行い、ストロビラの口側(分節を含む)で特異的に発現する遺伝子群を抽出した。さらにSOSUIとSignalPによるシグナルペプチド解析を行い、分泌タンパク質をコードするものを選抜した。その中から、3種類の細胞増殖因子の相同遺伝子を見出し、変態制御に関わる細胞間シグナル分子の候補と考えた。Step 3では、上記候補分子それぞれのシグナル伝達経路阻害剤・活性化剤の投与実験を行い、変態への影響を調べた。その結果、3種の候補分子のうち、2つが分節形成に、残りの1つが形態形成に関与する可能性が示唆された。
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Fisheries Science
巻: 90 号: 2 ページ: 179-190
10.1007/s12562-023-01744-z
Frontiers in Marine Science
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