研究課題/領域番号 |
20K05851
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
国吉 久人 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 准教授 (60335643)
|
研究分担者 |
荒川 賢治 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 准教授 (80346527)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | ミズクラゲ / 変態 / 生理活性物質 / RNA-seq解析 / 生物活性物質 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者はこれまで、クラゲの大量発生を基礎研究の立場から理解し、新たなクラゲ抑制法開発の足掛かりを得るため、クラゲの変態現象の分子メカニズムを解明する研究を進めてきた。本研究では、ミズクラゲの変態を制御する細胞間シグナル分子群の化学的実体を明らかにすることを目的とする。まず、変態調節物質を探索し、その投与によって影響を受ける遺伝子群を網羅的に同定する。得られた遺伝子群の中から細胞間シグナル分子の特徴を持つものを選抜し、それらについて発現解析・機能解析を行う。
|
研究実績の概要 |
本申請研究の目的は、ミズクラゲにおけるポリプ(固着性の幼生)からクラゲ(遊泳性の成体)への変態過程を制御する内在性の細胞間シグナル分子群を明らかにすることである。具体的には、以下の3つのstepで実験を進める。 Step 1. 放線菌・糸状菌の菌株ライブラリーを探索源として、様々な変態調節活性を示す物質をスクリーニングし、精製・単離・構造決定する。 Step 2. Step 1で得られた変態調節物質の投与群とコントロール群について次世代シーケンサーによるRNA-seq解析を行い、投与によって発現変動する遺伝子群を同定する。 Step 3. Step 2で得られた変態関連遺伝子群について発現解析と機能解析を行い、変態制御に関わる細胞間シグナル分子群を明らかにする。 現在までにStep 1の「変態調節物質のスクリーニングと同定」に着手している。放線菌ライブラリーのスクリーニングで最も強い分節形成阻害活性を示した6047株について、活性物質の単離と構造解析を完了した。推定構造に基づいて合成品を大量調製して生物活性を調べた結果、精製した天然物と全く同じ活性が認められた。以上のことから、活性物質の化学構造を確定できたと考える。 Step 2の「RNA-seq解析による変態関連遺伝子群の探索」では、過去の研究で変態停止活性が見出されたtryptamine(TAM)についてRNA-seq解析を行った。TAM投与群・非投与群のストロビラそれぞれの口側半分と足側半分、および過去に実施したポリプとストロビラのwhole bodyの解析結果もあわせてバイオインフォマティクス解析を進めた。Pythonを用いて独自に開発した解析プログラムによって、各サンプル間での発現量の比較・アミノ酸配列中の疎水性分析を行い、発現パターンによる分類と分泌タンパク質・膜タンパク質のリストアップを完了した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度の研究科の大規模な改修工事の間は、仮の飼育室に引っ越したためにポリプの継代維持の規模を縮小せざるを得ず、2022年度、工事終了後にポリプの大量飼育を再開した。しかし、新しい飼育室の空調条件が安定せず、ポリプの調子が悪化し、増殖が著しく停滞した。また、継代縮小中のボトルネック効果のせいか、あるいはクローン系統の老齢化のためか、バイオアッセイなどの実験中に死亡する例が続発した。そのため、実施中の実験を一旦停止し、新たにクローン系統を確立した。広島県竹原市の海域でミズクラゲ成体を採集し、これより24株のポリプクローン系統を確立し、実験の使用に最適な系統を選別中である。並行して、バイオアッセイ系の改良を試み、これまで以上に再現性の高い安定したアッセイ系の確立に成功した。このアッセイ系を用いて、Step 1の「変態調節物質のスクリーニングと同定」での合成品の生物活性を確認した。 以上のような状況下であったので、Step 2の「RNA-seq解析による変態関連遺伝子群の探索」のウェットな実験は停止せざるを得ず、生体を必要としないバイオインフォマティクス解析を中心にドライな研究を進めた。この間、解析の効率を高めるため、Pythonを用いた解析プログラムを開発し、本研究への適用を試みた。
|
今後の研究の推進方策 |
【Step 1:変態調節物質のスクリーニングと同定】6047株の活性物質については構造決定が完了したので、論文投稿を進める。この物質は比較的簡便な方法で有機合成が可能であるので、類縁体の生物活性を調べて構造活性相関を明らかにする。また、6047株以外の菌株についても、活性物質の精製・構造決定を進めていく。 【Step 2:RNA-seq解析による変態関連遺伝子群の探索】TAM投与群・非投与群のストロビラそれぞれの口側半分と足側半分、およびポリプとストロビラのwhole bodyを比較したバイオインフォマティクス解析は既に完了している。その結果に基づき、ストロビラの口側特異的に発現するがTAMによって発現低下する分泌タンパク質・膜タンパク質の遺伝子(113種)を「細胞間シグナル分子候補遺伝子」と位置付け、Step 3の実験を進めていく。 【Step 3:変態関連遺伝子群の発現解析と機能解析】Step 2で絞り込んだ113種の「細胞間シグナル分子候補遺伝子」について、順次in situ hybridizationによる発現解析を進めていく。その中で、局所的・特異的な発現パターンが見出された遺伝子については組換えタンパク質または合成ペプチドを調製し、バイオアッセイに供して生物活性を調べる。
|