研究課題
基盤研究(C)
天然物から有用な化合物が取得され、応用ならびに研究で利用されてきた。これらの化合物は表現型スクリーニングにより取得されているものも多く、分子標的が明らかにすることが重要である。しかし、化合物の標的分子同定は未だ難しい課題の一つであり、新たな手法の開発が求められている。本研究では、タンパク質が化合物と結合することによって熱安定性が変化することを利用したセルサーマルシフトアッセイとプロテオーム解析に基づくChemProteoBaseを組み合わせた新しい解析システムを開発し、新規化合物の標的を解析する。
(I) CETSAとChemProteoBaseを組み合わせた解析システム(2DE-CETSA)の構築:化合物が標的タンパク質に結合する時の熱安定性変化を利用したセルサーマルシフトアッセイ(CETSA)法と2次元電気泳動(2DE)に基づくプロテオーム解析を組み合わせた新規の標的タンパク質解析法の2DE-CETSAの解析基盤が整ったので、主に解析システムの維持、データの蓄積をおこなった。(II) 2DE-CETSAを用いた新規化合物の解析による解析系の有用性の証明:がん細胞の増殖阻害を指標にスクリーニングで得られた、標的分子の知られていない活性物質、あるいは、植物細胞を標的とした化合物について2DE-CETSAを用いた解析を行い、標的候補タンパク質を見出した。その後の詳細な解析を行い標的タンパク質としての妥当性について検討した。このほかに、プロテオーム解析を用いた化合物の作用解析を通して、日本の食用野生植物から得られたEDBDが脂質過酸化を通じてフェロトーシス様の細胞死を誘導することが示唆された(Usukhbayar N. et al. Free Radic Res, 57(3):208-222)。また、がん細胞を用いたスクリーニングで取得されたNPD723、並びに、その誘導体のH-006が強力なジヒドロオロチン酸デヒドロゲナーゼの阻害剤であることが明らかになった(Kawatani M. Oncol Res, 31(6): 833-844 (2023))。
1: 当初の計画以上に進展している
2次元電気泳動を用いた標的同定システムの2DE-CETSAについて方法論を確立できた。さらに、新規生理活性物質の解析を行い、計画が順調に進んでいることを示している。コロナ禍により解析の実例の数を増やすことは十分にできなかったので、継続して研究を遂行した。
2DE-CETSAや以前より開発しているChemProteoBaseなどの解析手法を進化、組み合わせることによって、作用標的未知の有用化合物の標的分子を明らかにする。
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