研究課題/領域番号 |
20K05864
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
上野 琴巳 鳥取大学, 農学部, 准教授 (40582028)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 根寄生雑草 / 担子菌類抽出物 / 幼根伸長阻害 / 吸器形成 / 種子発芽阻害 / 天然物化学 / 幼根伸長阻害物質 / 担子菌類 |
研究開始時の研究の概要 |
世界の農耕において、根寄生雑草による寄生被害が問題となっている。その解決案として自殺発芽誘導が考えられているが実用化には至っていない。そこで本研究では、化合物を用いて発芽した根寄生雑草を寄生成立前に枯死させる方法を開発する。研究報告例の少ないオロバンキ属植物を対象に、まずは宿主非存在下で吸器形成を誘導する物質を、植物の根抽出物から単離同定する。また幼根の伸長阻害物質や褐変誘導物質を担子菌類の培養抽出物から探索する。そして、有機合成により構造改変を行う。得られた化合物を用いてポット試験を行い、本研究で得られた化合物が根寄生雑草の寄生被害を抑えるかどうかを確認する。
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研究実績の概要 |
世界の食糧危機が問題となっている昨今、ハマウツボ科植物による寄生被害が農作物の生産を低下させる原因のひとつとなっている。ストライガ属やオロバンキ属植物に代表される根寄生雑草は、人間の目では確認できない地下部で宿主に寄生するため物理的な方法で取り除くことが難しく、化学的な手法で防御するのが一番と考えられている。これまで宿主植物が存在しない環境で根寄生雑草を発芽させ枯死に至らしめるという方法が研究開発されてきたが、実用化には至っていない。そこで本研究では視点を変え、化合物処理によって寄生プロセスを阻害する方法を開発することにした。発芽した根寄生雑草は幼根を伸長させ、先端に吸器という器官を形成する。その過程において、もし化合物で幼根の伸長を阻害することができれば、宿主植物は寄生を免れるのではないかと考えた。そのような化合物を得るために、化合物の構造が多様である担子菌類の二次代謝産物ライブラリをスクリーニングし、得られた5種の菌株を培養して幼根伸長阻害物質の単離同定を進めてきた。うち3種の菌株からは既知の幼根伸長阻害物質がそれぞれ1つあるいは2つ昨年度までに同定されていたが、本年度はそのうち2種の菌株で新たな活性化合物を4~6つ追加で同定することができた。また、昨年度新規化合物を単離した菌株からは更に同様の新規化合物を6種ほど得られた。そして化合物の単離に未着手であった1種の菌株から1つの新規化合物が同定された。これら化合物の活性はin vitroのみの試験でとどまっていたが、本年度からフィールド試験の前段階としてポット試験の検討を始めた。また、本研究を通して明らかになってきた幼根伸長阻害物質の構造の共通性から作用するような化合物をデザインし合成したところ、実際に幼根伸長を阻害したという結果も得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は選抜された5種の担子菌類の抽出物からヤセウツボ幼根伸長阻害物質の探索と同定を中心に行い、前年度から合わせて20以上の化合物を単離することができた。これら化合物の精製過程で活性が確認できる画分がいくつか残されているが、少量で活性が中程度であることから、主要な活性成分の単離は完了したと考えている。また、その中の一部の化合物の構造を参考に幼根伸長阻害物質のリード化合物をデザインして合成したところ、望み通りの活性を示した。今後は構造活性相関研究のための類縁体の合成や、リード化合物の構造展開を今後行っていく予定である。一方で天然の化合物が多く集まったことから、実用化に向けてのポット試験を開始すべく、本年度は小スケールで予備実験を行った。ヤセウツボを用いたポット試験の報告例が少なく、本研究においても確実な試験系を確立できていないため、今後の研究のためにも安定した試験系の確保が課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに担子菌類から単離されたヤセウツボ幼根伸長阻害物質は菌株によって炭素骨格が異なるものの、一部の化合物を除き、炭素数が20までに収まるような低分子化合物ばかりであり、1つの環構造に1,2本の側鎖という大枠は共通している。本年度合成した幼根伸長阻害物質のリード化合物は1種の菌株から単離された化合物を元にデザインされていたため、今後は、大枠の共通構造は残しながらも様々な菌株から単離された化合物の構造も参考にしつつ構造展開を行っていく。即ち、六員環を環構造のベースとし、フェノールやキノンから炭素数3から5程度の側鎖を伸長させた化合物を合成していく。一方で、担子菌類から単離された化合物は人工オーキシンと構造が類似していることから、市販されている人工オーキシンを購入して活性を確認し、リード化合物開発の情報とする。また同時並行でポット試験の検討を進めていく。ヤセウツボ種子を含んだ土壌中で宿主であるアカクローバーを栽培し、ヤセウツボの個体が地表に出てくるような系を確立する。ポットではヤセウツボの栽培が難しい可能性もあるため、ライゾトロンのような寄生関係成立を直接観察できるような系を作り上げ、そこに化合物を投与し、寄生を妨害できるかどうかを観察していく。
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