研究課題/領域番号 |
20K05880
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
藤村 務 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (70245778)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | セサモール / セサモール誘導体 / アポトーシス誘導 / 細胞増殖抑制 / 抗がん作用 / 構造活性相間 / 酸化還元活性 / 生体内代謝物 / 構造活性相関 |
研究開始時の研究の概要 |
ゴマは古くから健康に良い食品として知られており、食品やサプリメントとして摂取する事により様々な効果が期待されている。ゴマに含まれるゴマリグナン類はがんの発生要因の一つである活性酸素を除去する作用(抗酸化作用)を有する生理活性物質として注目されているが、科学的根拠に基づいた機能解明については不明な点が多い。私はゴマリグナン類の一つであるセサモールががん細胞に対してアポトーシスを誘導(抗がん作用)することを見つけた。そこでセサモールによる抗がん作用に着目し、がん細胞および薬剤耐性がん細胞を用いてセサモールによる抗がん作用の構造活性相関の機能解明を行う。
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研究実績の概要 |
ゴマに含まれるゴマリグナン類は抗酸化作用など生理活性物質として注目されているが、科学的根拠に基づいた機能解明については不明な点が多い。ゴマリグナン類の中でもセサモールがK562細胞(K562 )およびドキソルビシン薬剤耐性K562細胞 ( K562/DOX )に対して最も強いアポトーシス誘導(抗がん作用)を示しことを見つけた。セサモールによるアポトーシス誘導に構造活性相関があるかセサモール誘導体(S1, S2, S3)を合成し検討した。その結果、セサモール誘導体3(S3)はK562細胞あるいはK562/DOX細胞に対してアポトーシス誘導を示した。注目すべき点はK562/DOX細胞に対してもS3はセサモールよりも強いアポトーシス誘導を示し、Cleaved PARP、Cleaved Caspase3及びがん抑制遺伝子の一つとしても知られるp53の存在も確認できた。様々な官能基を持つ誘導体を合成しアポトーシス誘導による細胞増殖抑制作用を検討したがS3が最も強い作用を示した。マウスを用いたin vivo実験により、セサモールおよびセサモール誘導体処理により担がんマウスの延命効果が認められる傾向にあった。また、健常マウスへの影響(体重減少などの副作用)は見られなかった。担がんマウスあるいはセサモールおよびセサモール誘導体処理による担がんマウスから血清を回収し、解糖系、TCAサイクル、核酸代謝、尿素サイクル、脂肪酸代謝など代謝物質を測定した。その結果、担がんマウスと比較してセサモールおよびセサモール誘導体処理による担がんマウス、特に解糖系及びTCAサイクルにおいて健常マウスまで回復傾向にあった。更に、がんに関与する生命維持活動に必要な代謝物質との関係性も明らかにする必要が課題として残った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在まで、私はK562細胞あるいはK562/DOX細胞を用いてセサモールおよびセサモール誘導体のアポトーシス誘導(抗がん作用)に着目し、構造活性相関におけるアポトーシス誘導(抗がん作用)の機能解明を行った。①タンパク質の網羅的な解析をLC MS/MSを用いて行った。その結果、セサモール及びS3によるアポトーシス誘導に共通して増減する複数のタンパク質を同定、定量した。②セサモール誘導体の合成と評価:-OH、-NH2基以外の官能基を持つセサモール誘導体を合成し抗酸化作用の評価電気化学検出法により評価した。S3(-NH2)>>セサモール(-OH)>S2(-OCH3)=S1(官能基無)の順で酸化還元活性が有り、アポトーシス誘導の結果と一致していた。③セサモール及びS3処理の毒性評価を不死化ヒト肝細胞を用いて行った。未処理群と比較して細胞死や形態的変化などは見られなかった。④in vivo 評価の解析:セサモールおよびS3処理による担がんマウスへの延命効果や健常マウスへの影響(副作用など)を調べた。昨年、担がんマウスを作製後、セサモールおよびS3を腹腔内投与に投与し延命効果(抗腫瘍効果)を検討した。対照群(生理食塩水投与)と比較したが、有意差が認められなかった。今年度は投与計画(投与容量、投与回数、投与間隔等)を見直した。その結果投与群において延命の傾向が見られた。マウスから血清を回収し、解糖系、TCAサイクル、核酸代謝、尿素サイクル、脂肪酸代謝などの代謝物を測定した。解糖系およびTCAサイクルにおいて健常マウスまで回復傾向にあった。しかしながら、がんに関与する生命維持活動に必要な代謝物質との関係性が不明瞭であったため、明らかにする必要が課題として残った。
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今後の研究の推進方策 |
予定していた研究計画が当初の予定よりもやや遅れている。研究に必要な試薬などの入荷やin vivo 評価の実験が予定通りに進まなかった等が遅れの要因であった(分子間相互作用を測定する消耗品、in vivo実験の計画の見直し等)。今後、次のことを明らかにする①タンパク質の網羅的な解析(結果から、タンパク質の相互作用の強さをSPR法により検討する。②追加の毒性評価の解析:毒性評価は、正常細胞としてラット由来の胸腺細胞を使用する。→ ラット(オス、8-12 weeks、Wistar)から取り出した胸腺細胞を用いてプロピディウム染色によるフローサイトメーター法により測定し、細胞致死率と細胞シュリンク率により評価する。更に幹細胞以外の不死化ヒト細胞を用いてセサモール及びS3処理の細胞毒性評価を評価する。③in vivo 評価の解析:担がんマウスを作製後、セサモールおよびS3を腹腔内投与に投与しドラッグデリバリーシステムを用いてがん組織に特異的に集まる様に検討する。また、がん組織の化合物濃度および血中濃度も測定し抗がん作用があるか確認する。効果が認められたら担がんマウスから血清を回収し、解糖系、TCAサイクル、核酸代謝、尿素サイクル、脂肪酸代謝などを対照群(生理食塩水投与)と比較して測定する。また、同時に健常マウスへの影響(副作用など)も調べる。以上の結果を用いてがん細胞に対するセサモールおよびセサモール誘導体の構造活性相関におけるアポトーシス誘導(がん細胞増殖抑制)の機能解明を行う。
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