研究課題/領域番号 |
20K05885
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 小山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
笹沼 いづみ (佐々木いづみ) 小山工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (70270220)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | β-グルコシダーゼ / オートファジー / 神経変性疾患 / β-配糖体 / β-グルコシダーぜ / 配糖体化合物 / 神経変疾患 / iPS細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
β-グルコシダーゼ(GBA)はリソソームに存在し、オートファジーにおいて重要な役割を果たしている。脳神経などの非再生組織では、オートファジーの機能低下が著しく、神経変性疾患を引き起こすことが知られている。特に、脳神経に必須なスフィンゴ脂質の代謝はGBAによるオートファジーで行うことから、脳神経にGBAは必要不可欠な酵素である。これまでの研究で、ヒトGBAが植物のポリフェノール及びステロイド配糖体に誘導されることを見いだしている。そこで、本研究では植物の生産するステロイド及びポリフェノール配糖体化合物を用いて、GBAを誘導することで、神経のオートファジーの機能を向上させることに挑戦する。
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研究実績の概要 |
令和4年度までは、iPS細胞とゴーシェ病患者由来iPS細胞(GD-iPS細胞)から誘導した神経とグリオブラストーマを用いて、山芋のステロイドであるジオスシン、ジオスゲニン、コリアジャポニンのオートファジーとGBA活性に与える影響を評価した。その結果、山芋のステロイドは配糖体(ジオスシン、コリアジャポニン)の方が高いオートリソソーム形成活性を誘導することが明らかになった。また、この誘導は神経に分化した細胞の方がより高いことが認められた。GBAの誘導はiPS細胞ではアグリコン(ジオスゲニン)で高く、神経の細胞(神経誘導iPS細胞、神経誘導GD-iPS細胞、グリオブラストーマ)では、配糖体(ジオスシン、コリアジャポニン)で高いGBA誘導が認められた。さらに、アグリコン(ジオスゲニン)は1,25D3-MARRSの活性化し、配糖体(ジオスシンとコリアジャポニン)はmTOR経由でオートファジーを活性化させると考えられた。令和5年度はオートファジー阻害剤であるクロロキンと陽性コントロールであるラパマイシンを用いて実験条件を確認しながら、オートファジーの測定を行った。また、LPSで炎症を誘導し、炎症下での山芋ステロイドの神経誘導iPS細胞におけるオートファジーとGBA活性に与える影響を評価した。その結果、GBA活性はジオスゲニン(150 %)、ジオスシン(120 %)、コリアジャポニン(110 %)により上昇した。オートリソソーム形成活性はコリアジャポニン(180 %)とラパマイシン(240 %)で上昇し、ジオスシン(70 %)で低下した 。GBA活性はラパマイシン以外の全ての添加物で上昇した。特にジオスゲニンで活性が高く、ジオスシンとコリアジャポニンは同程度の活性を示した。ジオスゲニンはアグリコンであり、ジオスシンとコリアジャポニンは配糖体である。よって、炎症下でのGBAの活性化にはアグリコンに糖が結合することが立体障害となることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度までに、iPS細胞とゴーシェ病患者由来iPS細胞(GD-iPS細胞)から誘導した神経とグリオブラストーマを用いて、山芋のステロイドであるジオスシン、ジオスゲニン、コリアジャポニンのオートファジーとGBA活性に与える影響を評価し、令和5年度はオートファジー阻害剤であるクロロキンとオートファジーの陽性対照であるラパマイシンを用いて実験条件を随時確認しながら検討を行った。また、LPSで炎症を誘導し、炎症下での山芋ステロイドの神経誘導iPS細胞におけるオートファジーとGBA活性に与える影響を評価した。非炎症下ではGBA活性はジオスゲニン(コントロールに対し130 %)、ジオスシン(120 %)、コリアジャポニン(105 %)により上昇した。オートリソソーム形成活性はコリアジャポニン(170 %)とラパマイシン(220 %)で上昇し、ジオスゲニン(50 %)で低下した。炎症下ではGBA活性はジオスゲニン(150 %)、ジオスシン(120 %)、コリアジャポニン(110 %)により上昇した。オートリソソーム形成活性はコリアジャポニン(180 %)とラパマイシン(240 %)で上昇し、ジオスシン(70 %)で低下した。このように、コリアジャポニンのGBA誘導については炎症下でむしろ活性が上昇する傾向があった。また、昨年度の研究ではコリアジャポニンが最もGBAを誘導していたが、今年度はアグリコンであるジオスシンより低い値となった。これは、iPS細胞の神経分化が不完全だったことが考えられた。よって、この実験の再現性を高めるため、さらなる実験が必要になった。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度はオートファジー阻害剤であるクロロキンとオートファジーの陽性対照であるラパマイシンを用いて実験条件を随時確認しながら検討を行った。また、LPSで炎症を誘導し、炎症下での山芋ステロイド(ジオスゲニン、ジオスシン、コリアジャポニン)の神経誘導iPS細胞におけるオートファジーとGBA活性に与える影響を評価した。コリアジャポニンのGBA誘導については炎症下でむしろ活性が上昇する傾向があった。また、令和4度の研究ではコリアジャポニンが最もGBAを誘導していたが、今年度はアグリコンであるジオスシンより低い値となった。これは、iPS細胞の神経分化が不完全だったことが考えられた。よって、令和6年度は神経マーカーを用いて神経分化の段階を確認すると同時に、神経分化における山芋ステロイドサポニンの影響について検討を行う。すなわち、これまでは神経誘導培地で神経幹細胞に分化させ、神経幹細胞マーカーで神経分化を確認し、神経拡張培地に山芋ステロイドサポニンを添加して培養後、オートファジーとGBA活性を測定していたが、今年度は、神経拡張培地で成熟神経とした後、神経マーカーで分化を確認し、神経を培養する培地に山芋ステロイドを加えて培養後、オートファジーとGBA活性を測定する。このことで、成熟神経における山芋ステロイドの効果について検討できる。さらに、この成熟神経にLPSで炎症を誘導して、神経を老化させ、山芋ステロイドの効果を検討する。
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