研究課題/領域番号 |
20K05912
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
石川 洋哉 福岡女子大学, 国際文理学部, 教授 (00325490)
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研究分担者 |
金田 弘挙 九州産業大学, 生命科学部, 教授 (50802493)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 抗酸化成分 / 香気劣化抑制 / 超高速GC / 超高速GC分析 / 香り分析 / 抗酸化 / 香り劣化 / 食品品質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、抗酸化物の相乗効果を活用して食品の香り劣化を制御し、真に「おいしい」食品の創造を目指す。具体的には、抗酸化物を併用して食品香気の劣化抑制を試み、多面的な香り分析により香気プロファイル変化挙動を確認、得られた情報をMedian effect analysis(併用効果解析、独自適用)により解析し、香り劣化を相乗的に抑制する超効率的な抗酸化物の組み合わせを見出す。さらに、実食品への展開を想定し、リアルタイムな香りの動的挙動を解析、抗酸化物の相乗効果を活用した香り制御技術の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、食品香気プロファイルの動的変化挙動を解明し、複数抗酸化物併用による香気劣化制御を試みることにより、科学的根拠に基づく新規香気劣化制御技術を新たに提示するものである。具体的には、超高速GCとにおい嗅ぎGCMSを用いて、ハーブ精油香気の劣化抑制を試み、レモングラス、ローズマリー精油の酸化抑制試験を前年度に引き続き実施した。本年度は特に、ピロカテコール、ピロガロールなどの化合物を用いて、酸化劣化抑制に及ぼすポリフェノール部分構造の寄与度を確認した。これまでの研究により、レモングラス精油5成分、ローズマリー精油4成分の酸化劣化に対して、ロスマリン酸とケルセチンは極めて高い劣化抑制効果を示すことが明らかになっていたため、本年度はそのメカニズムに関する基礎的知見の獲得を試みた。ロスマリン酸やケルセチンに含まれる構造因子として特に、カテコール構造の重要性が考えられたことから、ピロカテコールの活性寄与を確認するとともに、類似構造であるピロガロールの影響も検討した。その結果、ピロカテコールがピロガロールの約3倍の強い活性を示すことが判明した。さらに、ピロカテコールは、ロスマリン酸の総活性の1/2倍の寄与度を示すことが確認され、ロスマリン酸およびケルセチンの活性に対してカテコール構造が極めて大きな要因となっていることが確認された。続いて、ロスマリン酸を中心に各種抗酸化物との併用効果の検討を行った、没食子酸が、ロスマリン酸との併用を行うことで、高い相乗効果を発現することが確認された。中でも、γ-テルピネン、β-カリオフィレン、ネラール、ゲラニアールでは、ミリセチンや没食子酸などの疎水性の低い抗酸化物と組み合わせることで、強い相乗効果を示すことが確認された。一連の結果は、食品香気の劣化制御において、極めて重要な知見であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度に引き続き、本年度も、コロナウイルスの影響により、研究機関である大学への入構制限、研究実施制限などが行われ、研究の進行が遅れたため、予定の研究が完了しなかった。コロナウイルスによる制限が緩和された後は、研究が実施され、本年度は、レモングラス、ローズマリー香気成分の劣化抑制に関して、そのメカニズムに関する新たな知見も獲得された。様々な抗酸化物による主要香気成分の劣化抑制挙動を超高速GCシステムにより確認し、さらに抗酸化物の併用試験を実施することが出来た。進捗は遅れたものの、研究開始後は、一定の成果を上げており、レモングラス・ローズマリー精油の香気劣化に対する各種抗酸化物の抑制挙動を確認することが可能であった。結果として、抗酸化物ごとの香気劣化抑制に及ぼす主要因を特定することが出来た。さらに、各種抗酸化物の併用による香気劣化抑制試験を継続して行っている段階であり、次年度延長して試験を行い、より詳細なメカニズムの検証を進めていく予定である。研究の方向性そのものは修正の必要はないものと判断している。 以上、2年連続のコロナウイルスの影響により、当初の計画よりも研究の進捗は「遅れている」と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの研究成果を基に、超高速GC分析によるレモングラス香気成分の劣化抑制に及ぼす要因のさらなる解明、各種抗酸化物の併用試験を継続して進めるとともに、研究の進展に応じて他のハーブ香気成分(レモンバーム、ペパーミントなど)に対象を広げことを予定している。さらに、抗酸化成分2成分を併用した場合の香気劣化抑制挙動もさらに詳細に検討する予定である。Median effect analysisにより、抗酸化物2成分の相乗効果の発現挙動をさらに詳細に検討する。一方で、におい嗅ぎGC-MS分析を実施することにより、抗酸化物による香気成分抑制挙動を香りの「質と強度」の面から詳細に検討するとともに、実食品への展開を視野に入れ、DART-MSによる香気劣化抑制挙動のリアルタイム測定あるいは、PTR-TOFの適用などを試みる予定である。一連の解析を通じて、効率的な食品香気の劣化抑制手法の確立が可能になると考えられる。
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