研究課題/領域番号 |
20K05916
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 山陽学園短期大学 |
研究代表者 |
廣田 幸子 山陽学園短期大学, その他部局等, 教授 (00312140)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | プロシアニジン / 澱粉消化 / タキシフォリン / タカキビ / cyanidin 3-O-glucoside / アミロース / 豆類 / 亜硝酸 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、健康志向に伴い雑穀を入れた飯が好まれている。この中には小豆や黒豆が用いられ、これらの豆と共に米を炊飯すると、炊き上がった飯は着色している。申請者は、フラボノイドが澱粉と結合することにより澱粉消化を抑制できることを示してきた。そこで小豆ならびに黒豆に含まれるプロシアニジンが、加熱調理の過程で澱粉と強く結合すれば、小腸での澱粉の消化速度が遅くなると予想した。この仮説を確かめるために、豆と共に炊飯した飯を主な試料として研究を進めていく。さらに、プロシアニジンが、胃腔条件で唾液由来の亜硝酸と反応して澱粉と結合し、その澱粉の消化速度を抑えることを予想して研究を進めていく。
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研究実績の概要 |
米をアズキとともに炊飯した飯は淡赤色である。この淡赤色は、アズキ種皮に含まれるプロシアニジンおよびその反応産物によるものであった。アズキのプロシアニジン類は、炊飯中に高アミロース米のアミロースと結合し、その消化を抑制できることを示した。炊飯したクロマメの飯は薄紫となり、この着色は、クロマメ種子に含まれているシアニジン 3-O-グルコシド (cyanidin 3-O-glucoside : C3G)およびプロシアニジンの結合によるものであり、この結合によってアミロースの消化が抑えられることを示した。クロマメ成分は、アミロースの分解をより効率よく分解できることを確かめる実験では、クロマメ抽出物がパンクレアチン依存の澱粉分解をもち粉よりも上新粉で顕著に抑制できることがわかった。この実験でクロマメ成分がアミロペクチンよりもアミロースの消化をよりよく抑制できることが証明された。さらに、クロマメ成分のC3Gおよび二量体プロシアニジンB2(ProB2)を用いた実験から、C3GとProB2が協働してアミロースの分解を抑制できることを示した。続いて、三量体プロシアニジンC1(ProC1)のジャガイモ澱粉およびトウモロコシ澱粉の分解に対する影響を調べた結果、ProC1は長いアミロースを含むジャガイモ澱粉の分解をより強く抑制できることがわかった。 試料で用いる米や米粉はその糊化や老化に伴って澱粉が浸出し、浸出澱粉は、アミロースとアミロペクチンで構成されている。加熱米粉と加熱米粉団子の懸濁液をパンクレアチンで処理した場合、いずれの澱粉が分解されやすいかを調べた。アミロペクチンに富む澱粉は短いアミロースとの混捏課程で加熱により分解の遅いアミロース/アミロペクチン複合体が形成されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上新粉をプロアントシアニジンを含むソルガム種子の水抽出液中で加熱し、可溶性澱粉と懸濁性澱粉のパンクレアチンよる消化を調べた。ソルガム水抽出物は、可溶性アミロースの分解を抑制し、この抑制は、プロシアニジン/アミロース複合体形成によるものと推定した。さらに、ソルガム抽出物は上新粉からパンクレアチンの作用で遊離した懸濁性澱粉粒子の分解も抑制し、その抑制は、アミロース/プロシアニジン複合体によるアミロペクチン分解抑制であると議論した。次に、ソルガム種子に多量に含まれるタキシフォリンを上新粉とジャガイモ澱粉と共に加熱した場合の消化抑制機構を検討した。パンクレアチンによる澱粉加水分解は、その添加直後ではがわずかに遅くなったが、一定時間のインキュベーション後には、上新粉の懸濁性澱粉とジャガイモ澱粉の可溶性澱粉の加水分解が遅くなった。この実験の過程で、加熱によりタキシフォリンからケルセチン等が形成されることが分かり、形成されたケルセチン等は、上新粉の懸濁性澱粉とジャガイモ澱粉の可溶性澱粉に結合した。上新粉とジャガイモ澱粉との間のタンパク質含有量とアミロース鎖の長さの違いを考慮して、タキシフォリンによる澱粉分解速度の低下は、ケルセチン等が、上新粉の場合その懸濁性澱粉に存在するタンパク質に、ジャガイモ澱粉の場合その可溶性澱粉に結合したためであると考察した。そこで、タキシフォリンからのケルセチンの生成機構を検討した。ケルセチンの生成に伴って、タキシフォリンの異性体も同時に生成することが分かった。異性体の生成機構に関しては二つの報告があり、その報告に基づいて、タキシフォリンは次のようにケルセチンに変換すると仮定している(タキシフォリン→ キノンメサイド→ タキシフォリンカルコン→ ケルセチン)。これに関しては、現在投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
予定していた実験は3月にほぼ完了し、現在open accessの雑誌に投稿中である。審査結果によっては、追実験が必要になることもある。 また、3月より、ソルガム種子の抽出液を上新粉、もち粉、ジャガイモ澱粉、トウモロコシ澱粉と加熱し、加熱した試料を遠心分離により画分し、どの画分にソルガム種子のプロシアニジン等が多く含まれ、どのソルガム成分が澱粉に結合しやすいかを調べている。この実験に続いて、パンクレアチン処理によって、上記試料に結合したどのソルガム成分が遊離しやすいかも調べていく予定である。上の試料間には、タンパク質含有量、アミロース含有量、アミロース鎖の長さ等に違いが見られる。そこで、現在進行中の実験によって得られた結果と今まで得られた結果から、ソルガム成分による澱粉消化速度低下のメカニズムが統一的に理解できるようになると予想される。
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