配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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研究実績の概要 |
昨年度までの研究で,伊豆諸島沿岸部に自生するガクアジサイ野生集団が, 葉身にNaイオンを蓄積させていることを明らかにした. しかし, ガクアジサイがどのように自生地環境に適応しているかはほとんど明らかにされていない. そこで本年度の研究では, ガクアジサイ野生種の育種素材としての更なる利用に資する包括的な環境適応性を明らかにするため, これまで園芸品種の育種への利用が少なかった伊豆諸島集団の自生地の標高と海岸線からの距離, 気象情報, 土壌Naイオン量, 植物形態, 葉身のNaイオンおよびKイオンの量等を調査した. その結果,伊豆大島と八丈島のガクアジサイは, 海岸線から10-100 m程度離れた所に広く分布しており, 一部は2-3 km離れた内陸部にも自生していた. 落葉は沿岸部に自生する集団で特に著しかったが, 同じ沿岸部であっても落葉の程度が弱い集団も存在した. 植物の塩ストレスに関係する自生地の年平均降水量は3,000 mm, 年平均風速は5.0 m/s程度であり, 伊豆半島の2,000 mm, 3.5 m/sというデータと比較しても2島において厳しい環境下で生育していることが示唆された. 土壌と葉身のイオン分析より, 沿岸部土壌および沿岸部集団の葉身の両方で他の植物であれば生育に悪影響を及ぼす程度のNaイオンの蓄積があることが示され, さらに葉身のNaイオン量は先行研究と同様に沿岸部集団でより多かった. これは他の植物が生育を維持することが難しい塩ストレス環境下にガクアジサイが適応性を持つことを示唆した. 以上のことから伊豆諸島のガクアジサイ集団は伊豆半島と比較し, 異なる環境で生育している集団が多く, 今後のアジサイの育種に寄与する可能性が考えられる.
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