研究課題/領域番号 |
20K06038
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39030:園芸科学関連
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
米森 敬三 龍谷大学, その他部局等, 研究員 (10111949)
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研究分担者 |
西山 総一郎 京都大学, 農学研究科, 助教 (50827566)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 果樹 / カキ / 渋味 / タンニン細胞 / 蓄積制御 |
研究開始時の研究の概要 |
プロアントシアニジン(PA)はカテキンやエピカテキンなどのフラバン-3-オールの重合体で、カキの渋味を呈する縮合型タンニンの骨格となる成分であり、カキ果実では果肉柔細胞の異形細胞であるタンニン細胞の液胞中にのみ、このPAポリマー(タンニン)が多量に蓄積され、その蓄積過程の差異によって、完全甘ガキの品種群と完全甘ガキ以外の品種群(完全渋ガキ、不完全甘ガキ、不完全渋ガキ)が生じる。本研究では、タンニン細胞はどこから分化するのか、カキ果実中のタンニンはなぜタンニン細胞のみに蓄積するのか、タンニン蓄積を制御する要因は何か、などの点を解明するために、組織学的手法を用いた実験を計画している。
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研究実績の概要 |
カキ果実の渋味成分は縮合型タンニンであり、カテキンやエピカテキンなどのフラバン-3-オールを構成成分としたプロアントシアニジン(PA)のポリマー(重合体)である。カキ果実では、このPAポリマーはタンニン細胞と呼ばれる異形細胞の液胞中に蓄積される。ただ、このPAがなぜタンニン細胞にのみ特異的に蓄積されるのか、モノマーであるフラバン-3-オールがどのような機作で重合されて縮合型タンニンとなるのかという点は明らかになっていない。さらには、タンニン細胞はいつ、どのような過程で果実柔細胞中に分化するのかという点も不明である。一方、タンニン細胞中のタンニン蓄積過程には、カキ品種群によって大きな差異があり、果実発育初期にその蓄積が停止する完全甘ガキ品種群と、果実発育後期までその蓄積が継続する完全甘ガキ以外の品種群(完全渋ガキ、不完全甘ガキ、不完全渋ガキ)に分類することができるが、このタンニン蓄積を制御する原因遺伝子に関しては現在までほとんど明らかにされていない。昨年度までは、FIB-SEMやTEMを用いたタンニン細胞の組織学的・形態的特性を中心に調査することで、タンニン細胞の分化過程やタンニン蓄積過程の解明を試みたが、本年度は昨年度予備的に調査した交雑育種集団から生じた渋味の強い完全甘ガキ個体を用いて、果実内のタンニン細胞数やPA生合成関連遺伝子群発現の差異を調査することで、PA生成やPAポリマーの蓄積を制御する機構の解析を試みた。まだコロナ禍の影響が残り、十分な実験計画を実行する事は困難であったが、タンニン細胞数や渋味発現の差異の原因となる候補遺伝子を見出すことが出来た。今後、これらの候補遺伝子と渋味発現機構、タンニン細胞発生とFIB-SEM・TEM観察との調査結果などの関連を解析し、タンニン細胞の分化とその細胞へのPA蓄積機構について解析していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の新型コロナウイルス感染拡大による第7波と第8波の到来やオミクロン変異株の出現などを経て、新型コロナウイルス感染症の発生が低く推移するようになり、その位置づけが本年度5月8日に「5類感染症」に移行されて規制が引き下げられた。ただ、やはりその沈静化にはさらなる時間が必要であったため、計画通りに研究が実施出来なかった点が現在までの進捗状況が若干遅れているとする理由の主な要因である。さらに、研究分担者が国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))の採択により、昨年度から本年度9月末までの1年間、アメリカへ渡航していたことも本研究の遅れにつながった一つの理由にあげることが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、これまでの甘渋性判別マーカーからは完全甘ガキであると判別できる、交雑育種集団から生じた渋味の強い個体に関してさらなる調査を進めたところ、遺伝子型からは完全甘ガキであることが確認でき、また、通常の完全甘ガキ個体と比較するとかなり強い渋味を有することも確認できた。そこでこの個体のPA生合成に関与するとされる調節遺伝子の発現および果実内のタンニン細胞数を調査したところ、通常の完全甘ガキ個体と差異があることが判明した。さらに、網羅的な遺伝子発現調査から、細胞間の情報伝達や細胞分裂に関連すると考えられるいくつかの遺伝子の発現に差異があることが示唆された。そこで今後は、FIB-SEMやTEMで確認されたタンニン細胞の形態的特性である、タンニン細胞の細胞壁の開口部を通してのタンニン細胞同士の連結とこれら遺伝子発現の関係を解析することで、タンニン細胞の分化機構の解明に近づきたいと考えている。さらに、完全甘ガキと非完全甘ガキの間でのPAポリマー(縮合型タンニン)の蓄積制御に関与する遺伝子の同定のための解析も実施していきたい。
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