研究課題/領域番号 |
20K06073
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
秋野 順治 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 教授 (40414875)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 同巣認識 / 羽化後経験学習 / 体表炭化水素 / 不飽和炭化水素 / 里子里親 / 氏より育ち / キャロウ / 体表炭化水素組成 / 体表炭化水素組成比 / 同巣認識フェロモン / 自己認識 / 他己認識 / フェロモン |
研究開始時の研究の概要 |
家族集団で社会生活を営むアリでは、同巣仲間による世話を受けつつ成虫が成熟していく過程で集団への帰属意識が構築され、その認識に体表炭化水素が関わっている。本課題では、新羽化成虫の羽化後日齢に伴う「成熟他個体に対する行動応答」と「体表炭化水素組成」の変容をそれぞれ検証し、帰属構築に寄与するであろう「自己・他己認識」の形成過程を解明するとともに、世話役の同巣仲間から受容した化学情報がその認識能の形成過程に及ぼす影響を明らかにする。
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研究実績の概要 |
クロヤマアリの新羽化成虫における巣仲間認識能力獲得形成のメカニズム解明を目的として、自巣内での発育に伴う行動の変容と人工的飼育条件下での行動の変容を検証した。 自巣内での発育に伴う行動の変容:羽化後0日、1日、2日、3日、4日、14日齢の新羽化成虫(キャロウ)による異巣・同巣の成熟ワーカーへの応答、および異巣・同巣成熟ワーカーによる各日齢キャロウに対する応答を検証したところ、羽化後4日齢及び14日齢キャロウは異巣ワーカーに対してのみ顕著な攻撃性を示した。一方、キャロウに対する成熟ワーカーの行動応答では、羽化後4日齢の異巣キャロウに対する排他的な振る舞いは顕著にではなかったが、羽化後14日齢の異巣キャロウに対しては顕著な排他性を示した。この結果は、キャロウが自らの帰属を認識するようになるには羽化後4日の期間を要すること、そのキャロウの帰属性を成熟ワーカーが識別できるようになるには4日以上14日未満の期間を要すること、つまりこれら二つの認識成立時期が明瞭に異なることが判明した。 そこで羽化間もないキャロウ(出自は同じ)を隔離飼育し、その飼育容器内に母巣成熟ワーカーのCHCを処理した実験区Aと、異巣成熟ワーカーのCHCを処理した実験区B、CHC処理を施さない大正区Cを設け、隔離飼育後のキャロウによる同巣・異巣ワーカーに対する行動応答を比較した。その結果、顕著な攻撃行動までは認められなかったが、実験区Aのキャロウは巣Aワーカーに親密性、巣Bワーカーに排他性を示す一方、実験区Bのキャロウは巣Aワーカーに排他性、巣Bワーカーに親密性を示すこと、対照区Cのキャロウは巣ABいずれのワーカーに対しても親密性を示した。これは、羽化直後の一定期間内におけるCHC化学受容経験がその後の巣仲間認識能形成を引き起こしていること、学習が成立しない場合生得的性質として親密性を示すことを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工的な化学経験の与え方に関しては、先行事例がないため独自の試験系で行うことになったため、隔離飼育環境中を化学刺激で満たすという方針で試験をおこなったが、実際の行動相互作用を考えると、キャロウが給餌される際に、積極的な化学経験ができるような仕組みを導入できれば、より顕著な排他性を示すようになった可能性はある。ただ、内役ワーカーの攻撃性は外役ワーカーよりも低いことから、羽化後経験学習をしたばかりのキャロウの攻撃性はそこまで顕著には上昇しないものである可能性もあるが、その点についての検証を加える必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
学習のための化学刺激の提示法として、隔離個体が採餌・採食するときにより高濃度でCHCにふれるような条件を設定し、学習効率の向上が認められるのかを検証すると同時に、実験場の副産物として、成熟ワーカーでも隔離飼育することで攻撃性が低下する傾向が確認できたことから、1)隔離飼育が巣仲間認識能の低下をひきおこすのか、2)社会的接触が社会的能力=巣仲間認識能力の維持に必須なのか、3)その接触は物理的な個体間での遭遇を指すのか、化学経験をさすのかーという点について追加検証をおこなう。当初の研究目的では、新羽化個体における化学経験の重要性に焦点をあてていたが、成熟ワーカーにも拡大して、継続的な化学経験の重要性についても検証を進めていく。
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