研究課題/領域番号 |
20K06079
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
深谷 緑 日本大学, 生物資源科学部, 研究員 (80456821)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 寄主選択 / 植物揮発成分 / 産卵選択 / 視覚依存性 / 嗅覚定位 / 環境適応 / 表面構造 / 表面粗さ / 寄主選好性 / 視覚 / 振動感覚 |
研究開始時の研究の概要 |
食植性昆虫の後天的な寄主選好性決定メカニズムを、寄主揮発成分(嗅覚要因)等成虫が利用する感覚情報に着目し検証する。 材料の1つとするゴマダラカミキリは汎食性であるが、発生樹種により成虫が好む揮発成分が異なる事が知られる。本研究では本種の草本発生成虫に着目、木本(本種の主要寄主群)より発生した成虫との各種感覚情報への行動反応の違いを明らかにする。次に揮発成分選好性の決定の時期・条件、また原因(形態・生理的変化、学習等)を検証、さらに視覚等の非化学的情報に対する行動反応の差違と、その発生機序を探る。以上などから食植性昆虫の各種感覚情報への依存性変化と寄主植物・環境への適応の関係の解明を試みる。
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研究実績の概要 |
食植性昆虫の寄主依存性、寄主転換と環境適応の関係を明らかにすることを目指し研究を進めてきた。寄主選択・利用には、様々な要素・段階が介在するが、本研究では特にカミキリムシ等の定位・定着、配偶行動、産卵選好性における生態情報利用と環境としての寄主植物の関係に着目してきた。材料のひとつゴマダラカミキリ成虫は幼虫期の寄主樹木の匂いを好むことが知られる。一方、本種は広食性であるが草本植物の中で唯一イタドリを寄主として利用する。樹木発生個体とは異なり、イタドリからの発生成虫は非発生寄主の匂いにもよく定位するなど。イタドリ発生成虫の利用成分と反応特性、さらに樹木発生個体に比した振動・視覚要因への依存性の高さなどから、イタドリ発生の本種は樹木発生の本種とは異なる生活史戦略・配偶戦略をとることが明らかになってきた。なお発生個体の小型化などから、イタドリは寄主樹木環境悪化時の緊急避難的な寄主であると推測してきたが、イタドリ・樹木発生雌のイタドリへの産卵選好性などから、じつはイタドリが短期的には生育に適した環境であり、”積極的な選択肢”である可能性が浮上した。 このほか本研究では、複数の侵略的外来種の生態を調査し、さらに寄主選好性に関わる要因の解析を行っている。特定外来生物クビアカツヤカミキリについては寄主上での産卵場所決定にかかわる要因を解析した結果、表面粗さを表す特定のパラメータと雌の産卵場所決定との関わりなども明らかになってきた。 カミキリムシ類の寄主選択は、寄主の物理要因や植物への遭遇時期などがかかわること、また有る世代から従前とは異なる性質の寄主に移行することで生活史も変化する。すなわち寄主環境への適応が、生息地でその系統にとって有利となるときに、永続的に新寄主での生活が定着するものと推測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020-21年度には新型コロナ感染拡大の影響により研究室利用、研究材料調達、協力者との連携、また調査のための遠征などに支障が発生し研究に遅れが生じた。また2021年度は採集地の環境激変により一部計画が予定年度の実施が不可能となり計画を変更した。これらの問題は2021年以降、年度が進む毎に徐々に軽減・解決し、臨時雇用者・研究協力者の助力、また新規の材料・県外調査地の開拓調査が奏功したことなどから、研究は徐々に加速した。以上のように2023年度までに興味深い知見を得てきたものの、コロナ禍の影響などによる研究計画の遅れを完全に取り戻すまでには至らなかったことから、研究過程の一部を2024年度に行うこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究過程で残された課題、また浮上した疑問を解決するための調査・実験を予定している。ゴマダラカミキリでは幼虫の草本寄主内部での移動・発生に関する調査を行う。またこれまで進めてきた外来カミキリの寄主利用、とくに産卵・食樹間移動などの調査において仮説検証のための追加調査を行う。一方、宮古島のある種のコガネムシの情報利用システムについてすでに深谷らが様々な報告を行っていたが、調査地と、調査地以外の同島内の同種とは、寄主・情報依存性などが著しく異なる可能性がごく最近浮上した。現地調査を行い、発生動態、寄主選択の後天的・遺伝的背景を検討する予定である。以上などの実験・調査のほか、2024年度にはこれまでにえた実験・調査によるデーターの統合解析を進め、研究成果公表・論文の準備、投稿などを行う予定である。
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