研究課題/領域番号 |
20K06080
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
後藤 彩子 甲南大学, 理工学部, 准教授 (70734680)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 精子貯蔵 / 受精嚢 / 女王アリ / アリ / 繁殖戦略 / 社会性昆虫 |
研究開始時の研究の概要 |
社会性ハチ目昆虫(アリ、ハチ)では、女王は羽化後まもない時期にしか交尾しないため、この時に受け取った精子を体内の「受精嚢」の中に寿命が続く限り貯蔵する。アリ科の多くの種の女王の寿命は10年以上と昆虫としては例外的に長寿のため、精子貯蔵期間も10年以上と極端に長いと言えるが、そのメカニズムは長い間不明であった。本研究では、精子が貯蔵される微小空間である受精嚢リザーバー内の化学的な性質を調べた後、それらのどの因子が精子の生存に寄与するか、また、寄与するのであれば具体的に精子の生理状態にどのように影響しているかを明らかにすることで、アリ科女王の長期間の精子貯蔵メカニズムの解明を目指す。
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研究成果の概要 |
多くの種の女王アリでは、交尾後に、オスから受け取った精子を受精嚢の中で10年以上にもわたって保存することが知られている。本研究では、この長期間の精子貯蔵メカニズムを探るため、精子が貯蔵される微小空間である受精嚢リザーバー内の環境に着目した。その結果、受精嚢リザーバー内がほぼ無酸素環境であり、これが貯蔵精子の不動化を引き起こしていることを明らかにした。さらに、人為的に作り出した無酸素環境下では、有酸素環境下よりも精子の生存率を高く維持できた。このことから、受精嚢内のほぼ無酸素環境が、長期間の精子貯蔵メカニズムの鍵のひとつであるといえる。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
女王アリが受精嚢内で、非自己であるオスの精子を常温のままで10年以上生存させる現象は、細胞生物学の常識を覆すものである。また、アリ科女王の精子貯蔵能力は極めて特殊であり、高度な社会性をもつアリの繁殖戦略を考える上でも興味深い。 現在、畜産や不妊治療の現場では、家畜やヒトの精子は液体窒素により凍結されて保存されている。女王アリは、液体窒素を使わなくとも常温で長期間精子を貯蔵できるため、女王アリの特殊な精子貯蔵メカニズムが完全に解明されれば、将来、家畜やヒトの精子も低エネルギーかつ高品質で保存できるようになるかもしれない。
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