研究課題/領域番号 |
20K06081
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
太田 広人 崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (60450334)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | カイコ / 摂食行動 / ドーパミン受容体 / GPCR / 農薬 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、カイコのドーパミン(DA)受容体(BmDopR1-4, BmEcDopRの5種類)の細胞内シグナリングを明らかにするとともに、どのサブタイプが、カイコの摂食行動を調節しているのかを、ゲノム編集技術を用いて幼虫個体レベルで実証する。加えて、個々のDA受容体に特異的に作用する化合物の探索も進める。特異的化合物の発見は、DA受容体をターゲットとした新規害虫防除剤や、シルク・有用組換えタンパク質の品質・生産性の向上を目的とした新たな人工飼料の開発につながる。
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研究実績の概要 |
カイコの摂食行動を制御しているドーパミン(DA)の受容体解析を進めてきた。5種類存在するDA受容体のうちBmEcDopRについて、培養細胞発現系(HEK293とCHO-K1を利用)による機能解析を続けた。この受容体には2種類のアイソフォーム(ここではBmEcDopR-AとBmEcDopR-Bと呼ぶ)が存在するため、それぞれについて解析を行った。GPCRの主要シグナルであるcAMPとCaを検出するためのアッセイ系として、cAMPバイオセンサーアッセイおよびエクオリンCaアッセイを用いた。その結果、BmEcDopR-AはDA濃度依存的に細胞内cAMP量が増加することが分かった。一方、BmEcDopR-Bにはそのような機能は認められなかった。この結果から、AのみGs共役タイプであることが示唆された。Caシグナルに関しては、G15α(幅広いGPCRと共役でき、Caシグナルを誘発するGタンパク質αサブユニット)を細胞に共導入した場合、AとBともにCa応答を検出できたが、G15非存在下(つまり細胞内在のGqに依存した)だと応答は検出できなかった。以上のことから、BmEcDopRはcAMP応答型(Gs共役型)のDA受容体であること、またその機能発現の有無にアイソフォーム間の構造の違いが関与していることが分かった。 DA受容体とカイコの摂食行動との関係性を個体レベルで明らかにするために、昨年度に続き、ゲノム編集実験の装置のカスタマイズと条件検討、さらに安定したデータを得るための技術習得に努めた。しかし、我々だけではこれ以上の向上と進展は見込めないため、次年度は本手法に詳しい共同研究者に直接指導を仰ぎ、この難題に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
受容体遺伝子を導入するホスト細胞の種類などを検討しつつ、cAMPバイオセンサーアッセイ及びエクオリンCaアッセイを用いることで、BmEcDopRの細胞内シグナルを検出することができた。アイソフォームの構造の違いが機能発現(cAMPシグナルの有無)に影響を及ぼしている点は、想定外の成果である。これでBmEcDopRを加えた5種類のDA受容体の機能解析が完了した。 一方、ゲノム編集による個体レベルの実験は、装置のカスタマイズと条件検討、技術習得に終始しており、行き詰っている。もともと共同研究者による対面指導を前提とした実験計画だったので、コロナの影響が大きく関係してしまったことは否めない。しかし次年度はコロナによる行動制限はほぼ解消されるため、共同研究者の対面での指導を受けられるよう計画を検討し、ゲノム編集実験の進展に努める。
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今後の研究の推進方策 |
コロナの影響により遅れているゲノム編集実験に関して、経験のある共同研究者の対面指導を受けられるよう計画を進める。これまでの受容体薬理解析と注射実験の結果から、5種類のDA受容体のうちBmDopR2と3が摂食行動への関与が大きいと予想される。そのため、この2種類の受容体についてのゲノム編集実験を重点的に進める。1年の延長により、次年度が研究の最終年度となる。ゲノム編集実験がどこまで進められるか読めないところもあるため、これまでの受容体薬理データと注射実験のデータをもとに、摂食行動に影響を及ぼしている受容体サブタイプのさらなる絞り込みが可能かどうかなど、化合物のほうからの検証も再度行う。
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