研究課題
基盤研究(C)
多くの野生淡水魚の絶滅が急激に進んでおり、生態系バランス維持の観点から、それらの集団としての保全が重要である。体外受精を行う魚類では保全手段として配偶子の凍結保存が適していると考えられる。魚類精子の凍結保存法は確立されているが、卵子は多くの脂質等を含むため凍結保存が困難であり、実用的な方法が開発されていない。そこで本研究では、まず、絶滅危惧種である琵琶湖固有種ホンモロコ(Gnathopogon caerulescens)において免疫不全個体をゲノム編集により作製する。次に、凍結保存した生殖幹細胞・卵原細胞を免疫不全個体の皮下または卵巣へ移植して受精可能な卵子を形成させることを試みる。
絶滅危惧種の保全を目的とし、琵琶湖固有種ホンモロコ(Gnathopogon caerulescens)を用いて精原細胞の凍結保存、及び精子の完全in vitro培養を確立してきた。一方で卵子のin vitro培養に関しては、ある程度の成長は認められるが受精可能な卵子生産は困難であったことから生殖幹細胞の移植による卵子作製を目的とし、ゲノム編集による免疫寛容個体の作製を試みた。これまでにrag2ヘテロ変異体として(+7/wt)、(+8/wt)、(+2/wt)の3系統を確立することができた。これらは野生型wtとほぼ変わらない飼育が可能であった。ホモ変異体の作製のため、春に人工催熟を試みた。雄は例年通り性成熟が認められ、精子を生産したが雌では性成熟する個体数は少なく、成熟した個体も産卵しなかった。そこでホルモン注射による人工授精を試みたが得られた卵子は全て過熟卵であった。雌においては現在の実験室飼育環境下、及び人工催熟方法では性成熟に1年以上を有すると考えられた。昨年度、通常繁殖期とは異なる秋に人工催熟により両アリルにそれぞれ異なる変異を有するrag2変異体(+7/-4)を作製することができた。これらの育成を行い、wtと同様に飼育可能であったことから今回作製したrag2変異体は野生型WTと同様な飼育環境下での飼育維持が可能であることが明らかとなった。現在rag2ヘテロ変異体(+7/wt)、(+8/wt)、(+2/wt)およびrag2変異体(+7/-4)においてもwt同様の人工催熟を行い、メスと思われる個体においても腹部の膨大から性成熟の進行を確認している。rag2変異体(+7/-4)の性成熟が認められることからrag2ホモ変異体が卵子作成のための移植実験に使用可能であると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ順調にrag2ヘテロ(+7/wt)、(+8/wt)、(+2/wt)、および異なる変異(+7/-4)を有する変異体の育成が進行している。実験室における飼育環境下での人工催熟条件も確立し、ホンモロコが小型実験魚として研究室で利用可能であることを示した。一方でオスの人工催熟は比較的容易であるがメスの人工催熟が困難であり、現在の飼育環境下では性成熟に1年以上を有することがわかった。両アリルに異なる変異(+7/-4)を有する変異体がwtと同様に飼育、育成、人工催熟が可能であることから今回作製したrag2変異体はホモでの維持、世代交代も可能と考えられ、本研究の目的である卵子作製の宿主として移植実験に使用可能であることが示された。
人工催熟を継続し、rag2ヘテロ(+7/wt)、(+8/wt)、(+2/wt)および異なる変異(+7/-4)を有する変異体同士の交配、または人工授精によりホモ個体の作製を行う。実験室における飼育環境下においてメスの人工催熟が困難であり、1年以上を有することがわかってきた。メスの性成熟、卵子生産には低密度での飼育が重要であると考えられる。ホモ個体の作製、育成を行い、移植実験が可能な個体数を確保すると共に、卵子生産のための移植実験を遂行のため、移植実験手技、技術を確立する。またrag2変異体において実際にリンパ球におけるV(D)J遺伝子再構成の低下、リンパ球数の低下が起こっていることをPCR、フローサイトメトリーにより確認することを試みる。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (3件)
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