研究課題/領域番号 |
20K06107
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39070:ランドスケープ科学関連
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研究機関 | 東京都立大学 (2021-2023) 信州大学 (2020) |
研究代表者 |
加藤 麻理子 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 客員准教授 (60826957)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 持続可能な観光 / 利用者負担 / 協働型管理運営 / 山岳環境利用 / 山小屋施設 / 登山道管理 / 自然資源の管理 / パートナーシップ / 人材育成 / クラウドファンディング |
研究開始時の研究の概要 |
生態系保全や自然資源の管理に関わる取組において、多様な主体の関わりや連携・役割分担の重要性が増している。また、様々な形での活動資金確保や、継続的な活動の担い手確保のための人材育成は重要な課題である。近年では、新たな主体とのパートナーシップ構築を目指すもの、直接的な関係者以外から広く資金集めを可能にする試みを行うもの、などの協働の事例が見られるようになってきている 実際の現地での取組事例において、多様な関係者の連携・役割分担や,新たな主体の参加が効果的に進むための要素を検討し、日本を代表する国立公園等の自然公園地域に係る保護管理の推進や、希少種保全事業の効果的な実施に有用な知見を得る。
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研究実績の概要 |
生態系保全や自然資源の管理においては、多様な主体の関わりや連携、役割分担の構築が求められ、近年では利用面で持続可能な観光を意識した取組も重要性を増している。コロナ禍を経て、持続的な活動実施のための資金確保や人材育成につなげていくことも中・長期的な重要課題である。 本研究では、生態系保全や自然資源の管理における様々な参加主体の関わり方について、「人材」と「資金」という2つの観点に着目し、持続的な取組推進に向けた実効的な連携を進めるために必要な要素を明らかにすることを目的とする。2023年度は、2021年の世界自然遺産登録後の沖縄やんばる地域における、保全と利用の両立を意図した新たな観光コンテンツとしての夜間林道パトロールを応用したガイドプログラムの実施状況の把握、実施団体やガイド等の現地関係者のヒアリングをおこなった。また、新たに、地域特有の自然・文化・歴史等を生かした持続可能な観光に沿った取組を行なっている地域として、吉野熊野国立公園エリアの現地調査を実施した。吉野熊野国立公園エリアについては、世界文化遺産登録を受けている熊野古道や熊野三山等において欧米豪を中心とする個人旅行者を中心に多くのインバウンド客が訪れるようになっている。 2023年は世界的な潮流の一つとなっているアドベンチャートラベルの最大規模の商談会であるATWS(アドベンチャートラベルワールド・サミット)が、北海道で9月に初めての日本での開催として行われ、日本各地のデスティネーションの魅力と課題を踏まえた新たな利用の構築がよりクローズアップされた。同時に地域資源の管理に、来訪者、事業者が地域と共にどのようにコミットしていくかがより問われており、コロナ後の急速な利用回復に伴うオーバーツーリズム対策の課題認識が高まっていることも踏まえながら検討を深めていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、やんばる地域について、近年、民間事業者を中心に進展してきた新たな利用プログラムの実施状況や、新たにアドベンチャートラベル等の新たな動向を意識した宿泊施設の運営、地域の進展状況を把握できた。吉野熊野国立公園エリアについては、地域団体と行政が連携した古道の道普請など保全活動も行われていることから、これらのバランスを考慮した利用のあり方が重要になっている。また、熊野古道に集中しがちな利用について、より広い目線で見た紀伊半島の山岳、河川、海岸地域、ジオサイト資源などの豊富な地域資源を活用しながら、利用分散と広域周遊につなげていく取組も重要となっている。 各対象エリアにおいて、これまでの観光利用の経緯や特色、宿泊施設や二次交通などの状況や最新の発展状況などをよく踏まえながら、地域内外の人材や資金を活用した活動主体の連携や体制づくりを含めた現地関係者との意見交換、ヒアリングを実施できた。今後のビジョンとして地域がどのような観光利用のあり方を描くのか、その誘導策となるような新規コンテンツ造成や運営を可能にする人と資金の確保の仕方、来訪者と地域が互いにコミットしながら新たな高付加価値化を念頭に置いた地域の観光利用を考えていく方法について、引き続き検討を進める。
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今後の研究の推進方策 |
沖縄やんばる地域の観光利用の展開をフォローアップしながら、世界文化遺産の熊野古道に関して多くのインバウンド利用がすでに確立しつつある吉野熊野国立公園エリアにおいて、さらに来訪者に広域的な自然資源、文化、歴史資源を深く味わってもらいながら維持管理や保全にコミットしてもらうための手法を検討する。吉野熊野エリアの世界文化遺産と国立公園・ジオパーク等の自然資源を一体的に捉えた保全と利用のあり方を検討するとともに、やんばる地域における世界自然遺産の保全と利用について、両地域の比較考察も行う。 引き続き、持続可能な観光の観点で、国内外から訪れる高付加価値な体験価値を求める利用者層に向けてどのような内容を提供するか、そこから保全や地域の社会・環境・経済にどのような還元の仕組みを構築することができるかを分析する。あわせて、来訪者の意識や観光に求められるニーズに生じた変化、課題に対応する他の地域事例の検討も含め、調査等を実施することとする。
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