研究課題/領域番号 |
20K06111
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39070:ランドスケープ科学関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
美濃 伸之 兵庫県立大学, 緑環境景観マネジメント研究科, 教授 (00336835)
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研究分担者 |
嶽山 洋志 兵庫県立大学, 緑環境景観マネジメント研究科, 准教授 (40344387)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 公園緑地 / 障がい者 / バリアフリー / ユニバーサルデザイン / 防災 / 要支援者 / 情報共有 / 減災 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ユニバーサル化先進事例における要支援者とその関連主体間での情報共有、先導的障害者のリスク体験および要支援者の減災事例の実態調査を通じて、避難時要支援者の減災を考える上で要支援者とその関連主体間で共有されるべき情報の内容を明らかにするとともに、当該情報の共有を促す公園緑地での防災プログラムを多様な主体と協働で試行し、その有用性を検証する。
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研究実績の概要 |
今年度は、まず、公園公式サイトにおけるバリアフリー情報の公開状況と公園バリアフリーに関してウエブ上で把握できる口コミ情報の現状を、兵庫県下における32の都市公園を対象に調査した。その結果、公式サイトにおいては、サイト全体ではプログラムや活動内容に関するものが多く提供されている一方で、バリアフリー情報については、その開示の内容や情報量が公園によって大きく異なること、プログラムや活動内容は少なく、トイレ、駐車場といった基本的な項目のみの開示に留まっていることが明らかとなった。また、ウエブ上で把握できる口コミ情報については、公園による差異が大きいこと、得られる内容は限定的である状況が明らかとなった。
次に、移動制限のある公園利用者(車いす利用者、車いす以外の移動制限、ベビーカー利用者等)が受けている人的支援の実態を、国営ひたち海浜公園および国営武蔵丘陵森林公園を対象に調査した。その結果、移動制限のある人はそうでない人に比べて、公園スタッフからの人的支援を受けている割合が高かった。また、他の公園利用者への依頼など、公園スタッフを介さない利用者同士の支援が一定割合確認できた。車いす利用、車いす以外の移動制限、ベビーカー利用者では、属性間で受けている人的支援の割合や重複程度に差異が認められ、人的支援が果たす役割や意味合いが異なると考えられた。支援の中身については、いずれの属性においても情報提供の割合が最も多く、バリアフリー情報が公園利用に重要な役割を果たしていると考えられた。車いすやベビーカー利用者では、機器・施設利用の手助けや活動サポート・介助などの割合が高く、車いす以外の移動制限ではそれらの割合が少ないなど、移動制限のタイプによって支援の中身は異なっていた。タイプの異なる支援を重複して受けている割合が高いのは車いす利用者で国営ひたち海浜公園においてその傾向が顕著であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では、上述の通り、公園緑地で実施できる要支援者に関する情報共有を目的とした減災プログラムを考案することを目指していた。しかしながら、公園でのプログラム実施および要支援者等への対面調査の目処が立たないことから、今年度から研究目的について、公園緑地におけるユニバーサルデザインに関する調査研究という意味合いは維持しながら、研究を進めてきた。
今後は、上記の方針を維持しながら、1)公園緑地に携わる実務者向け教育プログラムの実施とその改善、2)公園緑地ウエブサイトにおけるユニバーサル化情報提供のあり方、3)リスク分布と公園緑地の立地特性との関係性、について検討を進め、今後は新たに4)公園緑地における人的支援のあり方、についても研究を進めていくこととする。
本課題のこれまでにおいて、公園緑地に携わる実務者向け教育プログラムの試行については、総じてソフト対応への関心が高いこと、行政と管理運営では関心に違いがあること、オンライン方式の評価が概ね良好であることを明らかにしてきた。また、公園ユニバーサル化情報については、公園による差異が大きいこと、得られる内容は限定的である状況が明らかとなった。また、移動制限のある公園利用者はそうでない利用者に比べて、公園スタッフからの人的支援を受けている割合が高く、支援内容については多様な支援を重複して受けている状況が把握されつつある。これらのことから、要支援者の公園緑地の日常的利用を支えるには、公園実務家教育についてはソフト充実を念頭に置き、機動的にオンライン方式を採用していくこと、ユニバーサル化情報については管理規模が小さく、利用者数も少ない公園での情報収集手法を検討する必要があること、人的支援については、多様な支援を重複して提供しており、これらの適切な運用が継続して必要と考えられた。今後も公園緑地と要支援者との関係性を考察していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き、1)公園緑地に携わる実務者向け教育プログラムの実施とその改善、2)公園緑地ウエブサイトにおけるユニバーサル化情報提供のあり方、3)リスク分布と公園緑地の立地特性との関係性、について検討を進め、新たに4)公園緑地における人的支援のあり方、についても研究を進めていくこととする。 1)については、次年度以降も、継続的に実務教育の現場でプログラムを実施しながら、属性の異なる受講生への適用、ならびに対面による実務教育の実施とフィールド実習の試行について検討を進める。具体的には、自然公園等に携わる実務者など都市公園以外への適用、都市公園向けでは対面講義の実施、管理運営に携わる実務者向けのフィールド実習などを予定し、可能な限りの講義・実習の検証を実施する。 2)については、管理規模が小さく、利用者数も少ない公園での情報収集手法を検討する必要があると考えられたため、障害者等の公園の日常的利用を簡便に記録でき、かつ福祉的視点を併せ持つ手法について検討を進めていく。 3)については、要支援者減災への貢献の視点から、公園緑地をいくつかのタイプに分け、それぞれにおいて、要支援者と他の公園利用者、施設管理者が共に参加・活動できる営み・プログラムについて検討を進めていく。ここでは、近年、設置が進んでいるいわゆるインクルーシブ遊具等の活用やその利用実態の把握を含めて調査研究を進めていく。 4)については、公園緑地における人的支援について、その提供を受けている利用者側から、および提供している側の公園スタッフの両面から、その実態を明らかにしていく。ここでは、人的支援の特徴と考えられる、支援の柔軟性、重複性に留意しながら、それらが障害者等の公園利用に果たしている役割について考察する。今後は明らかに人手不足の影響を受けることが必至であるため、これらの補完、拡充が図れる方法についてもあわせて考えていく。
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