研究課題
基盤研究(C)
我々が利用できる水や土壌などの自然資源は、地球表層すなわちクリティカルゾーンの水物質循環システムにより維持されている。そのため、気候変動に対する変化予測や環境管理において、大気-植生-土壌間でのシームレスな水・物質輸送過程の解明が不可欠である。そこで本研究では、環境同位体トレーサーを用いて森林-水相互作用の解明を行うとともに、新しい森林物質循環解析手法を開発することを目的とする。特に、福島原発事故由来の放射性セシウムの動態解析データをハブに、天然放射性核種や安定同位体比を相補的に併用した水・物質トレーシング研究を行い、国内外で利用可能な高精度かつ汎用性の高いマルチトレーサー手法の構築を目指す。
本研究課題では,森林生態系内の物質循環トレーサとしての大気降下放射性核種の利用可能性を調査するため,調査森林において樹冠の水収支とリターフォール堆積速度を算出するとともに,それらとともに移行する放射性核種フラックスを明らかにした。樹冠を通過した雨水(樹冠通過雨及び樹幹流)と枝葉の放射性核種濃度を比較することにより,樹体から雨水への移行係数が時間とともに変化することが明らかになった。また,樹冠から林床への移行経路によって土壌への沈着フラックスが変化し,樹冠密度や選択浸透流により林床の物質偏在性が説明できることを示唆するフィールドデータが得られた。
森林の水・物質循環研究において,従来から水の安定同位体や溶存イオン等がトレーサーとして用いられており、近年では森林を含むクリティカルゾーンの環境動態解析に広く応用されている。一方で,福島原発事故後に放射性セシウムの環境動態研究が飛躍的に増加したものの,森林での物質循環トレーサとしての利用可能性は未だ調査されていない。本研究課題においては,福島事故由来の放射性セシウムと天然放射性核種の森林環境動態を通じて,大気-森林-雨水-土壌間のシームレスな水・物質循環を定量的に解析できる可能性が示され,森林物質循環解析のツールとして国内外の森林水文・生態学のさらなる発展に寄与することが期待される。
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