研究課題/領域番号 |
20K06190
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
櫻井 泉 東海大学, 生物学部, 教授 (30505061)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | ウバガイ / 加入量変動 / 水温 / 産卵期 / 浮遊幼生 / 水塊構造 / 流動 / 加入量 / 個体群動態 / 苫小牧 |
研究開始時の研究の概要 |
北海道苫小牧沿岸のウバガイ漁場において,本種の成熟状態や産卵期間の長さを調べるとともに,これらの年変動に及ぼす環境要因やその機序について過去6年間のモニタリング結果を踏まえた飼育実験により検討し,親個体群の成熟・産卵期を取り巻く環境条件と本種の加入量変動の関連を明らかにする。また,浮遊幼生期から着底期に至る生息海域への滞留状況と生残の良否を調べるとともに,これらを決定付ける水温,塩分,餌料および流動条件を現地調査と数値シミュレーションにより検討し,成熟・産卵期から浮遊幼生期に至る環境が本種の加入量の年変動に及ぼす影響を解明することを目的とする。
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研究実績の概要 |
ウバガイの加入量変動機構解明の一環として、北海道苫小牧沿岸において成熟状況と産卵期を生殖巣指数により推定し、その年変化と稚貝発生量および水温の関係を調べた。また、ウバガイ浮遊幼生の分布と水塊構造および流動の関係を解析した。その結果、産卵期は、2014年と2018年は6-7月、2020年、2022年および2023年は5-6月のそれぞれ2か月間であったのに対して、2015-2017年、2019年および2021年は6月の1か月であった。そこで、指数のピーク値を配偶子形成量とみなし、稚貝発生量との関係を解析した結果、稚貝発生量は配偶子形成量の多寡とは無関係であることが示唆された。また、7月の指数減少率が高い年ほど稚貝発生密度は高くなる傾向がみられ、稚貝発生量は産卵期が7月まで及んだ時に多くなることが示された。さらに、生殖巣が発達する10-4月と産卵期を迎える5-7月の積算水温について指数のピーク値と産卵期の長さとの関係を解析したところ、10-4月の積算水温が低い年ほど配偶子形成量は多くなるとともに、5-7月の積算水温が低い年ほど産卵期が7月まで延びることが示唆され、これらは一昨年度の飼育実験の結果と矛盾しなかった。一方、2023年の浮遊幼生は、6月にはサイズによらず底層付近に分布したが、7-8月には殻長0.24mm以上の成熟期幼生が一部底層に僅かに認められたのみであった。また、本種の成熟幼生の出現に関係する1025.5kg/m3以上の水塊の分布は6-7月の一部底層に限られ、流動も西-南西方向の流れが卓越していた。さらに、2023年は本種稚貝の発生も検出されなかった。これより、2021年と2022年に引き続き2023年も稚貝発生がみられなかったのは、産卵期が7月まで延長しなかったことに加えて浮遊幼生が存在しにくい環境であったことが関与していると考えられ、仮説の妥当性が指示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に掲げた3つの課題、①水温・餌料条件が母貝の成熟状態と産卵期間の長さに及ぼす影響の評価、②水温・塩分・餌料・流動条件が浮遊幼生の分散や生残に及ぼす影響の評価、③成熟・産卵期と浮遊幼生期の環境条件が加入量の年変動に及ぼす影響の評価について、すべての項目について実施し、当初の計画どおりデータが得られている。また、2021年度までは産卵期の長期化が稚貝発生につながる旨の仮説を提唱していたが、2022-2023年度の成果により産卵期が7月まで延長することが稚貝発生につながることが示唆され、これまでの仮説をより具体化することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はウバガイの成熟・産卵状況、浮遊幼生の動態および稚貝の発生状況を5年間調査し、これらを環境要因との関係で解析することにより本種の加入量変動機構の一端を解明しようとするものである。このため、最終年度に当たる次年度も引き続き本年度と同様の調査および解析を実施する予定であり、単年度ごとに得られた成果を学会発表するとともに、総括的な結果を論文発表する計画である。
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